指名依頼
ギルドへ行くと、ナコがアンを叱っていた。
「昨日も遅くまでカジノに入り浸ってたそうじゃない。私、言ったわよね、カジノへ行くのはいいけど、日付が変わるまでには家に帰ることって」
「次から気を付けるわよ」
「前もそう言ってたわよね。アンの言う次っていったいいつ来るのかしら」
「もういいでしょ。反省してるんだから」
「いいえ、ダメよ。反省してる人は、自分から反省してるなんて言わないんだから」
アンの視線が泳ぎ、少し離れた場所にいるクリムを見つけた。
「あ、クリム」
アンがすごい勢いで手招きしたから、クリムは早足で向かった。
「こんにちは。特に用はなかったんですけど、王都に来たついでに寄りました。何か私宛の郵便とか届いてます?」
「ちょうどよかったわ。クリムちゃんに依頼が来てるの。ちょっと待ってて。アンもそこを動くんじゃないわよ。まだ話は終わってないんだから」
ナコがカウンターの方へ引っ込んだすきに、アンはクリムに、
「町の人に呼ばれたとかなんとかうまいこと言っておいて」
と耳打ちし、ダッシュでギルドを出て行ってしまった。
ナコが戻ってきた。
「アンは?」
「えっと、通りの方でひったくりがあったらしくて、それで、犯人を捕まえに行きました」
「クリムちゃん、アンがそんな正しいことすると思う?」
「しませんよね、はは」
「まあいいわ。どうせまたカジノへでも行ったんでしょ。クリムちゃんからも、賭け事は控えるよう言っておいてくれない? あの子、このままじゃギャンブル依存症になっちゃうわ」
「それはいけませんね。強く言っておきます」
「ありがとう。私たちでアンを更生させましょうね」
それから、ナコはクリムに席にすわるよう勧めた。
「クリムちゃんあてに依頼が来てるの。指名依頼ってやつね」
「私宛に?」
ナコが依頼書を読み上げる。
「依頼主は王立図書館館長のバーヘン・クウムさん。禁書にこびりついている呪いの解呪や封印書の開封を頼みたいらしいの」
「その呪い付きの本や封印書は、全部で何冊ぐらいあるんでしょう?」
「えっと、三百三冊あるらしいわ」
「それぐらいの数なら一日あれば、すべて解呪、開封できると思います」
「じゃあ、さっそく連絡を取ってみるわ」
通信魔法を使って、ナコは図書館の司書にクリムが依頼を受けること、それから必要日数は一日であることを話した。
「い、一日で? すごいですね」
司書は面食らっていたが、すぐ落ち着きを取り戻し、
「では、今日、こちらの方で色々と準備しておきますので、明日、来てもらえますか? もちろん別の日でもかまいませんが」
「どうする?」
クリムはうなずいた。
明日は図書館でお仕事だ。




