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超絶やさしい魔王とクズの極み勇者  作者: 仙葉康大
第三章 人気と差別
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魔王サビ

 王都中央広場へとつづく大通り、そこにあるとある本屋さんに入る。人を避けながら、右に左に交互に視線をやって、目当ての棚を探す。


 あった。

 その棚には哲学書が並べてあった。分厚いの、薄いの、古典、最近のもの。何冊か選び購入する。


 本屋を出て、中央広場へ行き、大天使キーケの銅像の前を横切って、目当ての建物と正対する。空へとそびえ建つ黒煉瓦の建物、この建物こそ王都魔法警察署である。


 今のクリムならブルチズとの面会も許可してもらえるだろうが、監視の者はつくだろう。


 クリムはいったん、広場の片隅にある公衆魔法電話ボックスに入った。硬貨と魔力を投入し、電話をかけ、交換手にナンバーゼロゼロゼロマイナスセブンにつないでもらう。


「こちら魔帝城通信部、メアです」

「こんにちは、メアさん。クリムです」

「あら、クリム。久しぶりね」

「そうですね、二カ月ぶりです」

「そっちは色々大変みたいね」

「ちょっと思ってもいなかった方向に話が進んじゃって」

「いいんじゃない。人間に好かれ、人間の社会に溶け込む、そういう魔王が一人くらいいても。多様性よ、多様性」

「多様性」


「そうそう、クリムから電話がかかってくるやいなや、ススパイがダッシュしてここに来たんだけど、どうする? 代わる?」

「じゃあ、お願いします」

「別に代わらなくてもいいのよ。話すことも特にないでしょ」

「まあ、ないと言えばないですね」

「あー、ススパイがうるさいから代わるわね」


「クリムか」

「はい。魔帝様」

「お前の活躍は、王都の新聞シュガデルフィアタイムズを通して知っている。よくやっているようだな。私は嬉しいぞ」

「恐縮です」

「魔王であることを公にしてやっていけるか心配だったが、今や、お前の支持率は七十パーセントを超えるというじゃないか。これはすごい数字だぞ」

「ありがとうございます」

「しかし、実際どうなのだ? 人間たちにいじめられたりしてないか?」

「大丈夫です。元気にやってます」

「そうかそうか。そう言えば、王都にはあの子がいたな。あの子は元気でやっているか?」

「あの子?」

「ああ、クリムにはまだ話してなかったな。私はかつて――」


「はい、終了です。通信魔法だってタダじゃないんですよ。ここから王都まで何万キロあると思ってるんですか。私の魔力の残量も考えてください。それで、クリムちゃん、今日は誰につなぐ?」

「サビさんをお願いします」

「あー、あいつかあ。捕まるかなあ」


 数分後、メアはサビの居場所を探り当て、見事、通信魔法をつないで見せた。


「やあ、クリム。私に何の用かな?」

「お力をお借りしたいんです」

「ほう。私の力が必要だと? なるほど。分かった。で、誰をストーキングしたいんだい?」「ちがいますっ」


 冗談や面白いことが好きなのだ、この方は。


「王都の魔王専用牢屋へ潜入したいんです」


 サビが笑った。


「なるほど。獄中のブルチズをからかいに行くんだな」

「話をしに行くんですっ」

「今、君はどこに?」

「王都の中央広場です」

「あいわかった。すぐ行くよ」


 次の瞬間、クリムの影から腕が伸び、次に顔が出た。細面で、目も鼻も細い。長い口が開いた。


「やあ」

「いつ見てもすごい魔法ですね」

「誰かをストーキングするには最適な魔法さ」


 サビは、細い目の中に、光をよく通す碧眼(へきがん)を見せて笑った。


「さあ、行こう。ブルチズをからかいに」

「だから、ちがいますって」


 クリムは足首をつかまれ、そのまま、己の影の中へ引きずり込まれた。


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