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超絶やさしい魔王とクズの極み勇者  作者: 仙葉康大
第三章 人気と差別
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魔王が働くギルド

 王族、貴族、政治家、新聞社に、ナコは次のようなメッセージを伝えた。


 魔王クリムは、これからもギルド「スイートパルフェ」の正式なメンバーであり、文句がある人は直接ナコに言いに来るように、と。


 文句を言いに来る馬鹿はいなかった。それほどまでにナコの力は、王都中に知れ渡っているのだ。

 ギルド「スイートパルフェ」は魔王が働くギルドとして世界的に有名になった。


 が、王都の人々は、これを快く思う親魔王派と、ナコがいるから表立った批判はできないが、王都の片隅で魔王を登用したことに対し陰口を言う、反魔法派に分かれていた。二つの勢力は拮抗しており、また人々は、二つの派閥を流動的に行ったり来たりしていた。


 クリムは働いた。自分のことを知ってもらうために、毎日一つ、王都内で依頼をこなしていった。依頼内容は、魔法博物館の開かずの扉の開錠やごみ処理場の危険ごみの処理、魔法大学生のレポートのお手伝いなど様々だったが、どれもそつなくこなせた。


 一か月が過ぎた頃には、人々は、この魔王に信頼を寄せはじめ、さらに一か月が過ぎると、魔王クリムをよく思わない者は、少数派になった。


 一方でクリムは、魔王としての任務も進めていた。

 魔王城の建造である。


 日中は、築城を臣下に任せ、夕方、どのぐらい進んだか、ベルギーヨから報告を受け、次の日の予定を決める。疲れる実作業の部分を臣下任せになってしまうのは心苦しかったが、クリムの臣下はクリムが大好きなので、文句ひとつ言わなかった。


 クリムが魔王であることをカミングアウトしてから二か月と三日が過ぎて、王都でのクリムのポジションは盤石になった。


「これからは毎日は王都へ行かなくていいと思う」


 夕食の木の実を膝に乗せた状態でそう言うと、臣下は頬を上気させて詰め寄ってきた。


「明日は? 明日は一日ここにいますか? 私、魔王様に見せたいものがあって」

「オイラ、魔王様に修行をつけてもらおうっと」

「待ちなさい、ルピス。明日魔王様と遊ぶのはこの私よ」

「ワンワンワン」


 次の日、魔王クリムは一日を臣下のために費やした。みんなで築城をほっぽりだして、鬼ごっこをしたり、玉蹴りをしたりして遊んだ。森の泉の近くでお茶会も開いた。


「クリム様、オイラね、ビーム撃ちたいんだけど、どうすればいいかな?」


 スライムのルピスが尋ねた。


「ビームはね、光子魔法を覚えれば、出せるようになると思うよ」

「じゃあオイラね、それを覚えるんだ」


 みんなも騒ぎ出す。すごいとか、頑張れとか、きっとできるようになるとか。


「でもビームなんて何に使うの?」


 クリムは心配だった。ビーム魔法はとても攻撃力が高いから。


「オイラね、ビームを空に向かって撃つんだ。で、かっこいいって言ってもらうんだ。で、とても誇らしい気分になるんだ」

「そう。でもルピスは今のままでもいいんだよ」

「でもオイラ、弱いよ」

「弱いことはカッコ悪いことじゃないんだよ。かっこ悪いのは、弱者を助けようとしない強者だよ」

「ならオイラ、弱いのを助ける強いのになるもんね」

「ルピスならなれるよ、きっと」

「クリム様、ルピスとばかり話していないで、私とお話しましょう」

「私も魔王様とお話しする」


 吸血鬼のヌレカとゾンビのミトパがクリムに詰め寄る。他のみんなも一ミリでもクリムの近くにいたいとばかりに距離を詰めてくる。クリムはお尻を後ろへずらそうとしたが、背後にはサキュバスのシホがいた。完全に包囲されたので、みんなの気が済むまでおしゃべりをした。


 夜になって、ハンモックに揺られながら眠りに落ちる直前、クリムは思った。王都の人たちに警戒心を抱かせたくなかったから控えていたが、そろそろ、会いに行ってもいいかもしれない。


 誰に会うのか。

 決まっている。

 大事な同志に会いに行くのだ。


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