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超絶やさしい魔王とクズの極み勇者  作者: 仙葉康大
第三章 人気と差別
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お茶会

 ギルドの建物の前にも、新聞記者や政治家がたくさん来ていた。アンとクリムをのせた箒は、その人たちの頭上すれすれを飛んで、ギルドの中へと突っ込んだ。


 箒は急に止まれない。

 壁に激突し、箒は八方向に避け、クリムとアンも体を打った。


「二人とも、大丈夫?」


 ナコが駆け寄る。


「ただいま」


 しりもちをついたまま、アンが言った。

 クリムは打った背中をさすりながら、開口一番、謝った。


「あの、ごめんなさい。私、ナコさんに隠し事してて」

「あら、そうなの? 誰だって秘密にしたいことの一つや二つあるわよ。そうだ。二人も帰って来たし、みんなでお菓子でも食べましょう」


 その場にいた冒険者や魔法使いたちがガッツポーズした。


「そんな悠長にしてる場合じゃないんです。外には記者もたくさん来てるし」

「ああ、それなら大丈夫よ。こういうトラブルがあった日は、無資格者出入(でいり)禁止魔法をかけて、ギルドメンバー以外はここに入れないようにしてるから」

「かけてって、そんな高等魔法を使える人たちが、このギルドにはいるんですか?」

「人たちじゃないわ、クリム」


 アンが指摘した。


「どういうこと? だって無資格者出入禁止魔法をかけるって言ったら、凄腕の魔法使いか魔女が十人以上は必要なはず」

「普通はそうなんだけど」アンがナコの方を見る。

「はい、この話はこれでおしまいっ」


 急にナコが両手を叩いて、話を打ち切ってしまった。


 マッチョの剣士が奥の給湯室で紅茶を沸かし、女神官は、倉庫の鍵を開けて、保存魔法の効いた菓子箱を何個も取って来た。


「みんな、席についたわね」


 ナコが大ホールを見渡して言った。


 百八名のギルドメンバーの内、五十三人がそろっていた。バニラ村での一件は、速報で王都に伝わっていたため、何も予定がなく暇なメンバーは、ギルドに来て二人の帰りを待っていたのだ。


「それじゃあ、いただきましょう」

「いただきます」


 各テーブルから野太い声やか細い声がした。


 みんな、何事もなかったかのように、ダージリンを飲み、マドレーヌを食べていく。好き勝手にしゃべっている。


 本当にただのお茶会だ。

 クリムはティーカップにもマドレーヌにも口をつけず、立ち上がった。


「あのっ、皆さん、私っ」


 大ホールの隅々に伝わるように声を張る。


「言わなくちゃいけないことがあって」


 剣士も盗賊も神官も魔法使いも探偵も勇者も受付嬢も手を止め、クリムの方を見た。


「実は私は」


 クリムは周りを見回して、最後はナコの目を見て言った。


「魔王なんです」


 大ホールは静まり返った。


「騙しててごめんなさい。皆さんに迷惑はかけないつもりでしたが、結果的に、かけることになってしまいました。私は、ギルドを抜けます。すごく短い間でしたが、今までお世話になりました」

「認めませんっ」


 ナコが笑顔で言った。


「でも、私は魔王で」

「でも、あなたはクリムちゃんでしょ」

「そうだけど、魔王がギルドにいるなんて、皆さんだっていやなはずです」

「嫌な人?」


 ナコが訊くと、みんな、紅茶を噴きだして大笑いした。


「嫌なもんか」

「ここをどこだと思ってる? あの悪名高い勇者が所属するギルドだぞ。魔王の一人二人屁でもねえ」

「魔王が仲間とかむしろかっくいい」

「っていうか、クリムちゃん、いい子だし。それぐらい分かるし」


 クリムは分かった。この人たちバカなんだ。


「というわけで、魔王のクリムちゃんが正式に私たちの仲間になりました」


 クリムは拍手に包まれた。


「関係各所及びうるさい連中の対応は私がします。今日中には静かになるはずよ。じゃあ、解散。あ、そうだ、ティーカップは各自で洗って戻しておくように」


 唖然とするクリムを見上げて、アンは唇の端にマドレーヌのカスをくっつけたまま、どや顔で言った。


「ほら見なさい。どうにかなったでしょ」


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