新聞記事
朝の空気が森を満たしている。
クリムとその臣下二十名は丸太や切り株に座って、朝食を食べていた。クリムが王都で買ってきたパンとシュークリームのおいしさに悶絶しながら、誰もかれもが今朝の新聞記事について話していた。
「魔王様、かっこいい」
ゾンビのミトパが新聞記事の写真を指さした。
「いいえ、かわいいですわ」と吸血鬼のヌレカ。
「かっこかわいいです」
スライムのルピスは興奮して体内が泡立っている。
クリムは頭を抱えた。
王都で一番有名な新聞「シュガデルフィアタイムズ」、今朝の第一面の大見出しはこうだった。
「またまた勇者アンの非道 王女のシュークリームを盗む」
記事を一部抜粋すると、こんなことが書いてある。
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三十四日の九時ごろ、第二王女殿下ラステカ様は、お菓子通り一番地の2のシュークリーム専門店「ミゼラブル」に赴かれ、シュークリームを購入した。しかし、勇者アンは何をとちくるったのか、王女のシュークリームを奪い取り、それを口にした。食べられたシュークリームは分かっているだけでも十個以上。
このゆゆしき大犯罪に国防魔法軍が動いた。しかし、空軍所属であり、ステラカ様のペットでもある純血種のドラゴン、マリアンヌが、お菓子通りを焼き払えという誤った指示をだされ、やむなく咆哮。竜の炎にすべてが無きものになろうとしたそのとき、謎の少女が空を飛び、無効化魔法を発動し、炎を消し去った。
少女は重態におちいったが、王都最大手のギルド「スイートパルフェ」の受付嬢ナコが回復魔法をほどこし、ことなきを得た。アンへ厳罰を望む声もあるが、一方で、誰であろうと勇者アンを捕らえることなどできないのではないか、という諦めの声もある。
ギルドの受付嬢であり、アンとの親交も厚いナコは、「勇者としての自覚云々というより、人としてなっていない。今回の件に関しては、強く説教しておく」と語る。
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臣下たちが騒ぐ。
「やっぱり勇者は悪い奴なんだ」
「そうだそうだ」
「だって盗むの、ダメだもん」
別にアンを擁護しようというのではないが、今回の事件、王女にも非があったように思われるし、臣下の教育の意味でも、言っておかなければならないことがある。
「確かに誰かのものを盗むのはダメだけど、新聞を信じすぎるのもよくないよ。最近の新聞はよく嘘も書くから。自分の目で見たことと、確かな情報筋からの情報以外は信じちゃダメ。噂や伝聞の類は、必ず裏をとること。いーい?」
「はーい」
みんながそろって返事をした。
「魔王様、俺はこっちの記事の方が気になるのですが」
ベルギーヨが新聞を開いて、「シュークリーム窃盗事件」の関連記事を見せた。
そこには、大きな文字で、「謎の少女ギルドへ加入か」と書かれていた。
「そうだった。みんなに報告があります」
クリムは立ち上がり言う。
「私、ギルドのメンバーになっちゃった」




