第五種接近遭遇その1
(´・ω・`)…。(13日の金曜日投稿)
ココは帝都ベルリン、ヴィルヘルム街77番地、嘗ての首相宮殿。
その後の名は旧首相官邸だ。
長らく使われていなかったが、改装を経て、新しい主人の物になっている。
理由は昨今の流行で導入された大型電気計算機に78番地の首相官邸の空間が圧迫されたのだ。
計画段階の時点で、事務方の部屋が足りなくなる成るコトは予想されたが。
喜んで今の家主であるドイツ社会主義国家労働者党アーデルハイト・ヴェッセル首相が執務室を譲った。
彼女は何時も首相官邸のデザインの悪さに不満を漏らしていた。
そして簡単な改装の後に、旧首相官邸は現首相官邸に返り咲いた。
ややこしい話だが、名称は旧首相官邸で、当時の調度品はそのままだ。
初代首相ビスマルクの熱狂的なファンである彼女は彼の使った椅子にご満悦だ。
尤も当時の首相である彼は社会主義者を弾圧したのだが…。
彼女が執務室で書類を読んでいるとドアをノックする音で中断された。
「どうぞ。」
ドアが開くとナチス式敬礼の後、秘書官が告げる。
「失礼します。新しい日本国に付いての報告書が来ました。」
高地ドイツ語を話す若い女性でナチス党員だ。
青い目と流れる金髪がソレを証明している。
「うむ…。」
椅子に座ったまま書類を受け取り読む首相…。
「船と人員は未だ膠州湾に居ます。空軍の飛行機で先発隊が先ほど到着しました。」
頷く首相、徐々に眉間のシワが深くなる。
全ての紙を捲り終わると感想を述べた。
「これでは何もわからん。」
肩をすくめるスタッフ。
「男が多いのはわかって居ます。あの島には、優良アーリア人も、WASPも、テンクも居ます、数は数千人から最低でも数百人の若くて健康な男達です。まあ、女も居る様子ですが。」
「その様だな…。異世界の祖国は我々に反抗的か…。何とか成らないのか?」
ドイツ連邦共和国のページを読み返す首相。
ため息交じりだ、困った形の眉に成る。
「はい、まったく信じられません、我々のナニが気に入らないのか…。」
一応目を通したのか若い秘書官の感想も同じらしい。
新たな書類を出して続ける秘書官。
「人口分布での解析では我が国の最大動員兵数を越える男達が居ます。勝ち目は薄いです。」
受け取り目を通す。
「我々だけでは無理だな。」
文字を読まずにグラフだけで判断する首相。
「そうですね。冗談みたいな数字です、この地上の人類全ての男を集めても…あの島に居る男達の方が多い、しかも殆どの若い男達は仕事をして家庭を持っているんです。まるで旧世界の…。家族の父親です。」
言葉を選ぶ若い秘書官。
学校から帰れば母親が夕食の準備をしていて、父親が仕事に疲れて帰ってくる。
父親が帰宅の挨拶で。
きっと、頭を撫でてくれるだろう。
全ては御伽噺の中の家族でしかない。
「国防軍は勝てるか?親衛隊も注ぎ込んでも。」
「さあ?ソレは…。」
新たな書類が出てくる…。
各軍の印の付いた封筒には機密を表す判子と封印がされている。
机の一番上の引き出しからアドラークロイツの印が付いたペーパーナイフを取り出す。
秘書官は何も言わずとも背中を見せ執務机に尻を乗せ腕を組んでいる。
ポケットを探り細巻とライターを取り出した。
処女を破り中の種類を見る。
多くは写真入りで…。
兵器の写真で日本語の標識が並んでいる。
恐らく撮影不許可の展示品を盗撮したのだろう。
写真外側のピントが甘い。
軍部の解説も有る。
恐らく軍人にしか解らない数字だ。
無論、理解は出来ないが最後の解説に答えは載っている。
全てを読んで封筒に仕舞う。
焼却処分行きで無い、鋼鉄の書類入れの隙間に封筒を落とす。
このまま、地下の資料室行きだ。
50年は誰も見ることは無い。
「すまなかった、終わった。」
「はい、了解しました。」
振り向く秘書官。
細巻は灰皿に潰れた。
「困ったな、海軍は問題ないと言っている。陸軍も…。空軍の報告書では勝ち目が無いそうだ。」
「ソレは…。いや、何故でしょうか?」
同じように困惑する秘書官。
「彼等の…。あの新しい日本国共は工業製品共よりかなり高度な工作技術を持っているらしい。但し、軍事力にはソレほどでは無い様子だ。」
「到底信じられません。」
驚いた顔の碧い目。
「全くだな。空軍の話を信用するなら将に神の軍隊だ、海軍と陸軍の話なら植民地軍に毛が生えた程度だそうだ。」
「一応、新しい日本国の男達は我々と友好親善を進めたいとの意向です。」
「ほう?工業製品の女達は振られたのか?」
「いえ。その…。させ子なのでは?」
何故か顔の赤くなる若い秘書官。
恐らく処女なのだろう。
「まあ良い。敵意が無いと言うのは良い事だ、友人は選ぶべきだが。」
机の上の機密書類以外に全てに目を通す首相。
時間と共に機嫌が悪くなるのが解る。
「ますます解らん。空軍は何故、新しい日本国を怖がっているのか?空軍に臆病者は居ないハズだ。」
「そうですね、彼女達は…。貴族階級が未だ多いので。未だ騎士ゴッコをしています。」
「ふん、騎士階級共がナチスに…。いや、あいつ等が忠誠を示しているのは祖国と皇帝か。」
今は女の皇帝だ。
「その点…、向こうの皇帝は男で男系男子だそうです。」
言葉に詰まる。
「羨ましいな…。」
全ての国民の父親なのだ。
「全くですね。」
「なんとか崩したいな…。」
「一応、ライヒは友好的に対応しています。偵察衛星の一件は不幸な事故で申し合わせが終わっていますが?」
「ソレは解かっている。だが、我々が直接やり合う必要は無い。」
女の手は人を殺すために在るのではない。
子と愛しい彼を抱く為にあるのだ。
「同盟国ですか?」
驚く処女。
「そうだ、この日本は未だ教化されていない。キリスト教は少数派だという、ソコに付け込む隙は有る…。」
祖国を守るために血に塗れるのは仕方が無い。
それ以外はご免だ。
「キリスト教原理主義者共に相手をさせるのですか?」
「我が朋友である帝政アメリカ人は肌の色に厳しい。そんな連中は黄色に純粋な白人の男達が囚われて居ては気分が悪いだろう。」
「気持は判ります、でもヤツラはアーリア人ではない。」
「なので。協力するコトでアーリア人の安全を保障してもらおう。払うコストは非常に低い。」
「工業製品の彼女達が黙って無いでしょう。」
「恐らくな、神に逆らう劣等民族共だ、アメリカ帝国には色々販売しても良い。新型のUボートとTV爆弾でも良いだろう。」
アメリカの連中は前回の戦争で消化不良に成っている。
焚き付ければ火は出るハズだ。
「まだ、機密兵器です。」
「解かってる。だがもう既に価値は無い。新しい日本国の男達は対艦誘導弾を実用化している様子だ。」
コチラの誘導弾の性能は三割程度の命中率で200kg程度の炸薬だ。
旧型のTV爆弾は航空機投下型で命中率は高いが誘導が難しい。
「何が得られるのでしょうか?」
帝国同士の戦争は総力戦で世界地図の塗り替えを行うのだ。
多くの兵が死ぬ。
新しい土地が発見されたが手に入れるには、少々遠い。
ならば友好国に便宜を図って欲しい物を手に入れるのだ。
「我々に得られるものは無いだろう。しかし、損は無いのだ。」
彼等がどんな戦い方をするのか。
びっくり箱を開けるのはリアクションの良いヤツに開けさせるのが一番面白いのだ。
(´・ω・`)…。(なんか色々と考えるとしんどいので。)さっくりエンディングへ…。
(´・ω・`)第四種接近遭遇その5まで書いたけど…。(辻褄が合わなくなった。)