第四種接近遭遇その3
(´・ω・`)…。(おかしい、何を書いてもギャグになる…。)
饗宴が終わりに近づくとワゴンに荷物が運び込まれた。
朝のバスに積み込まれた個人の荷物だ。
明々陽気な気分で荷物を受け取りエレベータを上がる。
割り当てられた部屋の番号を確認して、部屋に入る前に国家保安部部員による洗浄が始まる。
まあ、盗聴器潰しだ。
無論、彼女達の置き土産は置いてあるかもしれない。
特に気にする必要は無い。
何時もの彼女達の性癖だ。
「完了しました。異常なし」
笑いもしない、鉄面皮2人組みが部屋を出る。
「私のベッドの処女は残しておいてくれたかい?」
同室になった陸軍士官のジョークにも答えず次の部屋に向かう国家保安部員2人組みは。
片手にアタッシュケースと謎の機械をもって隣りの部屋に突撃して行った。
隣りは海軍らしい。
うんざりした顔で手荷物を持ったまま廊下で待つ海軍士官。
「あいつら相変わらず陰気臭いな。」
「そうだな…。シーツに皺を残さない様にして欲しいモノだ。」
|新品のベッドに飛び込む《処女を破る》楽しみを横取りされるのは嫌なモノだ。
挨拶をして部屋の中に入る。
「あ、くそ、あいつ等、行儀が悪いぞ?」
乱れたシーツと部屋履きを見て陸軍士官が悪態を付く。
何せ、この階と上の階、全てが我々の割り当てだ。
全てを数人のゲシュタポで洗浄するのだ。
大忙しだろう。
しかし、このおかしな日本で唯一のライヒの占領地だと思えば気分は良い。
部屋に入り荷物を降ろす。
壁一面窓からおかしな東京を見下ろす。
何処までも続く高層ビルと灰色の町、そして海と桟橋。
遠くは霞んでいる。
窓から乗って来た船が見える。
船首、甲板に書かれたハーケンクロイツが良く見える。
その手前には広大な日本庭園。
コンクリートを切り取った様に思える、緑の異世界だ。
「浜離宮も有るのだな…。」
「ああ、そうだな、おかしな物だ…。議会議事堂も古いままだった…。戦艦で吹き飛ばしたハズなのにな。」
100年以上前、大日本帝国海軍が陸軍反乱兵ごと戦艦の主砲で吹き飛ばしたはずの旧帝国議会議事堂がそのままの姿で残っていた…。
おかしな感覚だ。
事前に知らされていたコトと違う…。
我々は長い船旅を紛らわせる為、船内では大日本帝国の勉強会が行われた。
劣等人種の作ったプロパガンダ映画の上映会だ。
無論、日本研究者の解説付きだ。
何も変らない船窓からの景色に三日で飽きた我々には面白いコメディ映画だった。
まあ。ソレも5日で飽きたが…。
そのお陰で皆、嫌でも日本博士になっている…。
無いハズの物が在りある物が無い東京だ。
我々の情報がこの日本の最新情報になる。
あの大日本帝国よりかなり発展している。
ソレだけはわかる
トゥーフロックとシャツ、ズボンをハンガーに掛ける。
明日もこの服だ。
シワになる前に下着姿になる。
ストッキングを脱いで裸足にスリッパだ。
日本の計画では明日の朝には迎えのバスが来てTOKYO-Shinagawa駅からNAGOYA駅、バスで観光と見学。
古い温泉宿で宿泊してKYOTO、OSAKAで観光と宿泊。
KOBEで母船に乗り込む。
明日の昼には桟橋の母船は出港してKOBEに向かうのだ。
海軍の電波収集機材は上手くこの日本のレーダー波を捉えるだろうか?
心配毎は多い。
気分を変える。
「ココはアジアで最大の魚市場だったハズだが…。」
下着姿でテーブルに置かれたカラーの冊子を取る。
空調は効いているので寒くない。
この施設の案内冊子だ、随分と発色の良い印刷だ目を通しながら話す。
英語とフランス、イタリア、ドイツ語で書かれた冊子だ。
くそっ、解らないアジア語もある、わざわざ用意したのか?
「ああ、ショッピングセンターにカジノ、病院、上階はホテルだ。ココで一生生活できそうだ。」
飾り気が無いのがこの日本人の趣向らしい。
酷く無機質だ。貴族階級専用の独房と言ったら信じてしまうかもしれない。
「魚臭く無いのが良いな。」
陸軍士官の嫌味なのだが嫌味に聞こえない。
何せこの建物から出るなと言われている。
「狭いがトイレと風呂も付いている…。コレはテレビジョンなのか?この部屋からも出ずに生活できそうだ。」
陸軍士官が壁に掛った黒い絵の額縁を調べている。
ズボンにシワが付くのは気にならないらしい。
二つ在るベッドの脇のテーブルにドイツ語で書かれた取扱説明書が置いてあった。
目を通す。
「その様だな…。」
「スイッチが無いぞ?」
「いや、コレがスイッチらしい。”Fernbedienung?”」
手の中のカラフルな棒、赤いボタンを押す。
黒い何も無い絵の額縁が明るくなる。
我々のマヌケな顔が消えフライパンが写る。
『nesitaーfuraipanーni-kirimi-wo-nosemasu』
画面が変り男がフライパンを持って箸で調理している。
「やはり魚なんだな。」
劣等人種は魚好き。
生でも喜んで食べるほど。
ライヒの子供でも知っている。
「いや、かなり鮮明な映像だ…。陰極線管では無いのか…。」
恐る恐る絵に触る陸軍士官。
「熱くない、静電気も無い…。どんな受像管なんだ?」
指で圧迫した所の色が変わる…。
そう言われると気にはなる。
ポケットの中のルーペを取り出し表面を見る…。
「高圧放電管では無い様子だ。それより大日本帝国は未だカラー放送ではないハズだ…。走査線数も400程度の…。くそっ!三原色だ完全なカラー受像機だ。しかし走査線方式ではない。」
構造は不明だ、只、明るい三原色のセルの光度を操作しているだけだ。
呆然とした顔で、焼かれた魚が皿に乗るのを眺める。
日本語の解説だが…。恐らく料理のレシピを話しているのだろう。
「他に何かやって無いのか?」
「あ?ああ。」
陸軍士官に急かされスイッチを操作する。
代わった後には青い画面にメガネとスーツの男が映る。
「ニュースか…。この日本でもあまり変わらんな。」
『In an exclusive with N○K in Tokyo On』
「英語と日本語を話しているがな。二ヶ国語放送か…。随分と緩いなこの日本は。」
確か、大日本帝国では英語の使用は禁忌のハズだ。
まあ、英国空軍の通信内容の傍受は空軍の仕事の内なので聞き取りは自信が在る。
日本語を聞くより内容は解かる。
「○○、△、Weather satellite」
は?気象衛星?
受像機に写るのは二つの日本列島だ。
雲の映像に年配の男が等圧線を重ね何かを話している。
恐らく天気予報の話だ。
意味は不明だが、何となく解かる。
解かるが…。
「ダメだ、この日本はおかしい。」
流れる雲の画像で…。
「どうした?」
「いや、何でもない。今日は早く寝よう。」
劣等人種等は第一宇宙速度を越える打ち上げシステムを持って居るコトに成る。
「そうだな。まあ待て。実は売店で酒を買って在る。あいつ等、マルツ・ウィスキーを作っている…。」
誇らしげに瓶を出す陸軍。
ラベルは英語だ。
「白帯ヴィースキか…。」
「幸いココには氷も水も在る。他のは有料らしい。」
冷蔵庫が個室に在るのは不思議に思っていたが。
陸軍は早速カードを使った様子だ。
コップを4つ用意している。
「散々呑んだだろう?」
「ああ、だから軽く済ませる。味見だ味見。この先酒が出るとは限らない。」
二つに氷を入れトングで回し空のコップに水を捨て。
瓶の処女が切られフタの裏の香りを嗅ぐ陸軍。
得意そうな顔だ、良い物らしい。
瓶が傾きワンフィンガーだ。
一滴も零さない精神で瓶を片付ける陸軍。
なるほど気に入ったのだな。
コップを受け取り香りと氷の虹を楽しむ。
一口含みアルコホルの甘みが広がる。
木タール臭くない。
飲みやすい部類のヴィスキだ。
早めに片付けてシャワーを浴びよう。
席を立つ。
「おいおい、もう行くのか?臆病者」
「トイレットよ。」
答えてしまったので並んだドアのトイレを選択してしまう。
陸軍士官は絡み酒らしい。
覚えておこう。
しかし、肌寒いトイレに入るとしたくなる。
下着を下ろし腰を下ろす。
大日本帝国のトイレは中近東と同じスクワット式トイレだと聞いたがココは北欧式になっていて安心した。
寄港したフィンシュハーフェンで洗礼を受けたがイマイチ慣れない。
紙に手をのばす前に気が付く。
「なんでこんなにスイッチがあるの?」
背中を確認するが壁に配管等が露出していないので一目で洗浄レバーが解らない。
水洗式なのは間違いない。
壁にスイッチコンソールが有るが…。
ちょっとした爆撃機の照準器並みのスイッチが並んでいる。
フロント?リア?どんな意味だ?
まあ良い、スイッチは不明だが女性用表示の意味は解る。
たかがトイレだ、いくら日本製でも自爆スイッチが有るわけではないのだ。
取りあえず押す、静かなモータ音の後。
”ヴゥァ、ヴゥァ、ヴゥァ、ヴゥァ、ヴゥァ、ヴゥァ、ヴゥァ、ヴゥァ”
『フゥゥゥゥゥァァァァァァ!!』
思わず叫びそうになり両手で口を塞ぐ。
止め、止めて!!
急いで壁のコンソールのボタンを押すが、襲撃者は無慈悲だ。
”ヴゥヴンヴゥヴンヴゥヴンヴゥヴンヴゥヴンヴゥヴンヴァヴァヴァヴァヴァ!!”
強くなってる!!やめて!止めて!!
思わず腰を浮かして前に倒れる。
襲撃者は停止して水が自動に流れた。
水音が止まるまで起き上がれない…。
「おい、どうかしたのか?」
ドアをノックする陸軍。
「い、いや、なんでもない。酔って転んだ。」
「そうか…。なら良い、変わってくれ私も用をたしたい。」
「あ?あぁ、解った。」
急いで身体を整える。
呼吸を整え壁の鏡を見て顔を確認、大丈夫だ。
トイレのドアを開けると懐疑的な顔の陸軍士官。
「大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だ。流す方法が解らなくて…。腰を上げると自動で流れる様だ。」
「ああ、そういう事か。なるほど。」
安心した顔に成りドアの中に進む陸軍。
背中に声を掛ける。
「私は先にシャワーを使うわ。」
『どうぞ。』
ドアが話すので。
ため息を付いてバスタオルを取りシャワールームに進む。
良かった。スイッチが少ない。
暖かいシャワーを浴びてホテルの用意したガウンに袖を通す。
シャワールームから出ると陸軍がベッドの上で寛いでいた。
「お待たせ。」
「よし、では私も臆病者になるか。」
「どうぞ。私は先に休むから。」
「|Einverstanden」
おどけた口調の陸軍が突撃する。
残って薄いハーフロックに成ったグラスを空ける。
この日本はおかしな機構が沢山ある。
恐らく工学技術を誇っているのだろう。
身体が冷える前にベッドに入る。
明日は”CHUO-SHINKANSEN”という弾丸鉄道に乗るのだ。
渡された資料では|フリーゲンダー・ハンブルガー《空飛ぶハンブルク人》号より速いと謳っている。
本当で有ろうか?一昔前の爆撃機並みの速度だ…。
細かい事は明日に考えよう。
暖かい波に揺れないベットに安心して睡魔に身を任せる。
翌朝、窓が明るく成り始めた頃に隣のベッドが動いて意識が戻った。
陸軍は欠伸をしながらトイレへ向かっている…。
枕元の時計表示は未だ早い。
ラッパの成らないベッドは貴重なのに…。
二度寝を目指し、寝返りを打って光から顔を背ける。
うとうとするとトイレから陸軍士官の絹を裂く叫び声が響いた。
「ふん、処女を奪われたか…。」
ベッドの中で呟く、理由は解るので気にしない。
(´・ω・`)…。(俺の話はシモネタが多い。)