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第三種接近遭遇その2

我々は東京湾の奥深くの桟橋に入った。

タグボートが我々の船を押している。

操作するのは年配の男だ。

舫いを投げる女の水兵。

陸の男が係留ロープをキャッチしてボラードに結んでいる。

かなり手馴れている。

「男ばかりだな。」

「そうだな。」

陸を見れば、目の前の高層ビルがかなりの圧迫感を覚える。

高架橋と鉄道、大量の自家用車。

全てを圧倒している。

「この場だけなら我が国(ライヒ)を圧倒しているな…。」

海軍士官が悔しそうだ。

「宣伝用の張りぼてかも知れん。」

同じく悔しさと強がりが半分だ。

これだけ大量の自動車が作れるのだ。

何故か皆ドレもコレも箱型なのが不思議だが。

ココの男達は働き者が多いのだろう。

戦車や弾薬を作り始めたら我々より…。

アメリカ人並みに沢山作るかもしれない。

「くそっ何だあの船。」

海軍士官が目の前の先導巡洋艦に悪態を付く。

「どうかしたのか?」

「あの巨体で前にも後ろにも動く…。」

先導が終わった巡洋艦は狭い埠頭で、その場旋回を始めた。

まるで戦車の様だ…。

海面に白い波が立っている。

「どうしたのかね?海軍の方。」

「いや、恐らく…。5000トンクラスの巡洋艦だが…。かなり小回りが効く。」

横を向いたので写真に忙しい水兵も驚いている。

日本の軍艦の上には水兵が整列して敬礼している。

男ばかりだが少数女性も居る様子だ。

何故か安心した。

帽子を振り見送るコチラの船員。

軍艦は又あの橋を潜り消えていった。

「さて、やっと敵地に上陸だ。」

陸軍の士官は船旅の終わりに嬉しそうだ。

しかし、ソレを咎める外務省の官僚。

「未だ敵ではない…。未だな。」

「解かってます。ただ、味方でも無いのです。」

「そのとうりだ。我々が野蛮人だと思われては困る。文明人だと相手に解からせなければならんのだ。」

タラップが船から下りると。

日本軍の軍楽隊と赤絨毯が用意されていた。

「一応歓迎されているらしい。」

船長が出てきて相手の女性高官と握手している。

軍楽隊の演奏は立派だが…。

「何故、イギリス国歌なのだ?」

「いや…。多分”皇帝陛下万歳”を演奏している心算なのだろう。時々ある。」

海軍士官も苦い顔だ。

同じく表情の外交官。

「これは先ず相手との交渉が必要だな…。お互いを知らなさすぎる。取り合えず我が国の国歌の楽譜を渡す必要があるな。」

全くだ。

一応我が国旗は大丈夫だった。

恐らく大日本帝国の方から譲り受けた物だろう。

鷲と鍵十字アドラー・ハーケンクロイツだ。

一方、この国はあの宿敵、大日本帝国と同じ旗なので交差した旗同士の組み合わせは奇妙なモノを感じる。

レッドサン・ブラッククロスだからであろう。

黄色人種(イエロー)と並ぶ事など悪夢でしかない。

我が、ライヒが劣等人種と肩を並べるのだ…。

タラップから次々と降り立つ淑女達。

正直、出迎えの男の高官達より、不思議そうに我々を見る少年の方が気になる。

「あの少年には護衛が付いて無いな。」

思わず口にする。

「え?ああそうだな。あと…。数年すれば精通しそうだ。」

「なんとか攫えないか?」

「いや、待て…。流石に不味い。しかし個室は用意できる。待て待て、相手は劣等人種だぞ?」

「いや。悪かった。思わず考えたダケだ…。くそっ本当に男の国なんだな。」

「そうだな、年寄りが多いが…。恐らく隠しているのだろう。くそっ!若い男も居る。」

「何処だ?」

「いや、アレだ、車を運転してる…。オイ!!固まるな!」

「え?でも大尉。若い男が居るんですね!」

「私、本物の男を見るのは初めてです!!」

セイラー共が集まってくる。

接岸したので手が空いた船員が多いのだ。

「まて、水兵共!」

「うわー、本当の男だ…。」

皆個人の双眼鏡で陸を監視するので一生懸命だ。

「あ、あの子凄い…。」

「何だと!!」

「何処だ!何処!!」

黄色い声が国歌演奏の終わった埠頭に響く、気が付けば出迎えの高官たちの視線を一身に浴びている。

コチラを睨む、訪問団団長が酷く機嫌の悪そうだ。


全員、後で酷く幹部からつるし上げを喰らった。



「クソッ!何なんだあいつ等!!」

戻って来た外交官が荒れている。

ココは船の休憩室だ。

夜になり第1日目に上陸した訪問団が戻って来た。

皆、同様に苦い顔をしている。

未だ本格的な交渉は始まってない。

唯の事前の打ち合わせと自己紹介で終わったはず。

「どうかしたのですか?ムッター」

遠慮がちに海軍士官が訪ねる。

「どうしたもこうしたも無い!ココの我が国(ライヒ)大使館が協力を断った!」

「はあ?どういうことですか?」

「日本が有るのだ。当然この日本が来る前にはアメリカもイギリスもフランスも…。殆どの大国の大使館がこのおかしな東京に揃ってる。」

「まあ、そうでしょうね。」

言葉を選ぶ、そうだな。確かにそうなる。

「この日本の連中は随分と平和を謳歌してきた様子だ。殆どの大国は表面上は友好国だそうだ。」

「そうなのですか?」

あの邪悪な黄色人種が平和的とはある種の冗談でしかない。

イメージが湧かないのだ。

「ああ、帝国主義は80年前に崩壊して大陸間の冷戦も40年前に終結。殆どのまともな国は商売と経済力で戦争をしているそうだ。我が国(ライヒ)もな!!」

「はあ?」

何に怒っているのか理解できない。

「この日本の居た世界で我が国(ライヒ)はなんと”ドイツ連邦共和国”だそうだ。」

頭を殴られた様な感覚だ、海軍士官が問いただす。

「なんですって?もう一度お願いします。」

「優良アーリアが支配していない。皇帝陛下も居ない。”ドイツ連邦共和国”だ!!しかもかなり小さい。フランクフルトが国境の町だそうだ!!」

この場に居る全員が顔を見合わせる。

フランクフルトは帝都ベルリンのすぐ隣りだ。

ライヒの半分が無いコトになる。

「団長も頭を抱えている。このドイツ連邦共和国が曲者だ。大使館員は我々がナチスドイツ党員だと言う理由で全ての協力を断った!全てだ!顔も出さない。手紙一つだ!」

これは困った。現地での協力者がまるで居ない。

未だあの大日本帝国(劣等人種)の帝都の方が知り合いを見つけるのが楽だろう。

「あの…。では?」

「こちらは通訳を見つけるのも難しい。お互い英語で会話している状態だ。冗談を通り越して滑稽だ!日本と我が国(ライヒ)がお互いの宿敵の言葉(英語)で会話しているのだからな!」

「通訳ですか…。日本語の解かる者は…。」

「一応連れてきている。相手もな。困ったコトにこの日本の言葉は随分と変っているらしい。大日本帝国の日本語が通じない。」

「そんなバカな…。」

「いや、一応読める、聞ける。だが単語の意味が解からないらしい。日本側からドイツ日本語辞典を渡された。こんなに屈辱的な話は無い。」

「日本側は?どうやって対応を?」

「あいつ等。マイクに話すと日本語とドイツ語が表示される機械を持って居る。恐らく後ろで操作しているのだろうが。読上げまでしてくれる。帰りにはお互い話した内容の紙まで用意してくれた。」

「驚きました…。しかし、問題無いのでは?」

「そんな物は交渉ではない。唯の押し付けだ。」

不貞腐れる様な姿の外交官。

「クソッ、おかしな連中におかしな世界だ。頭がおかしくなりそうだ。アメリカ合衆国が大国で分裂もしてない。イギリスと同盟国で我々のドイツは80年前の戦争で負けて分裂国家、40年前に一つになって。欧州連合で一つのヨーロッパだそうだ。」

「あの…。ソレは…。」

我が国(ライヒ)が負けた?おかしな感覚だ。

到底理解できない。

「コイツ等も、この日本もおかしい。初めに謝罪されたのが、我々の打ち上げた偵察衛星を大陸間弾道弾だと誤認して迎撃したそうだ。」

「はあ?」

「この日本の世界は大国同士が数千の大陸間弾道弾がお互いの首都や都市を攻撃できる状態で平和を謳歌していたそうだ。だから”我々には弾道弾迎撃能力が在るので打ち上げる前に事前の通告を”と言われた!」

「ばかな!劣等人種にそんな技術が!!」

「我々が、誰も知らないハズの発射場の位置と発射時間を丁寧に教えてくれた。目標に命中する映像まで持って来た!そのくせ迎撃兵器に関しては何も答えなかった。」

「空軍の方…。宇宙に近い物を打ち落とす兵器と言うのは有るのか?」

私に視線が集まるが…。

空対空ロケットは有るが、誘導が難しい、目標との相対速度の問題だ。

一方、地上から0から上昇加速するのにはエネルギーを使う。

地上発射型の地対空ロケットは精々、18000mが限界だ。

無論コレはロケットが届くと言うだけで、予想進路にロケット発射基が有った場合の話だ。

何せ射程は50Kmも無い。

早期発見、追尾、進路上の発射基を選定、誘導が出来ないと命中はしない。

コレは軍事機密の部類に入るので無論話すことは出来ない。

「難しいな、恐らく不可能だ。高すぎる、そして速過ぎる。」

言葉を選ぶ。

コレは我が国(ライヒ)の防空システムの重要な部分だ。

北アメリカ(U.N.A)と大日本帝国が近々、渡洋爆撃機、成層圏爆撃機を配備するであろう為に組上げられた我が国(ライヒ)の鉄壁だ。

「ではブラフなのか?」

「解からん、あの男達は済ました顔だ。よほど自信が有るらしい。」

”気に入らない連中だ!”

外交官の話した言葉を要約するとソレだけだった。



上陸は不可能だが、甲板上にでて陸を見る。

町は恐ろしいほどの光の渦だ。

「やあ、空軍の方どうだね?敵国の夜景は?」

陸軍士官がワインの瓶を持って遣って来た。

グラスは無いので喇叭呑みの様子だ。

「おかしな国です。これほどの電力をどうやって生み出しているのでしょうか?」

ワインの瓶を渡されたので一口含む。

「見たまえ、男達は寝ずの番だ。随分と勤勉な男達だな。」

岸壁には防護柵と装輪装甲車、銃を隠した男の兵が警備している。

目の会った兵に陸軍士官が手を振ると敬礼で返す日本兵。

「見たまえ劣等人種なのにジェントルマンではないか?」

「そのようだな。」

「まあ、明日になれば我々も上陸できる。あの外務省の小役人の苛立ちも理解できるであろう。」

楽観的な陸軍士官の声に少々不安を覚える。

”装甲が薄いな”日本国の戦車を見た時の士官の呟きだ。

「そうですか…。では今日は早めに休みます。」

「ソレが良い。私はもう少しこの異国の、異世界の風に当るよ、どうも海の上では寝つきが悪くて困る。」

ワイン瓶を飲み干す陸軍士官に敬礼をしてキャビンに入る。

異世界か…。確かにこの日本は異質だ。

男達の国、男が町と兵器を作ってソレを使って居る。

なぜ神はこの異世界を想像したのであろうか?

(´・ω・`)…。(以降、不定期のお知らせ。)

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