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20/22

第七種接近遭遇その1

(´・ω・`)…。(13日の金曜日投稿。)

内閣官房危機管理室で報告を受ける総理大臣はノートパソコン上のモニターを見て次官に尋ねた。

「この戦闘結果は本当なのかね?」

困った顔の次官、もう既に戦闘開始二日目の夕方である。

戦争の大勢は付いた。

人工衛星からの最新の映像で、敵軍、友軍の被害状況も判明した。

政府発表は断片的に行っているが、今夜の19時に総理談話で話す内容を詰めている最中だ。

民放は大日本帝国の発表をそのまま流している。

向こうのN〇Kは多くの情報(ニュース)を発信しているからだ。

「残念ながら…。大日本帝国海軍は夜戦を決行して、傷ついた南アメリカ海軍の大型艦艇の殆どを沈めました。そのまま追撃中の艦隊があり。一部は未だ戦闘を続行中です。」

「殆どを沈めたのか?商船もタンカーも。」

「軍用艦は全滅です。一部、逃走に成功した商船がマーシャル諸島に逃げ込んで、独逸に拿捕されました。数は10隻以下です。」

海上に陣形を組んだ大日本帝国海軍の戦艦の映像は一部が白飛びしている。

つまり、火災が発生しているのだ。

「大日本帝国は大勝利を謳っている。無傷に近い…とも、実際は損害が多い。」

「夜戦で誤射も体当りも構わず戦ったそうです。詳しい被害は情報収集衛星の解析待ちです。」

速報では、無傷の戦艦は無い様子だ、大日本帝国海軍は最低三隻の駆逐艦を失っている。

多くの艦が被害を受けているが大型艦は中破までだ。

衛星の映像で被害が解る。

戦艦で艦首の破損が酷い。

「戦艦で…RAM戦法か…。いつの時代だ。」

「いや、流石に船体はその様に作ってなかった様子です。艦首部に至っては大破に近いですが航行に支障はない様子です。」

大日本帝国海軍の行動の意味は解らないが、とにかくすごい戦意だ。

「…。」

思わず眉間を揉む。

「向こうの新聞では、敵艦を衝角で沈めた雄姿だと騒ぎ立ててます。」

別の書類を出す次官。

「国防海軍の救助活動を妨害したとも有るが…。」

「はい、その様に報告を受けています。帝国海軍は敵水兵の救助に消極的だったそうです。救助した捕虜の受け渡しも求めてきました。」

「渡さなかったのだろう?」

「はい、現在国内の空き施設を利用しています。収容施設は旧アメリカ海兵隊キャンプ富士で、国内の駐在米合衆国経済人や軍人の方々が…。」

途端に口が滑りにくく成る次官。

既に暴動が発生したとの報道が聞こえている。

「その報告は聞いた。面談をしたのだろ、ずいぶんショックを受けたそうだな。」

「はい、在日米国人はこちらのイギリスと話をすべき。と言う事で統一されました。」

南アメリカ合唱国はナチスと同じ思想だ…。

だが、此方のイギリスはどうであろうか?

ナチスではない。という以外に態度に違いは無いだろう。

「彼らのナチス嫌いは仕方がない。結果としては南アメリカ兵捕虜を在日アメリカ人に見せたのは良い結果(ショック療法)になった。」

「そうですね、日本の(アメリカ)が自国では無い別の国だという印象を持った様子です。」

ソレで彼等の禊に成るのであろうか?

この世界の母国が我々の嘗て居た世界では到底受け入れられない様な価値観で動いていると言う事を。

「現在日本国内に居る、外国籍、日本籍を持つ外国出身者…。彼らに帰る国が無いと言う事を…。認めさせなければならない。」

コレは苦しい戦いだ、我が国は明治維新から諸外国との軋轢に苛まれていた…。

ソレは、我が国がキリスト教国ではない、多神教国家であると言う特殊性による。

「ソレは追々、ですね、大東亜共栄圏の国々では…。」

その為に、政治家を輩出し、何代も総理を出した家はキリスト教徒が多い。

諸外国との対等な話を始める為に先人が選んだ。

我が国の価値観が世界で認められない為の苦肉の策だ。

しかし、この世界で価値観の迎合は命取りだ…。

現在の日本の在り方が崩壊してしまう。

「我が国の存在を…。価値観を押し通すしかない。」

帝国主義を…暴力を否定しながらお互いの生存と妥協を量るのだ。

しかし、もう既に此方の戦力を見せてしまった…。

「はい、台湾、朝鮮半島は大日本帝国…方面は満州共和国と名乗る国家に日本海を晒しています…。まさかウラジオストクが無いとは思いませんでした。」

沿海地方が満洲帝国に含まれている…、日本海は完全に内海だ。

この世界は…。まるで夢の中の様相だ。

未知の港から鉄道で満洲と繋がっている。

「大日本帝国の地図に無い港と駅か…。」

「恐らく軍事用の物だと思われます。当初に迎撃したドイツ帝国の偵察衛星はコレを探していたのだと思われます。」

「ソレだけじゃないだろう…。」

衛星情報センターからの報告では大日本帝国側に謎の施設が有る…。

「彼女達は未だ我々の情報収集衛星の性能を知りません。興味が無いのでしょうか?」

「ドイツ帝国は初期の偵察衛星を持っていたのだ…。ソレなりに対応しているのだろう。」

ドイツの偵察衛星(ピーピングトム)は機械式光学カメラとフィルムで”地上からX線掃射装置で対応できる。”との防衛技術研究所からの返答だ。

試作品は来月には出来上がる。

民生部品で十分に対応できるそうだ。

「外交官達は移民交渉で忙しい様子です。日本国民を自分達の北海道へ移民させるのにかなり熱を上げています。」

「この世界の北海道は…。随分と寂しいらしいな。」

民間に流れている情報は全てはJAXAの地上探査衛星の解析だ。

「明治レベルの生産量です。困った事に飛びつく若者や中高年が多くて…。」

若いヤツ(あいつ)等、今の豊かな北海道しか知らないからな…。」

北海道開拓団の苦労話は北海道出身者しか知らないだろう。

「ですね…。コチラの農水省が食糧確保(ODA)の為の乗り気です、人口減少中の大日本帝国も入植者には大喜びですから。」

「初段階の食糧確保で随分と無理を言ったからな…。」

「ええ、混乱はかなり防ぐ事が出来ました、まあ、外食産業と小売(コンビニ)業界からは大顰蹙でしたが。」

統制販売に切り替えたから品物供給が減った。

配給手帳を発行する話まで出たのだ。

大日本帝国からの食糧支援で何とかやり過ごした、今でも店頭のメニューは随分と減ってコンビニのおにぎりからは海苔が無くなった。

「確かに大日本帝国の北海道…。ややこしいな。」

「今のトレンドは我々の日本に”新”を付けるのが流行りだそうです。」

「公文書では書けんな…。」

「ですね。」

肩を竦める秘書官。

「北海道がもう一つあれば食料事情も改善する。ソレは解る。」

「農水省が見せた米の耐寒、多収穫品種は大日本帝国も注目してます。帝国の武官達は大学訪問に忙しい様子です。まあ、相手は欲しい物を探して要るのでしょう。向こうの農商務省の人員には限りが有りますから。」

相手の農商務省の人員は少ないのだ、船舶輸送の為の大東亜省も。

「まあなんにせよ。交流が進むのだ…。問題はこの世界は随分と…。」

「帝国同士の冷戦中ですからね。先日から大日本帝国はコチラの旗色を決めろと詰め寄っています。我々がドイツ帝国の訪問団を受け入れたので。随分と機嫌を損ねてます。」

戦争が始まる前から大日本帝国は焦っている様子だった。

「大日本帝国と軍事同盟か…。避けられんか。」

今回の事で此方の交戦能力を見せつけてしまった。

この世界の主要帝国の一つの海軍を壊滅させる能力が有ると示してしまった。

「はい、大日本帝国の外務省からは大東亜同盟に入れと矢の様な催促をされています。そろそろ決める頃ですね。」

この世界での衝撃は日本海海戦に勝った程度では無いだろう。

「北アメリカやイギリスとの話は未だだぞ?」

「大英帝国と話をするにはスイスかオーストラリアに行くしか有りません。大日本帝国経由ですね。ドイツ帝国との窓口は未だ始まったばかりです。」

「大日本帝国は嫌がるだろうな。」

向こうの全権大使(大佐)の表情を思い出す。

疎開を断った時もそうだ、まるで恋人に断られた娘の様な顔だった。

「何せ、わが国はこの世界で国際的な地位を確証されて居ません。大日本帝国も善意だけで我々の我儘を聞いているだけですから。」

あの表情は嫉妬なのでは無いのだろうか?

「下心が多いか…。官房長官に内々の話で向こうの皇族にコチラの男系男子の婿入り話まで有る。向こうの男系は絶えたそうだ。」

「コチラには未だ宮家外に男系男子が居ますからね。」

「向こうの宮内省の宗秩寮そうちつりょうから大量の見合い写真と釣書を持ってきたそうだ。桐の箱に入ってな。わざわざ巡洋艦で運んできた。」

「うわぁ。ソレは先々週に横須賀に入港した話ですか?かなりの写真がインターネット上に出てますね。」

「初めは皇居に一番近い港を指定してきたので難色を示したが”なんなら砲弾薬は全て海洋投棄して入港しても良い。臨検も受け入れる”と言い切った、大勢の目を集める為に横須賀が良いと言う事で押し切ったが…。」

ニュースの映像を思い出す…。

「で、カメラ持った一団で大騒ぎですか?」

「相手の艦長も人の多さに驚いてた。一般見学は無しだったが。ニュースに成ったからな。」

余りの人出で交通整理に所轄警察署から人員を出したそうだ。

「戦争が終わって直ぐの来航で、何を運んできたのかインターネットの特定サイトで大盛り上がりでしたが…。」

「そうか…。やはり隠せなかったか…。」

本来は目立つ来訪では無かった、公式発表は親書で押し通した。

「お見合い写真と釣書だけで巡洋艦…。」

「相手は必死なのだ。海上保安庁が日本海…。いや、西太平洋で帝国海軍の駆逐艦(パトロール)が帝国の漁船を追い回しているが確認された。交信の結果、密入国の取り締まりだそうだ。」

「その情報は民間でも出回って居ます。」

「そうなのか?」

「はい、大日本帝国のTV放送はインターネット上の動画サイトで見えます。独自のアナログ放送ですが電波解析して受信機作った人がいるようです。」

「だれが?何のために。」

「電波ヲタク達です、送信出力が大きい為、自作のアンテナと比較的安価な、DSPデジタルシグナルプロセッサで…。技術雑誌の付録程度のマイコン(ワンチップ)で検波できるそうです。」

「なんてこった…。」

「アマチュア無線で相手と交信に成功したと言う話も…。無論、大日本帝国側は検閲を受けているそうなので。」

国際郵便条約の擦り合わせが終わり締結後、初の郵便物はSQLカードだったと言う話は聞いた。

「そうか…。コチラの情報が相手に伝わるのも時間の問題だな。」

アマチュア(あいつ等)無線技師は未だ絶滅して無かったんだな…。

「はい。そうですね。交流の一環でコチラのN○Kが向こうのN○Kに夏の全国高校野球の映像を渡したそうです。向こうの全国大会は数十年前に中止しているそうなので、かなりの視聴率が取れたと。」

「向こうでプロ野球は無いのか?」

首を振る次官。

「解りません…。その結果、(向こうの)日本では若い男がいっぱい居ると大騒ぎで。ソレで、漁船で密入国を試みる者が後を経たないそうです。で、向こうの新聞社に北海道移民計画がスッパ抜かれた。」

日本から大日本帝国への移民の話は向こうから申し出が有った。

「おかしいな、この計画は向こうからの申し出だ。国民への…ガス抜きとしての北海道開拓移民なのか?」

話は前から在った、しかし優先度は低かったハズだ…。

今では日本海側で新たな拉致事件が起きそうな勢いだ。

「かもしれません、嫁と仕事と土地が用意してある。と言うなら、待っているのが肉体労働でも体力に自信の有る男は多いですから。日本では喰わせて行けない。元々は食料確保の為のODA計画案の一つなんですがね。」

「向こうの望むODAとはずいぶんと違う様子だが…。」

公式には大日本帝国政府からの支援要望は多い。

殆どは軍事関係が主だ。

「大東亜共栄圏は大日本帝国の軍事力頼りですから。軍事支援を望むのは解ります。」

「だが…我々から見れば大日本帝国内の産業基盤は脆弱すぎる。」

工場誘致をする前の段階だ。

何せ水源、電源の開発からのやり直しだ。

インフラ整備が進まないと組み立て工場も作れない。

「ですね…。」

今の大日本帝国のインフラは昭和初期(戦前)以前だ。

電源の共通化(富士川挟んだ分電)も行われていない。

「当面は相手の欲しい物を出し惜しみしながら…。有利な交渉を進めるしかない。我が国がこの世界に転移した結果、多くの海外資産が消失した…。」

我々はこの世界に丸裸(フルモンティ)で来てしまったのだ。

「はい。新なるODAで早急に海外資産を一から積み上げなくては行けません。」

「我々は日本列島一個分の海外資産を失った…。」

失敗は許されない。

「しかし、新たな無人の土地が目の前に有ります。」

若者は荒野(大陸)を目指す。

日本人に有りがちな話だ。

「解っている、昔の資料を揃えろ…。バブル時代から…。いや、中曽根内閣か…田中内閣まで後退することに成る…。屈辱的外交交渉を見直すチャンスであり、国家の危機でもある。」

日本改造論(インフラ投資)からのやり直しだ。

「はっ!」

「この状況下で我が国の存在をこの世界に印象付ける!!」

経験が有るの(強くてニューゲーム)で優位に進めるだろう。

「歴史にのこりますね。」

「ああ、抜かるなよ。絶対に黒歴史にしては成らない。我々がエリートで有ったと日本の歴史に刻まれるであろう。大仕事だ。」

「解りました。」

決断した総理の野望。

「新しい日本を再構築(リストラクチャリング)してやる…。高度経済成長期を誰にも邪魔されずに完遂するのだ…。」


繁栄を我が手に。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 要するに「女子校独特の気風が国家になった」様なものか… [一言] 英国は国民的競技としてP-1グランプリが流行っていそう。
[気になる点] 女だらけになったこの時代の中国、半島がどうなってるか全然想像つかない [一言] 在日メリケン人「これがこっちの俺らなの?ないわー…」
[良い点] 相変わらず滅茶苦茶に面白い。 [一言] こんだけ全体的に過激思想なのは多分…… 男性が生まれない →緩やかに(というか口減らしという意味では争ってでも)衰退するしかない →なので世界的に破…
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