第六種接近遭遇そのB面-1
(´・ω・`)米国面に引きずり込め!!
変わり映えしない船から見える景色に完全に飽きた。
船底で淑女達がヒマを持て余している。
皆、カードやナイフの手入れは遣りつくした。
ライフルを手入れして気を紛らわせたいが。
大事な相棒は潮気に晒すのは厳禁だ。
もう既に乗船前に終わって、完全梱包入りしてあるので上陸するまで解かれる事は無い。
朝日のラッパで起きて水の配給を受けて水筒に補充して、顔と歯を洗い。
朝食のオートミールに粉末牛乳と干し杏、風味の無い朝食。
最上甲板をランニングして汗を掻き、身体を拭く。
後は自分のハンモックで聖書を読むくらいしかやる事は無い。
何か働きたいが、船員達の邪魔にしかならないと解っているのでやらない。
唯一出来る甲板掃除や便所掃除も楽しいレクレーションになっている。
その為、志願者が多すぎて順番が待ち遠しい。
普段は懲罰作業の内なのだが…。
「早く上陸しないかしら。」
隣の二等水兵が毎日同じこと呟く。
持ち込んだ薄い本はもう飽きた様子だ。
「きっと上陸した後の陸軍の奴等は酸っぱい臭いのハズよ。優しく挨拶してあげて。」
この金髪ジャーヘッドは、たしかテキサス出身なのに海を見た事が無いから海兵隊に入ったと言う奴だ。
鍛えられたのでもう、波でゲロを吐く様なことが無い。
どんな海でも波に酔う海兵隊員は居ないのだ。
「そうね。BEMってどんな形なのかしら?昆虫ニンゲンかしら?トカゲニンゲンかしら?」
「日本人よ?」
「ええ、見た目はよね…。宇宙人が神が作った人の形をしているワケが無いもの。正体は何かしら?」
少し楽しそうなテキサス娘。
皆、戦争前で緊張しているのを隠そうと努力しているのに…。
そいうえばコイツは少し不思議ちゃんで以前に借りた薄い本の中身はサイエンスファンタジーだった。
「交戦すれば解るわ。」
暇なので何とか最後まで読んだが…。
訳が分からなかった。
「そうね…。宇宙人を捕まえるのよね。」
「あなたは気を抜かないでね。その宇宙人に捕まりそうよ。」
「宇宙人に捕まる様なマヌケはいないわ。」
少し拗ねるテキサス娘。
「何か珍しい物を見つけても近寄らないで。宇宙人の罠かもね。そいういのに引っ掛かりそうなのよ。あなた…。」
途中で船内に響くブザー音にかき消される。
『戦闘準備、各員は持ち場に付け。戦闘…。』
皆が息を呑む。
船員が持ち場に走っている。
「海兵、そのまま待機、鉄帽と救命胴衣を着けておけ。」
見下ろした軍曹が最上甲板から怒鳴る。
「始まったのね…。」
未だ上陸の日では無いので、宇宙人との海戦が始まったのだろう。
「未だ私達の出番じゃないわ。」
海軍の仕事だ。
救命胴衣を引っ張り出して装着する。
紐の長さと結び目をよく確認する。
一応水筒とナイフ、ハンドガンを腰に下げる
ポケットの中を確認する。
ガムと煙草、キャンディに干しプラム…。
準備が整う。
最後は鉄帽を頭に引っ掛ける。
後は特に何もやる事は無い。
「おーい、空母にパンケーキが並んでるぞ!!」
歓声を上げ皆がタラップを登る。
最上甲板で頬が潮風に晒されると。
遠くの空母からパンケーキが飛び出す所だった。
海兵達が甲板上に出て声援を挙げる。
「クソ宇宙人共を皆殺しにしてこい!」「爆弾で素揚げにしてやれ。」
内容は淑女とは言えないが海兵学校で教えてもらった、正しい挨拶だ。
楽しい時間だが、何故かわたしは不安になる。
「宇宙人はどんな戦艦をもって居るんだろう。」
海兵隊は戦闘に参加できない。
上陸専門の軍隊だ。
青空に消えていく大繁盛のF5U達を見送った。
(´・ω・`)パンケーキ…。




