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第六種接近遭遇その5

ノートパソコンの画面をモバイルプロジェクターで広げ白い壁に実況を開始する。

戦艦土佐の士官食堂は即席のCICと成った。

我々、国防軍派遣武官は更に三組へと別れ。

各艦へ赴いた。

今、この戦艦土佐に残るのは団長を含む三名だ。

低高度光通信衛星による戦術データーリンク。

戦艦艦橋後ろにアタッシュケースから出した自動追尾基地局が設置済みだ。

光伝送ケーブルを与えられた自室とこの士官食堂に仮設配線を行った。

遠く数百Km離れた戦場と日本がリアルタイムに近い速度で情報を共有できる。

無論、我々の受け取る情報はトリミングされている。

解説は俺に任せて団長(少佐)も将校団の細かい質問に答えている。

固唾を呑んで共通作戦状況図(COP)を見守る将官()達。

年齢は違えど同じ顔が並ぶ。

戦闘開始から二時間で、戦局はもう既に終盤だ。

現代の海戦は一瞬で終わる。

兵器の高速化に皆、同様に驚いた顔だ。

戦場がひと段落したので質問が出る。

「雷撃機に機搭載の誘導弾の射程は何キロですか?」

若い少尉だ。

「申し訳ございません。お教え出来ません。」

残念そうな顔だが直ぐに隣の少尉が手を挙げる。

「誘導弾の弾頭炸薬はどの程度でしょうか?」

「500ポンド爆弾程度です。(棒)」

「「「おおおー」」二十五番かぁ…。」「駆逐艦なら一撃だ。」「軽巡洋艦でも危ないね。」

数字に拘るのは何処の海軍も同じだ。

若い士官はメモに忙しそうだ。

何かを計算して納得している。

「ソレで戦艦を沈めるのは大変だね。」

渋い顔の将校。

「確かに…。だけど大型雷撃機なら…。一機で戦艦一隻(一杯)を確実に大破できる…。」

大型雷撃機…。何故かP-1をそう呼ぶ向こうの海軍。

「三十機以上居るんだ…。連合艦隊(我々)でも全滅だろう…。」

目を覆い額を揉む連合艦隊司令長官の呟きは驚きでは無く苦渋だった。

画像上の只のマークから6個の28式空対艦誘導弾(対艦ミサイル)が放たれた時は食堂の中は歓声が上がった。

しかし、殆どが命中マークに変った途端に海軍将官達の顔は驚愕に変った。

「これからどうなるのですか?」

一番若い顔の少尉が遠慮気味に質問する。

「日没後、攻撃は一旦中止します。警戒機と哨戒機による活動はそのまま続け、22:00に交代。明朝までに次の戦闘部隊に引き継ぎます。」

ノートパソコンを操作して画面を切り替え。

レーザーポインターを使い壁の戦況を解説する。

敵の主力は完全に排除したので残るは小型戦闘艦(PE)と輸送船だけだ。

「新日本軍の方々はこのまま撤退するのですか?」

帝国海軍には交戦した艦艇が撤退している様に見えるのだ。

「いえ…。翌朝、敵の撤退を確認して。警戒状態を解除するか判断します。」

その手はずだ。

「相手に引く時間を与えるのですか?」

「敵は混乱しています、壊滅させる好機です。」

「今こそ艦隊突撃で敵を粉砕する時です!」

抗議の様な質問が集中する。

若い士官ほど質問が攻撃的だ。

士官の声を目を閉じて聞いていた司令長官がゆっくりした声で尋ねた。

「敵が引かない場合は?」

「おそらく、各攻撃隊が05:00に発進、日の出と共に配置に着いた艦隊と航空機搭載飛翔体が、前進する船腹のみを撃滅します。」

無論、潜水艦隊と潜水ドローンの全力攻撃も始まるハズだが言わない。

情報収集は途切れていないので全ての着弾は同時に発生するだろう。

「遠距離攻撃兵器は自動誘導なのでしょう?何故今、攻撃を続行しないのですか?」

電波の目には昼夜は関係が無い。

「それは…。」

弾薬を有効に活用する為だとは言えない。

夜間の間に射耗した艦船と部隊が交代して再配置しているのだ。

ミサイルの洋上補給は出来るが戦闘に参加した全てのフネを補給することは出来ない。

一旦、母港に戻るしかない、それに…。

弾薬(ミサイル)は無限には無いのだ。

予算は限られている、生産には時間が掛かる、一部外国製の部品もある。

暫く演習も出来ないだろう。

「既に敵は侵攻能力を失っています。戦略的に無意味な交戦は避けるべき…、という考えです。」

答えに窮した俺の代りに団長が答えた。

「無意味…、わかりました…。」

無意味と言う言葉に落胆する士官達。

「ご理解の程ありがとうございます。」

助け舟に安息する。

「なるほど…君達、新日本は武人(おのこ)の様子だ…。羨ましい限りだ。」

長官が立ち上がり胸を張った。

「総員に告げる、我々連合艦隊は。全兵力を持って突撃を命じる。米帝国海軍を撃滅しなさい。」

全員(帝国海軍)が背を伸ばし受令する。

「「「了解!!」」」

「各艦、艦長に通達。明日の日の出までに新日本軍が決めた退避位置へ戻る事。母港に帰る物資を残す事。それ以外は何も考えなくても良い、帰ることが出来れば船体の保全義務も無視しなさい。一隻でも多く、一人でも多くの(白人の女)をサメの餌にしなさい。」

「「はっ!」」

ブザーが鳴り、途端にあわただしくなるフネの中。

「待ってください。相手の多くは商船です。」

団長が司令長官(大将)に再考をお願いする。

「敵の主力艦は沈んではいません。敵船団の多くは歩兵と武器です、国際法上の軍船です。あなた方には無意味ですが、私たちの多くの姉妹と娘を殺した敵なのです。」

「戦争に復讐は無意味です。」

「無意味…。いえ、意味は有るのです。そう、大変有意義な事が…。」

大日本帝国にとって戦闘員の撃滅に何の意味が有るんだ?

困惑する我々に…。

長官が呟く。

「くくくく、他の(ひと)の所に行こうなんて許しませんよ…。」

ひっ

笑う指令長官に狂気の影がある…。

「軍曹、中尉を拘束なさい。」

その言葉で全ての女達(水兵)が目で会話をしている。

「どうしたのですか!!」

士官の厳しい声が食堂に響く

「いえ…。触ってもよろしいのでしょうか?」

声に含まれるのは困惑だ。

途端に食堂内の空気が白ける。

退室を命じられた、いくら同盟国と言えど、観戦武官に権限は無い。

コチラに拒否権は無いのだ。

「これより退出し、自室にもどります。」

団長が具申する。

「ありがとうございます。」

「ゴ、ゴホン。軍曹、我々は貞淑な淑女なのですからその様に行動しなさい。」

「は↑、はい↓。」

何故か残念そうな下士官に前後を固められ戦艦の司令部を後にした。

我々三人は案内された私室に軟禁された…。

ライフルを担いだ水兵がドアの前に二人、離れた廊下に見ただけで三人も立っている。

恐らくそれだけではないのだろう。

だが、室内でも途絶え気味で衛星通信は確保できている。

団長がチャットで話す。

『コチラも軟禁されました…。』

ブロックノイズで動画が崩れるが…音声は途切れない。

「そうか。司令部へ連絡は取れたか?」

空母に移った組みだ…。

「はい、テキスト送信済みです。」

答えに映像の横の窓にテキストが流れる。

”こちらの空母は航空隊で薄暮攻撃を行う心算ですね…。”

どうやら向こうも監視が聞き耳を立てている様子だ。

船体が酷く揺れる。

艦内でブザーが鳴っている。

壁に付いた折り畳みベッドに座り艦内の戦闘音楽(水兵の足音)を聴く。

「困ったな。こちらも電信を送ったが…返答は未だだ。」

団長の手がキーボードを叩く。

“本部からの命令は、 -情報収集を行え- との命令だ。“

メッセージが流れる。

『わかりました。』

通信が終わると、慌ただしい艦内が静かになり緊張した空気に成った。

「始まったのか?」

「恐らく…。」

暫くの後、床から大きな振動が伝わった、地震では無い。

いや、船体が振動している。

これは…。

「主砲発射か?」

団長が呟く。

「おそらく…。」

昨今の海軍軍人には体験したことが無い、大口径砲による砲撃だ。

「戦闘が始まってしまった。」

「敵の反撃は?」

「敵戦艦の殆どは大破か傾斜している。例え発砲できても統制射撃が出来るかどうか不明だ。」

「一方的な戦闘になるのですか?」

「恐らくな…。無傷の戦闘艦は少数の駆潜艇(PE)程度だろう…。他は皆商船だ。対空機関砲ぐらいは仮設してあるかもしれん。」

更に振動。

クソっ、何も出来ないのが悔しい。

折角この(海戦)に居るのに…。

「ああ、戦艦が戦艦を沈めるところは見たかったな…。」

思わず呟く。


「アホか?」

団長に呆れられた。



結局、軟禁されたまま。

戦艦同士の戦争音楽を枕に夜明けを待った…。


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臨時ニュースを申し上げます、臨時ニュースを申し上げます。


大日本帝国、大本営発表。


帝国海軍、連合艦隊は同盟新日本海軍との共同作戦において。

太平洋中部方面に侵出した、敵。南アメリカ帝国海軍任務艦隊をことごとく撃滅せり。

当方の損害は軽微ナリ。

繰り返す、敵艦隊を殲滅セリ。

敵艦隊を殲滅セリ。


大日本帝国バンザイ、同盟新日本バンザイ。

(´・ω・`)ヤンデレ・ジャパン…。

(´・ω・`)…。(超弩級戦艦、ヤンデレシスターズ)


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― 新着の感想 ―
[一言] 日本近海なれど、ヤっている事は「ドキッ!女だらけのソロモン夜戦!」 史実のソロモン海戦は飛行機の飛べない夜間に日米艦艇が幾度も殴り合った20世紀最後の大規模夜戦。 夜間の航空阻止をしないこ…
[一言]  殺りにくいですね、女だけの異世界。まー、攻めて来れば殺るしかないんですが、自分の中にこういう忌避感があることに気付かされました。 (;´∀`)
[良い点] 更新お待ちしておりました。今回も面白かったです。次回更新も期待していります。
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