第六種接近遭遇その4
(´・ω・`)しんどい…。(話は少し戻ります。)
戦争が何処かで起きそうだ。
そう噂されていたのは知っていたが、朝のTVでは何処も、深夜に行われた総理大臣の宣戦布告発表時の映像の繰り返しだ。
相変わらずマスコミは脳が無い。
同じ映像を繰り返せば国民を騙せると思っている。
宿舎からいつもと変わらない通勤電車に揺られ。
朝一番に市ヶ谷の自分の机にカバンを置いたら内線で呼び出された。
呼び出された部屋には数名の士官が居た。
皆、顔を知っている。
艦隊勤務経験のある者か、駐在武官経験者だ。
陸空海は関係ない。
昨今は潜水艦にも大型護衛艦にも国防陸軍や国防空軍が乗っている。
海の上で居るより陸で椅子を尻で磨いている時間が長い。
日本海軍にもそんな部署は在る。
無論、海軍士官として任官しても、一生フネの上で甲板や武器やオイルメーターを磨く適正が在る者ばかりではない。
事務屋と言われる我々でも。
それぞれ、国際法や情報解析、航空誘導、航路策定と専門職に暇は無い。
「さて、もう既に知っていると思うが我が国は南アメリカ合従国より宣戦布告を受け、それに対し大日本帝国と共に宣戦布告を行った。」
今朝の…。
いや、深夜にスマホへ緊急速報が流れた。
但し、我々に与えられたのは専用回線では無く、民間への警告でしかない。
非常呼集は無かったので、我々は通常通りに電車に揺られて出勤した。
町は落ち着いたものだった、戦争中なのに不思議な気分だ。
「結果、大日本帝国より双方に観戦武官の申し込みがあり、その為。集まった君達には大日本帝国海軍への派遣が決まった。」
決まっているので拒否は出来ない。
もう既に戦争は始っている。
妻と子供達にメール出来ないかな…。
状況説明を続ける上官。
嘗ての旧赤坂プレスセンターの一部、防衛省ヘリポートに並ぶMV-22に乗り込み。
大日本帝国、太平洋上の連合艦隊に移乗すると言う話だ。
毎度御馴染みの、衛星通信端末が入ったハードケースを渡される。
昼飯前には目的地だそうだ。
良かった、昼は食べないほうが良さそうだ。
PXでゼリー食とSDFラーメンを買っておこう。
イザと言うときは帰れない覚悟は在るので皆、ロッカーに替えの下着とシャツは持っている。
カバンに詰めるだけだ。
陸軍士官は迷彩背嚢を使っているが、我々海軍は雑嚢だ。
持ち込む私物の重さの話が出た。
「醤油買って来たほうが良いかな…。」
小声で話す同僚。
思わず答える。
「俺は麺つゆ派なんだ。」
「めんつゆは同じ味に成るから飽きる。ワサビと七味が良い。生姜は意外と何処でも手に入る。」
別の士官が囁く。
「それは…。」
「味塩胡椒が一番だぞ?」
「チューブの味噌が最高。」
皆の心配事は駐在長期で苦労する、食事の味付けの話に成る。
残念ながら正解は”全て持って行く”だ。
「おい!お前ら行く先は日本だ。安心しろ。」
誰かの声だ。
そう言えばそうだった。
味噌と醤油は有るだろう。
外国暮らしの苦労が頭を過る。
海軍士官は外交官なのだ。
向こうの連合艦隊に連絡員として配属される。
準備はめまぐるしく進み、ロッカーの私物を雑嚢に詰め込むと。
赤坂行きのマイクロバスでCV-22に押し込まれた。
幸い、十年以上の運行で落ちた機体は少ない。
その少ない幸運が俺達に降り注ぐ一瞬を感じる。
重力を感じるのはシートのケツときんたまダケだ。
そのまま並ぶ三機編隊のCV-22は東京湾を南に進み…、KC-130により心臓に悪い空中給油時間を越え。
それぞれの目的地に向かって空に消えた。
揺れる水平線を監視る任務が終わると、洋上に並ぶ大艦隊の上空に出た。
波間に浮かぶ海面は日の光を受けまぶしい。
ソコに並ぶ無数のシルエット。
「戦艦だ…。航空母艦も有るんだな…。」
「甲板は木製だろうか?」
「解らんが…。アングルドデッキじゃない。エレベーターも甲板上だ。」
シートベルトから開放された状況下で窓から望む。
「戦艦に着艦できるのか?」
「いや…。水上機しか並んでない…。空母で無いと…。」
「空母の甲板にカタパルトらしきライン…。その他は木製っぽい。耐火飛行甲板では無さそうだ…。」
CV-22のヘリコプターモードの排気煙は高温だ。
耐熱甲板でないと着艦できない。
「着艦でないのか?」
「最悪、ラペリングか!?」
言っている傍から乗員がホイストの準備を始める。
良かった、ラペはもう何年もやって居ない…。
久しぶりでいきなり本番を遣るのは辛い。
パイロットが英語でなく、日本語で交信している。
漏れ聞こえる声は高いので女の声だ。
『こちらは連合艦隊旗艦土佐。後部飛行甲板デリックにて収容可能…。』
えらく、変調率の高い雑音の多い音だ。
女性の高い声に雑音が混じる。
「こちら、日本海軍、申し訳ないが空中線が邪魔で降下高度が保てない。航空母艦の甲板降下を希望する。」
『了解、こちら土佐。航空母艦生駒への着艦を許可する。発炎筒の風向きに注意せよ。』
艦隊の上空を大きく周回するCV-22。
「了解…、甲板上の煙を確認した。ラペリングにより降下する。」
『こちら戦艦土佐、ラペリングとは何か?』
そのまま、煙を確認した船縁の高いフネに向かう。
飛行甲板直下で固定翼モードからヘリコプターモードに変わるCV-22。
酷く揺れる中、カーゴハッチが開きキャビン内が風圧に晒される。
風と揚力の暴力の中でウインチにヒッチを急かすクルー。
「忘れ物をしないで下さい!!あと!暴れないで!!」
叫ぶクルー。
解っているが風の暴力の中では耳に入るのは断片的だ。
クルーが勝手にフックを掛け、身体に触り点検する。
雑嚢とアタッシュケースは持っている。
全て任せた状態だ。
相手の手際が良さ過ぎて心の覚悟が追いつかない。
「では!行ってらっしゃい!」
背中を押されて視界に空が広がる。
簡単に重力が無くなり混乱する。
ウインチで落下だ。
狭い飛行甲板の外は海原だ、落下する感覚に見る見る甲板が迫る!
落ちている!!速い!
クッソ!軍関係者だから遠慮が無い。
重力が何処に有るか解らない!
脊椎に響く振動で一瞬に止まる。
あと…、3メートルで甲板だ、酷く高く見えるが、呆然と見つめる女性達の顔が印象に残る。
皆、作業服に略帽を手で押さえ、口を開けたままの表情だ。
訳の解らない状態でウッドデッキの甲板に降りた。
だらしなく尻餅を付いて、無様に倒れた航空母艦飛行甲板の眺めは、まるで学校の体育館の床だ。
しかし、着地の足の裏の感触は一応装甲甲板の様子だ。
艦橋以外は甲板と空。
咄嗟に上空から迫ってくるロープと同僚の影に身体を捻る。
上手く受け身を取り、ヒザを付いて身体を起こす事に成功した。
寝転がっていた場所に両足で降り立つ、空挺徽章の陸軍士官。
第一狂ってる師団上りで水陸機動団の経験者だ。
潮気も知っている。
心配事は空軍の大型護衛艦上がりの航空徽章持ちも居る。(脳筋)
次々に降り立つ士官達。
総勢8名が大日本帝國の軍艦に降り立った。
ロープに合図して上空、シルエットに成ったクルーの腕の返答ダケが見える。
CV-22のダウンウォッシュの暴力に晒された甲板に広がるロープが宙に上がる。
何か水兵が話しているが声は風の暴力で聞こえない。
なるほど…。水兵達はコレに耐えて居たのか。
下から見るとありえない起動で機体が翻る。
機長の啓礼が見えたが一瞬で海原上の空の染みに成る機体。
転がる行幸嚢にイマイチなフォーメーションを獲る我々に本物の帝国海軍少尉が声を掛けてきた。
「ようこそ、日本軍の方々、歓迎します。私はこの航空母艦生駒の甲板士官で少尉の勅使河原伊織です。」
敬礼をする若い海軍士官、白い詰襟の女性の動作は何となく、宇宙人を逮捕するMIBの黒服の様に見えた。
我々は飛行甲板に並ぶレシプロ機を抜けて艦橋に入る。
ハッチは頭を下げないと潜れないのは何処でも共通だ。
白い壁のペンキに変わりの無い人間工学を無視した階段が現れる。
軽快に先を登る案内の少尉、若い女性のポニテを見る。
良いケツだ。
無論紳士の我々の視線は足元に…。
おい、ガン見するな…。
DTと言う噂の独身士官の視線が怪しい。
案内されたのは航空母艦の艦橋だった。
いつの時代も艦橋の配置は変わらない。
艦長椅子に座る年配の女性に申告する少尉。
内容から彼女が艦長らしい。
「ようこそ。第一航空艦隊、旗艦生駒へ、歓迎いたします、一戦隊旗艦への運貨艇の準備をしていますので、暫くお待ち下さい。」
「はっ!ありがとうございます。」
一同啓礼の後、今回の団長役の国防海軍少佐が答え、握手する。
にこやかな対応だが…。
艦橋内が全て女性で視線が集まっている…。
何故か皆、困惑の表情だ。
この艦橋内は全て女性で日に焼けた顔の小柄の白い水兵服にズボンにショートボブだ。
少数の士官服の女性は後ろでお下げかポニテが多い。
巻き毛は居ない。
皆、艦橋配置のシンボル、大きな双眼鏡を首から下げている。
軍艦なのに女だらけで異常な光景だ。
「少尉、10:30まで艦内の案内をしてやってくれ。」
「はっ!了解しました。」
副官らしき女性が微笑みながら付け加える。
「少尉、集合場所は後部短艇甲板よ。遅れないでね。」
「はっ!ご安心ください。」
応える少尉の顔が赤くなっている様子だ、耳まで。
なるほど…、新米士官イジリはこの世界でも同じなのか…。
「では失礼します!短いですが艦内をご案内いたします。どうぞコチラへ。」
一応、腕時計で現在時刻を確認する。
30分チョイで出発か…。
タラップを軽快に降りて飛行甲板下の少し広い場所で止まったポニテ。
振り返り、皆に答えた。
「申し訳ございませんが。時間がありませんので、余りご質問にお答えできません。」
まあ、軍事機密に当たる場所なのだろう。
なんとなく、最上甲板を超えるハッチを見たのでこの艦の甲板装甲は解った。
後ろを付いてくる下士官は、俺がソレに触れた時を見逃さなかった。
今も渋い顔だ。
得意げなポニテがハッチを潜った先は白い壁のペンキのデッキ下。
航空機格納庫だった。
昨今珍しい蛍光灯の下並ぶ艦載機。
所狭しと並ぶ翼を折り畳んだ航空機が犇めき合っている。
かなりの数だ。
得意そうな鼻息のポニテ士官、悪いがツッコミ所は無限大だ。
艦載機は各種ある様子だが全てプロペラ固定翼機だ。
小柄の白いツナギが油に塗れて張り付いている。
全て後輪式の機体で、エンジンカウルの形状から、帝国海軍の艦載機はジェット化は進んでいないのが判明した。
「ミッドウェーの時はこんな感じだったんですかねぇ…。」
「そう言う縁起の悪いこと言わない。」
「いや…でも壮観ですね。」
「ああ、そうだな。」
この世界のアメリカは何処まで進んでいるのだろう?
ダメージコントロールの概念を発明した文明に祈る。
我々は、天井と壁の消火設備の配管を見つける事が出来ずに混乱している。
乗った船の船頭が死神だった…。
そんな気分だ。
格納庫内を眺める。
実際見ると色々な事が解った。
デジカメを持ってくれば技官から詳細な数字が出るだろうが。
あからさまな撮影は出来ない、解った事は。
この日本の技術は初期の溶接技術を持っている、電気かガスかは不明だ。
航空機はリベット式と混合で、初期加速の悪いジェットエンジンで、後輪式は無い。
一部のメンテナンスハッチを開けた機体から、全て液冷式レシプロエンジンだ、ターボプロップは無い…。
いや、在った、ターボジェットと星形発動機の混載だ。
雷撃機に見える、しかも両方積んでいる、最悪だ。
夫々の利点が在るので気持ちは解るが何故そうするのかが理解できない。
主翼に推力増幅装置らしきものが在るのがせめてもの幸いだ。
艦尾に向かって格納庫内を進む一行。
航空機に取り付いている油に汚れた白いツナギに白略帽の女性達…。
皆、まるで幽霊に会ったような表情だ。
日本国軍が珍しいのだろう。
いや、見慣れない士官服を着た男達が珍しいらしい。
艦尾の後部短艇甲板に着くと既にボートは海面に収まっていた。
どうやら天井クレーンで下ろした後らしい。
なお、天井の上は飛行甲板なので縁の下だ。
骨がむき出しの生き物の肋骨の様な天井に航空機誘導灯の大きな看板の印象が残る。
見下ろす海原には、小さなボートが浮いている。
これまた女性の水兵達が群がりエンジンを始動させ、始動したばかりのマフラーから黒い煙が上がっている。
暖気運転中なのだろう。
匂いからガソリン機関の様子だが危険なケミカルな香りが漂っている。
「12m内火艇かな?」
「たぶんそうだろ。」
「大丈夫なのかね?」
陸軍の方が心配そうだ…。
「いや…。こういうフネは今も昔も中身はあまり変わってないから…。」
確かに古臭いデザインだ。
中央に漁船の様な操舵室に…。広いフロントデッキに真鍮のバウレール。
主機と燃料タンクは前に在るのだろう、後部甲板はソールまで下がっていて半開放の白い防水天幕が眩しい。
海風にはためく旗は”一航戦”と船尾の日章旗。
「いや…排気ガスが…。」
「触媒が無いとこんな感じですよ?」
今も昔も車&単車好きが多い男所帯。
変な所で詳しい者が多い。
「そうだぞ、まさか当時の航空機燃料と同じ有鉛ガソ…、」
海軍が皆で目を合わせる。
「じゃないよな?」「…。」「…。」
思わず口をつぐみ呼吸を止める。
「どうかしたのか?」
陸軍は不思議そうな顔だ。
陸では禁止されたが、意外と最近まで船では使われていた…。
主に漁船や船外機では。
「準備が出来ました。どうぞ内火艇へ。」
笑顔のポニテ少尉…。
気まずいまま足の下が海原のタラップを降り内火艇に乗り込む。
陸軍は乗り込むのにおっかなびっくりだった。
手を貸す帝国海軍の伍長の赤い顔。
乗り込むと整列敬礼する水兵を擦り抜け、空母艦長を先頭に数名の士官達がやってきた。
紺色の詰襟にきらびやかな略章、そして短刀を下げている。
「ご一緒、させて頂きますわ。」
微笑む艦長に敬礼する一同。
全員の搭乗が終わると水兵が舫を解く。
掛け声で、エンジン音が変わり、船足が速くなり波を切って壁の様な灰色の乾舷から離れていく。
天幕の下の後部甲板は意外に狭く向かい合うベンチシートだ。
大柄の陸軍士官同士ではヒザが当たって狭そうだ。
天幕下では同じ日本同士で二つの軍の士官が当たり障りの無い話をしている。
その外、バウデッキは女の水兵が小銃を持って周囲を警戒している…。
天幕の外で海風を浴びる暇な陸軍士官が水兵に声を掛けている。
未だ幼さを残す女の水兵は強張った表情だ…。
ナンパしているワケでは無い様子だが持っているライフルの性能を訪ねている様子だ。
他国の士官の質問に困惑気味の伍長。
他の軍でも上級の階級者に声を掛けるか躊躇っているのが見て取れる。
遭難しかけている水兵達を助けに向かう笑顔の帝国海軍少尉の若い女性。
そうこうしていると波の間に戦艦の影が大きくなっていく。
「あれが連合艦隊旗艦の戦艦土佐です、右舷より乗艦します。」
誇らしげに帝国海軍少尉が示す。
「おおー戦艦だ…。」
「デカいですね…。」
当たり前の感想だが思わず口にでる。
「背負い式連装砲が4基、艦橋後部にレーダーアンテナ群、対空は集合八木宇田アンテナに水上はホーンアンテナ。」
「多分対空はVHFですね2mかな?ホーンの直径が解らないけど一応UHF以上のレーダーが有るんですね。」
素早く電波屋が思っている事を口に出す。
「主砲砲身が長いので…。55口径16インチか、50口径18インチですね。射撃レーダーは何処だろ?」
笑顔が強張る帝国の少尉、本職オタク共に信仰の対象が丸裸にされていくのは少々、いたたまれない。
遊弋中の艦首を横切りボートはタラップへ向かう。
見上げる艦首に黄金に輝く菊の紋に一同、感銘を受ける。
巨艦に接舷すると、舫が結ばれ、戦艦の歩哨が緊張した面持ちで直立の上、ハイポートをしている。
「どうぞ、お先に。」
一応主賓は我々なので航空母艦艦長が花道を譲る。
一同姿勢を正し、タラップを上がると磨かれた甲板上には大将の桜を襟に付けた年配のご婦人が敬礼していた。
「かーま↑ーえー筒。」
ラッパと共に将官以下兵が敬礼を行う。
甲板に並んだ士官と兵が一斉に動く。
ラッパがおわり号令が掛かる。
「もーど↑ーせー筒。」
「ようこそおいでいただきました日本の方々。わたくし、連合艦隊司令長官の田富士 薫と申します。」
「はっ、お招きいただきありがとうごさいます。我々は日本国防軍派遣武官として観戦に参加させていただきます。団長の少佐で孕石 善祐と申します」
国防海軍少佐が出て堅い握手を行う。
”記録”の腕章を付けた兵がフラッシュを焚く。
飛び散る粉。
感動的な姿だが背景の巨大な第二砲塔が気になって仕方ない。
「では司令部へどうぞ、各艦隊の艦長も揃っております。」
案内を受けてぞろぞろと将官達に続く…。
こんなに上級将校が集合しているのは市ヶ谷か、ペンタゴン位だろう。
緊張しながらハッチを潜り、フネとは思えない広い廊下を進む。
進んだ先には若い士官達が廊下に整列していた。
美しい顔立ちだが何故か同じ様な顔が多い…。歳は違う、姉妹だろうか?
戦闘艦とは思えない豪華で重厚な木の扉が開く。
中は巨大な長机に白いテーブルクロス、天井の防爆カバーが付いた蛍光灯に丸い舷窓の光が差し込む。
白い壁に木製の装飾、赤い絨毯とココだけ場違いな豪華客船だ。
待ち受ける大日本帝國海軍の将校達は長机で席を立って待っていた。
全員笑顔で年齢は違う、だが何故か同じ様な顔の印象を受ける…。
顔の形が似ているのだ。
「ようこそ、連合艦隊へ。」
「お招きいただきありがとうございます。我々は日本国防軍派遣武官として乗艦をお許しいただき大変光栄に思います。又、統合元帥閣下の御厚意に預かり日本国総理大臣及び国防大臣の名を借りてここに感謝の意をお伝えいたします。」
丸まった色々な書類を差し出す団長。
一同敬礼する。
「謹んでお預かりいたします…。あの、元は同じ国の海軍なのでココからは開襟を開いてお話をしましょう。昼食をご用意しています。先ずはお席にどうぞ。オイ、参謀。」
「はっ!掛かれ。」
答えた少佐の階級を付けた参謀は下士官に命令を出した。
気の毒な位緊張した女の水兵達が手を震わせて皿を配膳している。
白磁器、金ライン。
錨のマークが武骨な平皿だ。
「多分、メイトウチャイナですよ…。」
欧州派遣組が囁くが…。
残念ながら、俺達、白磁が百均で買える世代だと、中華が高級だとも思わない残念だ世代だ。
実際、中部方面隊で働くと白磁は陶器祭りで二束三文で買える食器だ。
何せ、自衛隊時代からの宿怨、地方連絡本部の呪いを受けた、地方協力本部が最も輝く仕事だ。
何も知らない学童少年少女達にカッコ良く見える制服と軽装甲車を並べ、オタクアニメポスターで”国民の未来を守ろう!!”等とファンタジー錯覚で人生を釣る仕事だ。
裏では人買いとか、人攫いと言っている。
まあ、嘗ての伝説では牛丼並盛一杯で志願者を集めたと言う悪魔が居た…。
全ては口伝だ…。
目の前に並ぶ皿は、どうしても国防軍兵士の一日の食糧費を天元突破する様な食材でメニューが組まれている…。海老や貝だ。
我々が受け入れた武官は一日850円程度のハズだ…。
しかも予算は、この十数年変わってない。
きっと、カロリー爆弾の様な三食を養豚場の住人の様に喰わされて居るハズだ…。
なむさん。
「あっ、申し訳ごさいません!!」
テーブルのワイングラスに注ぐ従兵がグラスを倒した…。
長テーブルの白いテーブルクロスにワインの染みが広がる。
そのまま、ワインの水溜まりが士官のズボンに滴り、染みが出来る。
「貴っ様ー!何をやっとるか!!」
「も、申し訳ございません!!」
怒りを殺さない下士官に怯える兵。
なんでこんな所は昔のままなのだ?
とっさに助け舟を出す。
「ああ、問題ないです、きっとフネが揺れたのでしょう。盃の酒が零れた位で騒いでいたのでは水兵は務まりません…、まあ、酒が零れるのは残念なことです。呑兵衛にはね。」
おどけて言うと…。
一拍の後に意を汲んで将官が笑う。
「ハハ「「ハハッ」」いやいや、申し訳ない。中尉はお酒がお好きなのですか?」
無論、相手は他の海軍、メンツを考え最適な言葉を返す。
「たしなむ程度です。(棒)」
オロオロする水兵達を尻目にウェットティッシュで拭く。
顔に出さず…。くそっ染みが残る、今晩夜通しトイレの洗面器で洗濯だ。
一転して和やかなテーブルを囲う将官達。
「会戦前ですが勝利を祈って、乾杯」
大日本帝国海軍の長官により音頭が取られる。
「乾杯!」
一同、盃を持ち上げ乾杯する。
「では頂きましょう。」
「「「いただきます。」」」
煌びやかなフランス式の料理皿が並ぶ中。
皿ライスが在るので何故か和風に見えるのが良い。
フォークとナイフで食べることに成るが。
テーブルマナーは防衛大学校の必須なので染み付いている。
ココで一般大学との差がでる。
なお…、ココには居ないがテーブルマナーが壊滅的なのが3学生隊出だ。(注意:悪魔で作者の創作です。)
味は薄味だ。
量は少々足りない様な気がするが…。
昔、学生の頃、大枚叩いて今の嫁と行った高級店ならこの様な感じだった。
何故か国防軍士官の男達は早飯の毛が出てくる。
「ふふふふふ、」
むさい男達が食事を進めるのが何故か楽しいらしい長官。
笑う女性とは、こんなに怖い顔だとは…。
初めてだ。
(´・ω・`)大祓!!(水無月食べるか輪っかを潜るか…。)皆さんそれぞれ地元や実家の風習を思い出しましょう。




