第六種接近遭遇その3
(´・ω・`)…。(新年あけおめことよろ。)
第一護衛艦群のこんごう、きりしま両艦の警告に対して発砲で答えた敵艦艇。
戦端は開かれた。
水上艦同士の戦闘では敵戦艦を沈める事が出来なかった。
続く、F-2戦闘機による空対艦戦闘が始っている。
海戦は始ったばかりだ。
日本国国防軍は敵の侵攻作戦自体を頓挫させるため。
全力を投入してコレにあたって居る。
戦略目標は航空母艦、一撃を持って敵の侵攻の意図を挫く事だ。
同太平洋上
『早期警戒機より攻撃目標を確認。』
「データー受信完了。象限入力確認。」
「一番から六番発射準備完了。」
「了解、これより一号機、発射高度まで上昇!各機続け!」
『『了解!』』
エンジンがマックスパワーまで移動して機体が上昇する。
「高度確認FOX01!!」
重力を足の裏で感じ。
切り離された何かにより身体が軽くなるのを感じる。
「一号機、FOX01、02…。全弾投射を完了。」
そのまま反転に入る機体。
加速度がありえない方向に向いて。
股間の重力ボールセンサーがヒュンとする。
『二号機全弾投射』『三号機全弾投射』・・・『十六号機全弾投射完了。』
デジタル無線の音がイヤフォンに響く。
『了解、二号機、FOX01…。飛行経路に異常無し。』
『三号機、FOX03テレメータに反応なし。』
『UP-1よりテレメータ復調、三号機FOX03自動復帰不可能。自爆モードへ移行せよ。』
『了解!三号機、FOX03自爆確認。くっそ!』
不良品は偶にある。
こんな大事な時に運の無い話だ。
モニターの上の一つが消えて無くなる、他の誘導弾は順調だ。
「その他、異常なし。各機、帰還する。」
『了解、こちらUP-1、形式不明の航空レーダー波をキャッチした。敵直援航空機群に変化なし。』
機体のバンクが終わり反転している。
着弾の確認は必要ない。
我々の放った28式空対艦誘導弾、嘗てのXASM-3Bを長距型に改良された物だ。
残念な事はミサイル本体が大型化してP-1ですら6発しか搭載できない。
P-1編隊はJ-WACSの誘導で、敵のレーダーには写らない低空飛行の後、高度を上げ全弾を投射した。
誘導は早期警戒機等のデータリンクで目視することは無い。
UP-1が全て誘導して居るのでモニターを見るだけだ。
J-WACSとのデータリンクで精密誘導だ。
スクラムジェットにより加速した弾体は射程450Kmマッハ5.2。
発射から目標までの着弾は5分も掛からない。
敵の後方空母群に向かい簡易GPSと転移によりロストした気象衛星ひまわり10号の代りに急遽打ち上げられた、通信多目的衛星ひまわり11号と低軌道通信衛星網により誘導されている。
目標に複数のHE弾225kgのBPX爆薬の暴力を配達した。
これで、この機体の戦闘が終わった。
戦争は始ったばかりだ。
だが、日本本土より飛び立ったP-1哨戒機は52機、武装を搭載していない早期警戒型も含まれる。
攻撃はコレだけではないのだ…。
UP-1からの情報では一部の航空機が我が方に向かっている。
緊急退避だ。
エンジン音が響く機内で副長が叫ぶ。
「機長、急いで帰ればもう一回出撃できますかね?」
「どうだろうな…。」
敵の戦闘機に追われているのにナニを言い出すのか。
「この際、旧式のハープーンでも良いから積んで出たいですね。」
「副長、敵には艦載機が有るんです、俺達なんて七面鳥ですよ?w」
「いや、まあそうだろうけど…。w」
無言の雑音の中で呟く副長。
「空母を沈めていれば艦載機の脅威は無いんだし…。戦艦は簡単に沈まないから。」
「副長、戦艦に一発打ち込みたいんですか?」
「航空雷撃は男の夢ですから。潜水艦追い回してるより良いじゃないですか。」
「副長?哨戒は嫌いなのか?」
「いや、嫌いでは無いです。」
「機長、副長は対潜ロケット訓練の時うきうきしてましたからね。」
「そういえばそうだったな。」
「いや、目に見えない標的に撃つって。イマイチ萌えないじゃないですか。」
「「フフフフ」『ハハハハ』」」
呆れ笑いが機内通信のスピーカーに広がる。
『副長、ハープーン持って来ても当たる所は見えませんよ?』
呆れた戦術担当の声。
「そう言やそうだな。」
「よし、帰還したら進言しよう。折角の実戦だ。残業代の申請しても怒られないだろう」
「この際、サービス残業でも良いです。」
「おれ、後で代休申請します。」
「国防軍の働き方改革って美味しいんですか?」
「「「ハハハハハ」」」
市ヶ谷統合指令所。
「敵主力艦群は未だ健在です。」
「各攻撃隊、再出撃を具申しています。」
『J-WACS501目標、戦艦に着弾を確認。火災が発生しているが未だ健在。』
望遠映像にも遠くに映る敵先鋒艦隊。
戦艦6隻は全て火災を起している。
火の海だ。
F-2雷撃隊の戦果は戦艦以外は撃沈だ。
全てに火災を起した敵艦隊。
駆逐艦は全て一撃撃沈に近い。
「流石にミサイル攻撃だけでは沈まんか…。」
戦力的には全滅だ、だが。戦艦は沈まない。
「第一護衛艦群に前進を命令しますか?」
”こんごう”と”きりしま”は撤退中だが、”いずも”と”まや”、FFMで編成された何故か対艦攻撃能力のある第一掃海隊4隻が控えている。
後方の空母群には未だ航空戦力が残っている。
「いや…。未だ敵の進路は変わっていない。敵の航空機も上がったままだ。」
16機のP-1で空母及びその護衛艦隊を撃破したが空母からの発艦が終わった後だった。(発艦最中に命中した。)
数十機の敵航空機が二つに別れ、P-1雷撃隊の追撃と敵主力艦群の直援に向かっている。
J-WACS501とUP-1には退避を命令した。
次のP-1雷撃隊には一時待機を命令している。
高速性を誇るP-1に敵の艦載機も同程度の速力。
お互い亜音速機の様子だ。
しかも撤退するP-1を探知しているのでレーダーを搭載しているのかもしれない。
追いかけっこに割込む集団が向かっている。
『いずも航空隊F35Bより航空指令、敵艦載機と接触します。』
モニター上の12機のF35BからFOX番号が生まれる。
『いずも航空隊、誘導弾発射…。命中、命中、命中。敵航空機が反転離脱していきます。のこり…数6。いずも航空管制より、航空隊へ追撃を禁止。』
F35Bからの赤外線映像も出ている。
燃え落ちるジェット戦闘機。MIG-15に似ている。
いや、ビア樽の様だサーブ29に近い。
「コレは…。フッケバイン…。ドイツの新型機がなぜ…。」
呆然と見る大日本帝国の航空参謀。
年配のご婦人だが大佐の階級と航空徽章を付けている。
パイロット上りの様子だ。
もう一人の海軍から派遣された観戦武官の表情は硬い。
恐らく海上任務を長く続けていたのであろう日焼けとシワが入っている。
遠く1000Km以上、離れた海の戦争がリアルタイムで解る。
この意味が理解している表情だ。
『こちらJ-WACS501形式不明のレーダー波は消えた。』
「了解、J-WACS501前進せよ。」
「P-1雷撃隊、第二次攻撃はじめ、開始位置まで前進。」
更なる戦果を求めて雷撃機達が群がっていく。
「なんだろ?射撃誘導レーダーかな?」
「いや…。初期の航空機レーダーは前方の狭い範囲しか探知できなかった。ソレかな…。J-WACSのデータ見てみないと…」
通信科の技官達が何かを話している。
今話す事ではない、同時刻に別の海域で戦闘が始まろうとしている。
その海域では恐らく輸送船団を守る小型空母とその護衛任務艦隊だ。
護衛艦が敵商船団を守る敵空母護衛群に対する攻撃だ。
皮肉にも聞こえるが敵商船団の搭載している荷物は進攻軍だ。
一応、国際法上では防衛行動になる。
『こちら、第二護衛艦群。みょうこう、対空戦闘に移行。敵射程圏内まで12分。』
敵に接近する護衛艦群。
みょうこう、あさひ、あしがら、てるつきの四隻だ。
残念だが、レーダーを積んだ艦載機に発見されている。
こちらのミサイル射程圏内に入る前に敵空母、雷撃機が出撃済みだった。
『こちら、てるつき。レーダーに感あり。敵空母群、航空機を発艦中。』
「第二次攻撃隊を編成しているのか?」
対空番長のてるつきのレーダーが素早く高度を上げる敵艦載機を拾った様子だ。
「ですね…。何機搭載できるんだ?」
2日前の夜のUP-1の望遠映像が出る。
赤外線で色は無い。
「大きさからサンガモン級か、カサブランカ級の一万t程度の空母だと思います。30~45機ですね…。唯、塔裁量無視して飛行甲板に並べる事が有ったそうなので。二隻で最大100機程度の航空機だと思います。」
モニターに検索されて出た、よく似た形状の空母が並ぶ。
「おそらく…。合唱国海兵隊の空母スワニーよ。」
初めて声を出す海軍大佐。
「おお、スワニー河。良いね。」
統合指令所内に笑い声が響く。
苦笑に近い、戦闘が始るまでの緊張が解れる。
何が良いのか解らない顔の彼女達。
鼻歌を歌う者がいた。
「放送禁止曲よ。」
海軍大佐の機嫌が悪くなる。
「こりゃ申し訳ない。」
未だこの日本では禁止曲ではないので問題ない、文句言うのは著作権協会ぐらいだろう。
「そう言えば、この世界では作者のフォスターは北アメリカ出身になるんだな…。」
「そうですよ…。本人はスワニー河には行ったコトが無いそうです。」
「そりゃ凄い。」
180年前は紙による情報で見ていなくても歌詞は書けたのだ。
2030年は、その場に居なくても戦闘を行って居る。
「せいりゅうUSM、ハープーン発射。」
情況が動いたので空気が変わる。
魚雷発射管から4発のカプセルを放出して新たな番号が生まれる。
飛翔を始める4つのミサイルマーク。
「潜水艦隊は、未だ攻撃しないはずだが…。」
せいりゅうの艦長は大胆だ、敵の哨戒網をかわしてハープーンを撃ったのだ。
敵は哨戒済みの何も無い場所からの攻撃を受けたコトに成る。
潜水艦が潜行中に対艦ミサイル撃ってくるとは思わないだろう。
無論、位置を露見したコトに成るが。
周囲に敵航空機の監視が無いので、発射元を特定する事は不可能だ。
「ですね…。撤退しなかった場合にタンカーを攻撃する手はずだった…。」
痺れを切らしたのだ。
相手のエアカバーが外れた瞬間を狙っての一撃だ。
彼らは空母を喰う為に散々訓練してきたのだ。
USM自体を嫌う潜水艦艦長は多い。
リチュウム電池改装して倍以上の容量になった”せいりゅう”には日没まで逃げきる自信が有る様子だ。
「航空機の脅威は無くなっている。エアカバーの無い状態では…。」
『USM飛翔中…。目標に着弾、戦果不明。』
撃ちっぱなしのハープーンは命中しても戦果は解らない。
だが、飛行甲板上に艦載機が並んだ状態で一発でも当たればどうなるかは想像できる。
『みょうこう、敵航空機18、接近警報、対空戦闘開始。』
もう既に第二護衛艦群内部で目標の割り当ては終了している様子だ。
モニター上の敵の航跡が消える。
『全機撃墜を確認。航空ドローンの発進。』
全速力で進む第二護衛艦群。
「もうじき、SSMの発射距離です。」
実際、17式艦対艦誘導弾の射程距離には入っている。
だが、確実を帰す為にUP-1の前進を待っている。
征空が完了したのでUP-1哨戒機が前進する。
電子の視界が広がり目標が立つ。
後は自動だ。
『SSM発射開始、全弾飛翔中。』
32発のFOXマークがモニターの上を飛ぶ。
無言の時間が過ぎて、着弾マークに変わる。
「UP-1哨戒機より敵空母-1の傾斜を確認。飛行甲板に多数の人。空母-2は火災発生中、これは鎮火不可能ですね。」
長距離望遠の映像が出る。
敵軽空母02は飛行甲板全てが火の海だ。
商船団は回避行動し始めている。
駆逐艦や、巡洋艦らしき戦闘艦も炎を上げている。
「総員最上甲板か…。」
「駆逐艦が接近しています。救助の為でしょうか?」
「だな、もう直ぐ日没だ。敵は反転するだろうか?」
「私はしないと思います。」
我々の問いに真面目に答える帝国海軍大佐が続ける。
「明日には解ると思います。」
モニター上の通信傍受テキストでは敵は未だ混乱を脱出していない。
「そうですね…。明日になれば…。」
敵も被害の全容が解るだろう。
しかし、彼女達は何らかの確信が在るようだった。
(´・ω・`)…。(来年は本気出す。)




