第五種接近遭遇その2
基地で集結の終わった我が海兵隊の淑女達は、基地の中の引込み線で貨物列車に積載された。
我々は歌を歌いながら貨車に揺られ、荒野を進んだ。
部隊は港で降ろされ、集まった多くの部隊と共に装備の補充を受け取った。
順次、集合の終わった部隊から、港に並ぶ民間の貨客船に乗った。
大混雑だ、陸軍の連中も居る。
他の港から船に乗っている部隊も在るそうだ。
乗り込んだ船は中規模の貨物船で普段の荷物は麦だったそうだ。
船底から覗く天井は天幕だった。
仮設で木で組まれた中二階にハンモック。
我々はアメリカ船員協会に取って高級な輸送品に変わったのだ。
狭い船倉に押し込まれた我々には奴隷船に乗るのと変わりは無い。
残念ながら、違いは乗り込むのは白人の荒くれ女達で、荒海を越えた先には戦場が待っている。
なぜなら、我々、南部同盟海兵隊は議会の軍隊だ。
徴兵制で無く志願制の正当な歴史ある軍隊である。
ドイツ帝国主導で作られた陸軍と捕鯨船団上がりとは訳が違う。
装備と錬度ではイギリス海軍によって作られた北アメリカ海軍と良い勝負だ。
尤も、北アメリカの連中は海兵隊を解体して海軍の下部組織にしてしまった。
恐らく東部の連中が海兵のフランス語訛りが気に入らなかったのだろう。
その為、南部同盟海兵隊は、神に認められた新大陸発祥の最後の軍隊なのだ。
我々、精鋭の乗る輸送船の甲板もキャビンも、所狭しと兵器が積んである。
同盟国や友好国製品も有る。
全て我々の兵器だ。
だが、最高の兵器は我々だ。
船が岸壁を離れた夜に、上級士官から我々が何処へ向かっているのかを知らされた。
「さて、淑女諸君。皆は解っていると思うが我々は戦場に向かっている。幸い。寒い場所ではない。この太平洋の真ん中に未知の島が出現した!コレを占領するのが我々に与えられた使命だ。」
ざわつく船倉内の兵達。
寒くないと言うのは良い情報だ。
「この島は幾つかの諸島で構成されており、其れなりの兵力が有る事が予想されている。」
「少佐殿、人が居るのですか?」
不思議ちゃんの一等兵が尋ねる、避妊メガネを装備した彼女は志願したのに覇気が無い。
未だ鶏がらのチキンで永遠の処女だ。
「そうだ、だが人かどうかは不明だ。他の場所から来た島だそうだ。」
ざわめきが大きくなる。
更に声を張り上げる上級士官。
「我々は!この地球への侵略者を駆逐して囚われた白人人種の救出を目的とする。なお、同時に友好国国民も救出対象だ。我々が淑女だと知らしめる良い機会だ、プロムドレスコードを忘れるな!!」
「「「サー・イエス・マム!!」」」
溢れた荷物の中で答える淑女達。
上級士官の騒がしい奏上が始まる。
何時もの芝居だ。
「その課程でインベーダー共の物資、資源、生産設備を奪取する。その為、占領地は議会の資産になる。早い者勝ちだ皇帝の好きにさせるな!!」
「「「サー・イエス・マム!!」」w」
笑いが混じる。
唯の皮肉だ。
議会の連中の玩具になるのは良いらしい。
要はケーキの取り分の話なのだ。
解っているので上級士官の口にも苦笑が滲む。
最初の一口には我々に権利があるのだ。
「インベーダー共は劣等人種日本人に外見が良く似ている。しかも男達だ!!」
息を呑む兵達に”とんま”の新兵が軽く答える。
「撃っても良いのですか?」
「ああ、同盟国人以外はな。外見は黄色人種だそうだ!。しかし、外見では判断が付かない。人の皮を被った昆虫人間だと思え!」
「「「サー・イエス・マム!!」」」
答えるマリンコープス達。
後で聞いた話では、作戦名は”意志の勝利”だそうだ。
港から出航した先、海原には大艦隊が待っていた。
空母を伴う、アメリカ帝国海軍任務艦隊。
ドイツ帝国の火薬式カタパルトからジェット機が飛んでゆく。
恐らく訓練中なのだろう。
見覚えの無いビア樽型の戦闘機だ。
ペンキも真新しい新型だ。
艦隊の上で編隊を組んでいる。
空を守る為だ、イエロー共は自分が死ぬのを怖がらない。
戦闘機でも構わず突っ込んでくる。
無論、航空機で戦艦が沈む事は無い。
前は不覚を取ったが、今の主力艦は帝国州級の戦艦で大部分は先の黄色人種と戦った後で購入したものだ。
その後ろ、海原を進む箱の様な我らの小さな航空母艦からお菓子の様な二発雷撃偵察機が飛び出して行く。
少し塗装の擦れたネイビーブルーに垂直尾翼の青地に7白星が良く解る。
南部同盟海兵隊の空母だ。
甲板で海を眺める海兵達が帽子を振っている。
低速から中速まで、短い距離で何処でも離発着でき、偵察、対潜、対地攻撃を何でもこなすF5Uは文字通り、大繁盛だ。
進む300隻を超える大小様々な船。
その大半は商船だ。
商船の荷物は我々と陸兵と兵器だ。
我々の船は大丈夫だが陸軍兵の船はゲロの海だろう。
この海原を越えた先に戦場があるのだ。
その船にのる神の兵士達は異教徒を煉獄へといざない、キリストの信徒を異教徒達の地獄から救う。
敵は異星人だと聞かされた。
進む船を守るのは、海兵隊の小型空母2隻、軽巡4とデストロイヤー8隻。
先行している海軍艦隊は大型空母4隻と6隻の戦艦、重巡洋艦10、軽巡8とデストロイヤーは沢山だそうだ。
同じ船に乗っている海軍の従軍牧師の護衛一等水兵の話なので信じるかどうかは神のみぞ知る世界だ。
奴らの大法螺を信じれば。
海軍の空母の艦載機はドイツ製の新型を使っているそうだ。
”気前の良いドイツ人は戦艦4隻を売ってくれる。正し未だプレゼントは揃っていない。その為、メキシコ湾で日焼けした戦艦群が太平洋に向かっている。君達がBEMを退治している後半はドイツ製の戦艦が支援砲撃で大忙しだろう。”
不安は有る”大西洋に我が方の戦艦が無くなるのでは?”だ。
朋友ドイツは機嫌の良い時は太っ腹だ。
しかし、大概はシブチン、金にがめつい。
どちらにしても南アメリカ任務艦隊としての全軍が揃う事になる。
錬度も問題ない。
今、在る太平洋艦隊の6隻の戦艦の内の二隻はポンコツで無く、ドイツ製だ。
更にドイツ製の戦艦が加わるのだ。
その他の補助艦艇群。
戦時動員で米帝国の太平洋に有る民間船の全てと言っても良い。
憎むべき進化論者は朋友、ナチスドイツが牽制してくれている。
我々は神の正義戦いを無神論者に挑めば良い…。
神に選ばれた白人人種が有色人種に負けるハズが無いのだ。
(´・ω・`)…。参考資料C0MMANDマガジソ日本語版 1995年2月号




