椿の役職
部屋の中は全体的に青っぽく神秘的な空間が広がっていた。天井はとても高く地面には大きな魔法陣のようなものがある。
「さあ椿くん、心の準備はできているかい?」
キリアムは魔法陣の中心とはすこしずれたところにいた。キリアムの方はもう準備ができているらしい。しかし、椿はここにきて少しびびっている。自分の役職が最悪のものだった場合のことを。
「椿なら大丈夫だ。」
びびっていることがアリアにも伝わってしまったのか、アリアが励ましてくれた。たった一言なのに椿はすごく暖かいものに包まれたような気がした。そのくらい安心した。
「ありがとうアリア。」
そうアリアに礼を言った。そして椿は魔法陣の真ん中に立った。
「それじゃあ、おっさん。お願いします。」
「お、おっさんじゃと!まあいい、始めるぞ。」
そう言ってキリアムが杖を持ち、詠唱をはじめる。
「この若き青年に天からの贈り物をっ!」
すると魔法陣がオレンジ色に光り始め、魔法陣の中心から出たオレンジ色の光が椿と高い天井を綺麗に照らした。眩しくてキリアム、アリア、椿の全員が思わず目を閉じた。その数秒後、光が収まり全員が目を開ける。すると、椿はマントを羽織り、髪は淡い赤色に染まり、両手には銃を一つずつ持っていた。
「うわぁぁ」
自分で言うのもなんだが、かっこよすぎる。
「銃使いじゃな」
「「銃使い?」」
椿とアリアが同時に尋ねる。アリアも知らない役職だったらしい。
「銃使いというのは、言葉のとうり銃を使う者のことじゃ。もちろん接近戦をするのは厳しくなるじゃろうが、遠距離からの攻撃やサポートができるなかなか万能な役職じゃ。」
椿は両手に持っていた銃一回転を腰に取り付け、天井に向かって叫ぶ。
「戦い向きの役職でよかったぁー!!」
ーー☆ーー
銃使いについて説明してもらったものの、椿はまだしっかりと理解できていない。実感もそんなに湧かない。それを察したのか、キリアムが言う。
「一度クエストで試してきたらどうじゃ?」
「い、いいんですか!まだ素人なのに!」
興奮した椿は慌てて聞き返す。
「クエストに行かなければずっと素人のままになるじゃろう。パーティーは基本三人じゃが、とりあえずはアリアと二人でよいか?」
「私ですか!?」
アリアは動揺しているようだ。
「アリアもまだパーティーのメンバーが決まっていないしちょうどいい。」
「しかし、二人だけではさすがにきついのでは?」
「それなら、この『ゴブリンの溜まり場の破壊 ☆1』のクエストにしよう。難易度も☆1じゃから余裕じゃろう。」
「そうですね。これなら大丈夫そうだ。椿、さっそくクエストを引き受けに行こう。」
「いや、でもまだ心の準備が、、、」
ーー☆ーー
「はぁ、明日か」
椿は風呂にの中でつぶやく。
さきほどクエストを引き受けに行ったのだが、色々あるらしくてクエストは明日にしてくれと言われたのだ。だから、今は近くの宿に泊まっている。
明日が椿にとって初めてのクエストなのでとても緊張しているが、一度冷静になり、少し考える。いきなり異世界に飛ばされたのはびっくりしたけど、アリアに出会えて本当に良かったと思う。銃使いという役職を手に入れられたのも元をたどるとアリアのおかげだ。だからこそ明日はアリアに迷惑はかけられない。そして椿は決心した。絶対にアリアを危険なめに合わせないと。
そんな事を考えているせいか、長い間風呂に入ってしまい少しのぼせてしまった。なので、ベランダに出て体を涼める。そうして星を眺めてながら思う。
「明日は、何事もなければいいんだか、、、」