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公爵令嬢の寄り道  作者: 月圭
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王都の路地裏にて~国王の威厳~

国王様再び。

そして路地裏再びです。

 メイソード王国、王都。

 真夜中の路地裏を、俺は独りふらふらと歩いている。

 

 あ、いやいや徘徊じゃないから。酔っぱらってるんでもないから。

 これはあれ、散歩。散歩だから。


 昔から、公務の合間だったり夜中だったりにこっそり城を脱けだすのは、俺の特技で趣味なんだよなー。ストレス発散を兼ねて視察もできる、有意義な息の抜き方だろう?


 ……え? 宰相がキレてるじゃねえかって?

 大丈夫大丈夫、別に俺そんなもん怖くねえから。


 俺が怖えのは奥さん(アリス)がキレたときだから。


 宰相はうるせえけどアリスにはかなわねえから。宰相補佐もぶちぶち言ってきたりするけど無視するしな!


 いや、あの宰相補佐はちょっとあれだけどなー。能力はあるんだけどな。息子たちの教育係に収まったぐらい、能力だけは高いんだけどなあ……。ま、結局のところ個人感情で人事は左右できねーんだよ。いや、やろうと思えば出来なくはないけどな、やった瞬間、むしろやる前にアリスに叩き潰される(物理)。

 側近もな、俺に近けりゃ近いほどアリスの味方っつう不思議。

 

 何なの? 俺一応国主なんだけど。威厳? 威厳がないの?

 ……自業自得? アー、ナンノコトダカワカラナイナア。


 いや、それはおいとこう。


 今はあれだ。真夜中のお忍び王都視察だ。

 うちの奥さんは最凶だけど懐でけえから、このぐらいは理解示してくれるんだよな。


 まあ、だからこそこうして時々羽伸ばしてんだけどな。

 ……いや、別に目的それだけってわけじゃねえぞ?


 さっきから言ってんだろ、『視察』だって。 


 最近だとほら、この辺でごろつき増えてんだよなあ。ちょっと前にニート集団がようやく就職先見つけたって話は聞いたが、その残念集団の影に隠れてやんちゃしてた阿呆がはしゃぎ出してるみたいなんだよなー。


 若干性質悪いかんじにな。


 警邏は動かしてるが蜥蜴の尻尾切りだ。

 ここらで一網打尽にしたいよなあ。


 と、まあ、それを探しての王都『視察』だ。一応仕事と言えなくもないだろ。


 ――ん? そんなもん王の仕事じゃねえだろって?

 無茶はしねえから大丈夫だよ。怪我ひとつでも拙いっていう自覚くらいあるんだからさ、これでも。


 一人な時点でアウト? いやいや、大丈夫大丈夫。


 ……根拠? いや、ぶっちゃけな、俺の脱走城では公然の秘密なんだわ。

 注視してるわけじゃねえだろうけど、一声あげりゃ護衛も警邏も影もすっ飛んでくるんだろうよ。


 ほら俺愛されてるから。


 腐っても王だからな。これでも。……これでも。

 まあ、昔っからこうして抜け出したりはしてたけどなあ。これでも最近は自重してるんだが。一応いい年した大人だしな。

 

 それでもこうしてごろつき探してんのはたまにゃあ息抜き兼ねて『遊び』たいからかもな。


 ……いや、やらないよ? 本当に暴れたりはしないよ? 王族として俺って割りと能力高いからぶっちゃけ自衛どころか楽しく『料理』できると思うけどさすがにやらないよ?


 良識ある国王だから。


 ていうかそんなことしたら奥さん大変なことになるから。ていうか俺が大変なことになるから。

 やらないです。マジで。命大事に。マジで。


 だから見つけてもな、特に自分では手を出すつもりはなく、そっと後から一網打尽にする……。

 そんな風に思ってたんだよ、俺は。


 俺はな?


 ……いや、件のごろつきな。

 見つけた。このタイミングで、今、この瞬間に。

 集団で。運がいいのか悪いのかわかんねえな俺。


 いつもだったら『スルー』一択。ちょっと今夜のおいたができないように警邏に連絡するくらいだ。


 けど。


 これ連絡要らなくね。


 え? なにこれ。


 馬鹿どもがすでに一網打尽なんだけど。

 

 は?


 一人の女の子に。

 

 え?




 ていうかあれじゃね。あれランスリー家の子鹿令嬢じゃね。




 何してんの?

 何で笑顔なの?


 何で笑顔で地獄絵図作り上げてんのーーーー!?


 とっさに隠れたけど! 結構距離もあるけど!

 ここまで悲鳴が聞こえてくるんですけど⁉

 嗚咽が混じってるんですけど!?


「てめ、な、何しやが、……うぎゃあああああ」


 ドゴバキドシュッ。


「うう、ヒック、くそがきぎゃああああああ」


 ガキョメキグショッ。


「うえ、えぐえぐ、あの、ちょ、ひいいいいいいい」


 ドカベキャプチッ。


「しくしくしく、ごめんなしゃい、マジごめんなしゃい、ホントごめんなしゃい」


 メキョメキョメキョ……。


「うえええええん、すいましぇん、もうしましぇん、許してえええええええ」


 ブチッ………。


「………………」


 …………。

 えっ?

 静かになったんだけど。え?

 消された? あいつら抹殺された? え?

 めっちゃ泣いてたよ? 命乞いしてたよ? 消しちゃったの? マジで?


 いやいやいや、まてまてそっと覗いてみよう。よく見ろ、ほら、あ、ちゃんと生きてるわ。

 ……ん?


 なんか様子がおかし……

 

「私の言うことは?」


「「「「「絶対でございますお嬢様!!!!」」」」」


 なんか調教終了してるーーーー!?


 めっちゃ綺麗な笑顔で微笑む美少女に大の男が集団で傅いてるんですけど⁉


 さっきまで泣き叫んでたよ? やんちゃしてます感満載だったよ? 何? 見てなかった間に何が起こったの? なんであいつらみんな坊主になってんの? すっきりした顔してんの? 服ばっちりキメてんの?


 ちょ、ランスリー家令嬢笑顔! めっちゃ笑顔!


「あなたたちは罪を犯したでしょう……? 悪いことする子はちゃあんとお仕置きを受けなきゃいけない……わかってるね?」


「はい! 了解しておりますお嬢様! 必ずや罪を償い潔白の身であなた様の前にはせ参じます!」


「いい子ね。なら今すぐ行ってらっしゃい?」


「ははっ」


 え、ええ―――⁉

 なんかキラキラしながら自首しに行ったんだけどあいつら!

 マジで何があったの? なんなの?


 ――え。


 ちょ、ま、こっちみてる……?


 あの子こっち見てる! 何? 俺なんかした!?


 あまりにイメージが違う令嬢にあとじさる。

 と。


 令嬢は……

 俺に向かってどや顔とともにサムズアップを決めて姿を消した。







国王の威厳とはなんだったのか。


安定の女帝シャロン。

調教されたごろつきさんたち。

きっと模範囚になるでしょう。


この数日後、シャロンと国王は腹割って話して悪友になります。

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