1.最後の告白
こんにちは!!
くじらです!!このページを開いてくださってありがとうございます。
今回は短編集に挑戦したいと思います!!
文章が未熟だったり、
作品が少なかったり、
見苦しい点は多々あると思いますが、誤字脱字の指摘や感想など遠慮なくお寄せください!!
私はこんなことをするために彼を好きに
なったんじゃない…。
割れたグラスの破片を
ひとつひとつ拾い集め
ながら、あゆみは
ため息をついた。
彼は帰って来る
だろうか?
先ほど部屋を出て行った雅人を心配する。
月は陰り、外にも
部屋にも雨の匂いが
漂い始めていた。
「雅人……」
思いがすれ違い
始めたのはいつから?
二人の波長が狂い
始めたのはいつから?
お互い、些細なことで
イライラして、
些細なことで相手に突っかかって、口論を重ねる度に心にモヤモヤが
くすぶって…
口に出さずとも
お互いわかってる。
「限界なんだ」って。
こういうところだけは
気持ちが通い合うんだ。と、あゆみはくだらないことを考える。
その気持ちさえ、今日も二人でタイミングを
逸して伝えられずに
いた。
「何がしたいの……?」
雅人も、私も。
どちらのせいなんてない。二人で導いてしまった結果としての今日だ。
彼は帰って来る
だろうか?
最後の別れさえ
告げられず、
怒りにまかせて
さようなら?
そう考えるとあゆみは
苦しくなった。
「これで…
おしまい…なの…?」
涙が落ちるより先に、
雨音がしとしと
響き出す。
雅人…傘なんて
持ってないよね…。
風邪ひかないかな…。
今どこにいるんだろ…。
さっきは「勝手にして」なんて言って突き放したのに、今さら心配なんかしちゃって。
あゆみは自分がひどく
わがままな人間に思えた。
どんなことになったって文句は言えない。
あゆみは何度めかの
深いため息をついた。
その時、携帯電話から
軽快なメロディーが鳴る。
「雅人…!!」
そのメロディーは
メールの受信音だ。
“河川敷。”
雅人からのメールは
その一言だけ。しかし、あゆみはそれが何を
意味するのかすぐに
わかった。
彼女は弾かれたように
部屋を出て、ザァザァと雨の降る夜の道を夢中で駆け出した。
向かうのは近くの堤防を越えた河川敷の広場。
雅人もあゆみもその場所が好きで、二人でよく
散歩していた。
出逢いも告白も、
苦も楽も、二人はこの場所で分かち合ってきた。
「雅人…っ!!」
髪も、服も、靴も
雨水に濡れて
グシャグシャになる。
それでもあゆみは
走り続けた。
走って走って、あゆみがたどり着いたとき、広場の街灯の下に雨に濡れた雅人の姿を見つける。
「あゆみ…!」
あゆみはぶつかるように雅人に抱きついた。
「馬鹿!!バカ雅人!!
…さよならくらい
言わせてよ…。」
あゆみは小さな肩を
震わせて泣いた。
雅人はぎこちなく
あゆみを抱き締める。
しかしあゆみには
わかっていた。
雅人も
泣いているのだと。
「雅人…、一回しか
言わないから
よく聞いてよ…?」
出逢った場所が
ここならば、
別れる場所も
ここがいい。
二人はまっすぐに
見つめ合う。
涙はまだ止まらないけど
最後の思いを
伝えるために、
あゆみは息を
吸い込んだ。
雨はもう、止んでいる。
---了