第四十四話 行方
体を転がして、ベットからの誘惑を強制的に断ち切る。
強制的に起こされたからか、いらいらが溜まっている。
「む~ん……」
眠気を覚ますために目をこする。
まだ、視界が安定しない。
手探りで机を探し当て、魔法袋を取ろうとする。
「あれ?」
机の上で手を彷徨わせるけど、物の感触が一切感じられない。
う~ん……場所を間違えたかな……
とりあえず、視界を安定させるために洗面台へむかう。
「プハァ!」
顔に水を当てて、眠気を吹き飛ばす。
そのあと、目にも何回か水を当てて視界を安定させる。
心なしか、普段の悪夢の後よりいらいらが少ない気がする。
なんだかんだで少々長めに寝る事ができたのが大きいのだろうか。
まぁ、悪夢が最悪なのには変わりないが。
「むぅ~ん。」
目をこすりながら再び寝室へ移動する。
そのまま、机の周辺などに魔法袋がないか確認する。
だが……
「……あれ?」
どこにも……見当たらない。
机を持ち上げて、下を見たり、物の後ろに回り込んだりするものの、やはり見つけられない。
「う~ん?」
考えると、他にも無い物がある気がする。
……って
「刀がない!?」
どこを探してもあの刀が見つからない。
あのせっかく作ってもらった愛刀が……ない!?
「シュナ!僕の刀を知らないか?」
少し見つからないいらいらが募りながらも、シュナに問いかける。
だが返事は……ない。
「シュナ?シュナ?」
まだ寝ているのだろうか。
だが、ベットを確認するもいるような気配がない。
念のために、布団を引っぺがして確認するものの、シュナもやはり見当たらない。
こんな大事な時に何をしているんだ……
「ってシュナも魔法袋も刀もどこだ?」
とりあえず、部屋の中のあちらこちらを練り歩いて探す。
浴室の中とかベットの下まで隅々だ。
だが……みつからない。
「本当にどこだ……」
あれを無くしたら本当に大変だ。
シュナがいないのも一大事だし……
混乱してきた頭を一旦落ちつけるために、ベットに飛び込む。
頭をゆっくりと動かしていき、今の状況を解析する。
最初に考えられるのは、シュナが買い物にいっているという可能性。
だが、それはないだろう。
刀を持っていく必要性がない。
次に思いつくのが、シュナが花摘みに行っている可能性。
だが、これはこんなに時間がかかるはずはないだろうから、速攻で除外する。
他には……朝ぶろとかはさっき確認したのでないし……食事に行ったのだろうか。
それならまだありうる。
刀を持って行ったのは、冒険者から襲われた時の為に持って行っただけで魔法袋は勘定の為に持って行ったというところだ。
だが……一つだけ考えられない点がある。
僕になにも言わずに行く事なんてシュナはしないと思う。
起こして伝えてから行くか、それとも何か書き置きをしておくだろう。
見渡したところ書き置きらしきものは見当たらない。
――まさか……
頭にうつってしまった最悪の可能性を強制的に振り落とす。
絶対にそんな事があるはずはない。
シュナに限って……シュナに限って……
頭を自分で殴りつけて強制的に思考をリセットする。
これ以上進んだら……危ない。
最悪の可能性なんて考えないほうがいい。
あと一つ考えられるのは……誘拐。
誰かがシュナを強制的にどこかに連れ去ったという可能性だ。
これなら、武器や魔法袋まで無くなったのも説明ができる。
だが、これもほとんどないだろう。
あんなに魔法に長けているシュナが簡単に捕まるはずはない。
もっとも決定的なのは、僕になんの怪我もない事だ。
さすがに、一番追ってきそうな人を生かして置くはずがない。
寝ていたんだから簡単に暗殺でもしてきただろう。
だが、それがなかったという事はこの仮説は違うということだろう。
「……何が起きているんだ……」
混乱する頭を意識して収め、別の事を考える。
今、何をするべきか。
シュナを探すか……
だが、シュナを探す手掛かりなどない。
下の階で聞き込みをするか……
「って、そういえば。」
ダンジョンで一つ気が付いた事があったはずだ。
魔法袋の一つの効果についてだ。
魔法袋は簡単にワープさせて取り戻すことができる事を思い出す。
その時に、たしか誰がそれに触っているかが頭の中に浮かんだはずだ。
頭の中に魔法袋の事をイメージする。
少し質素で飾り付けの無い袋……
「――!?」
その瞬間、頭に衝撃的な物が浮かび上がる。
「シュ、シュナ!?」
次回、失望
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