第四十三話 悪夢
「いやっふぅぅぅぅ!」
つい体が反応してベットに飛び込んでしまう。
この広さ……このふかふかさ……最高だ……
体が飲まれていきそうになる。
「わらわもきょうは少々疲れたのじゃ。」
同じようにシュナがベットに飛び込んでくる。
このふかふかが病みつきになりそうだ。
「とりあえず、先にお風呂入ってきなよ。」
「そうじゃな、じゃぁ先に行かせてもらうのじゃ。」
シュナに寝巻を渡す。
そのままシュナは浴室に入って行った。
「それまでは……どうしようかな……」
とりあえず、扉の鍵を閉めるためにベットから出ようとする。
でも……この誘惑から出るのは大変だ……
なら……体を転がしてベットから転げ落ちる。
これなら簡単に逃れられる。
そのまま扉に近づき、鍵を閉めようとする。
「……あれ?」
鍵をまわして閉めたものの、心なしか手ごたえが軽かった。
念のために扉の取ってを握って開けようとして見る。
普通だったら扉は動きもしないだろう。
だが……手ごたえは硬いものの、少し力を入れたら音も無くそのまま開いてしまった。
「……防犯意識が足りないな、この宿。」
寝るときも一応防具だけは付けておこうと決意する。
グサリとやられると大変だ。
とりあえずベットに今一度飛び込み、部屋の全貌を確認する。
ベット以外には、大き目の机にクローゼットに窓。
窓からは、まだまだ活気のあふれる街並みが見下ろせる。
夜景がきれいだな。
とりあえず、シュナが出てくるまでベットの上でごろごろし続ける。
やばい……寝てしまいそうだ……
寝てしまわないように、意識を総動員させる。
一度寝たものの、ダンジョンでの疲れはまだ完全に消えてはいないようだ。
奴隷闘技場でも、怪我はしなかったが疲れはしたようだ。
ここまでの旅道は魔法がなくても物理で頑張ってこれたけど……やっぱり魔法がないと対人戦闘とかになったらキツイかな……
物理攻撃を全く通さない強力な壁魔法とか使われたら一巻の終わりだしな……
とにかく、今は自分自身を強くしていくしかないだろう。
「終わったぞい。」
シュナが浴室から出てくる。
熱がこもって上気した頬や、すこし肩からずり落ちた寝巻が艶めかしい。
頬や、隠れていながらも少しだけ見えている足にわずかな水滴がきらめいてるのも……
シュナってこんなに色気を出す事ができたっけ……
煩悩退散!煩悩退散!煩悩退散!
「渋い顔してどうしたのじゃ?」
「いや、なんでもない。じゃぁ風呂に行ってくる。」
浴室に入り、服を脱いで置く。
寝巻は今日は使わずに、防具をつけておくとしよう。
だって鍵がかからないのは怖いし……
かかっているカーテンを開けると、既にお湯が溜まっている浴槽が目に入る。
シュナが魔法を使って水を出せない僕の為に気を利かせてくれたのだろうか。
本当にありがたい。
魔法が使えない分の埋め合わせはなにかでしないとな……
体を浴槽に着けると、一気に脱力感が出てくる。
極楽極楽……
この後、数分間浸かって湯から意識を総動員して出た。
あのまま、寝てしまいそうだった……
体についている水分を布でふき、下着や防具などを身につけていく。
刀は……魔法袋に入れたままだ。
「意外と長かったぞい。」
「ついつい、出れなくなったからな。」
再びベットに思いっきり飛びこむ。
体が眠気に包まれていく……
「っとその前に。」
魔法袋から刀を取り出して、近くの机に置いておく。
念の為の用意だ。
お金とかは……まぁ魔法袋に入れておけば大丈夫だろう。
「シュナはどっちで寝る?」
「じゃぁ……窓際じゃないほうがいいのじゃ!」
転がって窓際に移動する。
う~ん、夜景がきれいだ。
あちらこちらの質素な魔法灯がいい味を出しているように感じる。
「じゃぁお休み。」
「お休みなのじゃ。」
集中を切り、ベットの中にもぐりこむ。
その瞬間、一気に睡魔が襲いかかり意識は闇の中に飛び込んでいった。
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いつも通りの悪夢。
体が闇にのまれ、何かが抜ける感覚。
だが、今回は何かが違った。
本当に些細で気が付かないような違和感が……苦しみの中で生まれていた。
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「う、うわぁぁぁ!」
悪夢を見て、いつものように強制的に目覚める。
窓の外を軽く眺めると、ほんの少しだけ空の色が薄くなっている。
今日は起きるのが遅かったようだ。
―――この事が、後への災いになるとは知らずに……
「あれ?」
次回、絶望
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