第四十話 博打
「立ちなさい!立ちなさいよ!お前をいくらかけて作り上げたと思ってるの!」
奴隷の所持者が怒鳴り声を張り上げる。
「そうだそうだ!立て!お前に大金を懸けたんだぞ!」
「金返せぇ!!!」
「立てぇ!」
あちらこちらから罵声が飛び交う。
いつもならこの罵声にいらいらしていただろうが、なんだかすっきりした気持ちになっているので特に気にはならない。
でも……耳障りだ。
「黙れ!」
再び喉から無意識で怒鳴り声が飛び出る。
その言葉で一気に会場が静まり返る。
「お前は……負けたんだ。薬を使って自我を奪って強化しても……結果的には雑魚だ。」
心の奥底で思っていた事がどんどん出てくる。
もう、止まらない。
「せめて……自分自身の力で強くなるようにさせてやれよ……」
奴隷がダメとか言う資格が僕にはないのは事実だ。
これまでの生活も奴隷がいたから成り立っていたところもある。
でも……人間性を破壊するのは……ダメだろう……
「本当に……ヘドが出る……」
最後の一言を吐き捨てて、退場する。
控室で、きていた皮の防具を脱ぎ謎の黒衣を身につける。
今更ながら思ったけど、この布分厚いのになんで暑くないんだろう。
熱が籠ったりもしないからだろうか。
その上から、旅人の服を羽織る。
顔がばれているから、今日買った服だと顔が隠せなくて面倒だからだ。
「失礼します。」
黒服が出口の扉を開けて入ってくる。
手には何か箱を持っていた。
「こちらが今回の優勝賞金、チップ500枚です。」
黒服が箱を開けると中には大量のチップが並んでいた。
一応、数えてみるとしっかりと500枚あった。
「扉から出て、きた方向とは逆の左側をつき進むとそのまま賭博場に出る事が出来ます。本日はお疲れさまでした。」
淡々と話が終わり、黒服が扉から出ていく。
ここでボーとしていても何の意味も無いし……出るか。
イスから立ち上がり、扉を押しあける。
そのまま通路をつきすすみ、再び扉があったので押しあける。
すると、目の前には階段があったので上る。
そして上り切り、最後の扉を押しあけるとそこは一度みた場所。
賭博場だ。
「はぁ……」
安堵のため息が口から洩れる。
ここまで誰かが逆恨みして襲うのでないかと心配だったが、杞憂だったようだ。
「さて、シュナはどこかな……」
どこで頑張っているかと探してみるが、途中であるものを見つけた。
「なんで、ここだけ人が密集しているんだ?」
一つのコーナーに人が大量に集まっている。
歓声が起きたり、期待の声が上がったりしているのが聞き取れる。
「……ダブルじゃ。」
「おぉぉ!」
「……21です。」
「おぉぉぉぉぉぉお!!」
うん……あの声は……
とりあえず人ごみをかき分けながら前に進む。
すると、目の前に現れたのはシュナと……
「お前……稼ぎ過ぎだろ……」
大量のコインの山だった。
これは1000枚ぐらいありそうだ。
「おぉ、お主か。しっかり稼いでおるぞい。」
「稼ぎ過ぎだと思うが……」
シュナの目を良く見ると目が赤く染まっている。
ってことは相手の嘘などを見抜いていたのか……
「そろそろ終わりにしたらどうだ?」
「そうじゃな……あと一回ほどやらせてほしいのじゃ。で、お前の手札の合計は20以上じゃろうか。」
シュナがディーラーに問いかけるように聞く。
だが、ディーラーは答えない。
「そうか……スタンドじゃ。」
結果は、シュナが20で勝利。
また手持ちのチップが増えていく。
「じゃぁこれが最後じゃな。全額ベットじゃ。」
「おぉぉぉぉ!?」
「はぁ!?」
シュナが衝撃の行動に出る。
これで、失敗したらこれまでの頑張りが無駄になるのに……
「大丈夫じゃ、この勝負は絶対勝てるじゃろう。」
シュナが僕の心を読んだように答える。
目を良く見ると、少しだけ濃い赤になったような感じがする。
いや、少し青みもかかっている気が……
「分かりました、では。」
ディーラーが淡々と進めていく。
シュナの手元にカードが配られ、勝負が始まる。
だが……
「すまないのじゃ。ブラックジャック。」
シュナが出したカードは……キングとエース。
ブラックジャックだ。
って事は……2.5倍で返ってくる!?
「うぉぉぉおぉ!」
周りの観客がものすごい歓声を上げる。
ディーラーの顔が一気に歪む。
だが、勝負は勝負。
シュナの手元に新たな山が出来る。
これを換金したらそうとうな大金になるだろう。
「これで美味しいご飯が食べれるじゃろう。」
シュナが得意げな顔で自慢してくるので、とりあえず頭をなでておく。
本当に良くやった。
僕の稼いだ金より多い気がする。
「じゃぁ換金するかのう。」
次回、未定
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