第三十七話 奴隷
一時的に、店の中が騒然としたものの店員の活躍によって収められた。
追い出されるかと思ったが、意外と大丈夫だった。
まぁ、悪いのは僕じゃなかったからね。
「じゃぁシュナ。一万カル渡すから、好きに遊んできていいよ。ある程度のルールは店員が教えてくれるはずだから。」
「分かったのじゃ!」
紙のお金を渡し、自由に行動させる。
まぁ、シュナの事だし嘘も見抜けるから騙される事はないだろう。
信用していない人は徹底的に疑うタイプの様だし。
まぁ信用した人の事は基本疑わないようだが。
クルレスさんやクルレスさんやクルレスさんのように。
「まずは、あそこでお金をチップに変えてくるんだ。そのあとは、好きなゲームで遊んでチップを増やすだけだ。」
「単純なんじゃのう。」
「ゲームはいろいろな種類があるから、自分にあったものを見つけて遊ぶんだぞ。勝ったらお金が増えるし、それで美味しいものも食べれるし。」
「本当か!絶対勝つのじゃ!」
シュナが意気揚々とチップ交換所へむかっていく。
一万カルだから、チップは20枚ぐらいしかないだろうがシュナの事だから、なにかやらかすのであろう。
増えてくれれば、僕も万歳だ。
「じゃぁ僕もやるとするか。」
同じく一万カルを握り、チップ交換所へむかい20枚のチップと交換する。
えっと……どんなゲームがあるかな……
ポーカー……トランプを使った遊びだったはずだ。
ブラックジャックはやった事があるけどそこまで得意じゃなかったな……
後は……ルーレットかな……
運要素が高いものは苦手だからちょっと無理だろう。
というか、勇者が考えたゲーム類が多いな。
ヘルス町、通称勇者町が近くにあるからだろうか。
「う~ん……いいものがないな……」
辺りを見渡すものの、本当に自分が稼げそうなものがない。
あきらめてポーカーとかに行こうかな……
「ってあれはなんだろう。」
店の隅っこの方に設置されている黒塗りの扉。
今も、だれかが入って行った。
店員のみの出入り口じゃなさそうだし、何かあるのだろうか。
とりあえず、近づいて見てみる。
危なそうな雰囲気はないし……この先にもなにかあるのかな……
「おい、ガキ。そこをどきな。」
危なそうな輩が扉の向こうへ吸い込まれていった。
うん……心配だ……
でも……行ってみるか……
勇気を振り絞って足を踏み出す。
分厚い扉を押しあけると、そこには無愛想な階段。
そこを一段一段下りていく。
全部で約100段ぐらいで階段が終わり、再び扉が現れる。
「行くか……」
扉を再び押しあける。
その瞬間、大音量の歓声が流れ込んでくる。
「なんだ……ここは……」
真ん中が大きな吹き抜けになっている二階建ての空間。
そこで、何人もの人が吹き抜けを見て騒いでいる。
「やれ!そこだ!」
「倒れるんじゃねぇ!立てえ!」
あちらこちらで罵声が飛び交っている。
ここは……まさか……闘技場か……
「さぁやりなさい!優勝したら、奴隷生活から解放してやるわ!」
「うグワァァァァ!」
誰かの雄たけびが聞こえてくる。
奴隷……闘技場か……
風の噂で聞いたことがある。
力自慢の奴隷を集めて、無理やり戦わせる施設の事を。
他の人はどちらが勝つかにお金をかけると聞く。
「うぎゃぁぁぁぁ!」
「ウグワァァ!」
「勝者!マルシス!」
その言葉で歓声や罵声が飛び交う。
……ヘドが出る。
奴隷になった人が可哀そうでしょうがない。
自分の意思で戦うわけでもなく、弱かったらただ痛めつけられるだけ。
本当にヘドが出る。
それと同時にいらいらが募っていく。
「このままだと!マルシスさんの奴隷が優勝となってしまいます!だれか挑む者はいませんか!」
審判らしき人が声を張り上げている。
体を反回転させて、扉から戻ろうとする。
だが……
「おぉ!小さな参加者が現れた!」
自分の手が……無意識に上がる。
嘘だ……ろ……
「さて!どの奴隷を出すのですか!」
即座の断ろうとする。
だが、喉が誰かに占領されたように旨く動かない。
何がおきているんだ……
周りからの好奇の視線が飛んでくる。
何か……何か言わないと……
「俺が……俺自身が出ます。」
どこかから誰かの声が聞こえてくる。
しかも……近くから。
いや……この声は……僕自身の声だ。
僕の喉から無意識に声が出たのだろうか。
「え………分かりました、選手控室へどうぞ。」
黒い服を着た二人組にどこかへ連れて行かれる。
最悪だ……
どうなるだろうか……
次回、交渉、戦闘。
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