第三十話 到着
ランキング継続記念にもう一話。
「思ったより早かったね。お昼前に着くとは思わなかった。」
「空を飛んだのじゃから相当短縮できたのじゃろう。」
空の旅ももうすぐ終わり。
なんだかむなしい感覚がする。
「シュナ、円盤を止めてくれ。」
「了解じゃけど……なんでじゃ?」
「それはこの服だと目立つだろ……」
「わかったのじゃ。」
円盤が停止し、体が前のめりになるのを背もたれを掴んで堪える。
これって掴むのが間に合わなかったら……落ちてた……?
さすがにこの高さだったら死ぬかも……
「せめて、止める前に一声かけてよ!」
「お主が準備万端かとおもったのじゃ……」
シュナの方を見ると、縛魔法で自分を固定している。
ず……ずるい……
「まぁこんな高いところで着替えるのもなんだから旅人の服のマントだけ羽織っておくか。」
「そうじゃな。」
シュナに一枚を投げ渡して、自分もそれをまとう。
これなら、謎の黒衣の赤い部分も外からは見えないから大丈夫だろう。
「わらわも出来たのじゃ。」
振りむくと、地味なマントに包まれたシュナが目に入る。
顔も隠れてるし目立つ外見だからちょうどいいだろう。
「早く町に行きたいのじゃ!」
「張り切り過ぎな気がするけど……何かあるのか?」
「もちろん美味しいものを食べたいだけじゃ!」
「だと思った……」
欲望に正直なのはいいが、食費が心配だ……
「ある程度のお金は、あのダンジョンの戦利品で確保できたけど、少しは節約とかも考えてくれよ……」
「でも、約束があるじゃろう!」
「えっと……あ!」
たしか……あの時あれを見たときの約束……
美味しい料理を食べさせる……という事かな……
「もちろんデザートも楽しみにしておるぞい。」
「そうだった……な……」
何とか忘れさせたいが、シュナの事だから無理だろう。
自分の食べる量を……減らすしかないだろう。
「じゃあ行こうか!」
「そうじゃな。円盤を使うのじゃろうか?」
「いや、さすがにこれは不審に思われそうだから歩いていこう。」
円盤に溜めたほとんどの魔力をシュナが抜き、残った微弱な魔力を使って円盤が降下していく。
一応念のために付けておいた安全装置が無事に作動しているようだ。
「ここからはすぐじゃし、走るのはどうじゃ?」
「よし!じゃあ勝負だ!僕が先に着いたらあの約束は取り消しな!」
その言葉を放った直後、町に向かって駆け出す。
「ず、ずるいのじゃ!」
シュナの喚く声を耳にしながらもとりあえず突っ走る。
心が痛いがしょうがない、食費の為だ。
「なら、わらわも!」
シュナも何かしら使って追いかけてくる。
たぶん、靴の魔法道具だろう。
町が少しずつ見えてきた。
なかなか、大きな町だ。
「負けて……たまるか……!」
「わらわも負けてられないのじゃ!」
最後のラストスパートをかける。
あと……少しだ!
「うおりゃぁぁ!」
「わらわの……勝ちじゃ!」
背中に風を感じ、シュナが一気に加速して僕を追い抜く。
な、何があったんだ……
「な、何を使ったんだ!?」
「風魔法で体を吹き飛ばしただけじゃ。」
背中に感じた風は、シュナが起こしたものだったか……
く……魔法には勝てなかったよ……
「これで、美味しいご飯は貰ったぞい。」
「はぁ……しょうがない。」
まぁ、日ごろお世話になったお礼という事にしておこう。
お金は……なんとかするしかないだろう。
「じゃあ行くか。最初にどこ行く?」
「ご飯じゃ!」
確かに昼ごはんをまだ食べていない。
僕もお腹が空いてきている気がする。
「なんか食べたいものある?」
「う~ん……その場で決めたいのじゃ!」
「了解!」
町に足を踏み込んでいく。
「いらっしゃい!今日はバクが安いよ!」
「あらあら、ヤスさんじゃないですかぁ!」
「お久しぶりですねぇ。」
今日は確か休日だから、人が多いようだ。
おばさんも何人かまぎれているが……
「シュナ、どの店がいい?」
「えっと……あの店がいいのじゃ!」
シュナが指差したのは、バイキング式のお店。
これなら……いっぱい食べても値段は変わらない!
「ナイスだシュナ!よし、そこにいくぞ!」
「もちろんじゃ!」
お店にかけ込む。
なかなかきれいな内装だ。
一応、溜めておいたお金は全て持ちだしてきているからたぶん料理代は払えるだろう。
えっと……15万カルもあるから当分の食事は大丈夫……だろう。
だが……僕らの問題は見た目だよな……
次回、貧乏。
もうランキング継続はきついですね……
あと少し……最後のお別れを……
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