第二十六話 燃焼
「っつつ!」
「お主!大丈夫じゃろうか!」
頭に大量の情報が流れ込んでくる感覚。
―――イイウツワダ
「な、何だ!?」
「どうしたのじゃ!?」
どこからか流れ込んでくる声。
とてつもなく低い声だ。
―――ダガマダマダチュウトハンパダナ
「だから何なんだ!?」
「お主!落ちつくのじゃ!」
シュナには聞こえていないのだろうか。
動揺している様子もない。
―――コレハ……オモシロイヤツダ
耳をふさいでみるも、声は相変わらず聞こえてくる。
頭の中に流れてくる音は心底気持ち悪い。
―――ナカミハオオイガタイシテカツヨウデキテイナイヨウダナ
「シュナ!周囲を警戒してくれ!」
「了解じゃ!」
とりあえず新しい魔物の登場かもしれないと身構える。
嫌な予感しかしない。
―――フフ……キニイッタ……ワタシガオマエノヒダネトナッテヤロウ……オマエヲシュジントシテ
「だから何を言っているんだ!」
意味不明な言葉につい反応してしまう。
言葉の意味が微塵も理解できない。
―――ネガワクバオマエガアラタナミチトナルコトヲネガッテ
言葉が止んだ瞬間、魔法陣が突如赤い色に変わる。
「何が起きてるんだ!?」
「わらわも分からないのじゃ!」
魔法陣全体が赤く光り輝いた後、赤い光は端から真ん中によっていく。
中心がより強い赤い光に包まれ、魔法陣の端は完全に光を失っている。
そして、中心が光るだけになる。
「これは……なんなのじゃろうか……」
「分からないけど……なにか嫌な予感しかしないんだよね……」
恐る恐るシュナと共に近づいていく。
シュナの方が元にいた位置から、前を進んでいる。
だが、ある程度進んだ瞬間。
「な、何なのじゃ!」
急に赤い光が魔法陣から離れ、こちらに向かって飛んでくる。
「シュナ!避けろ!」
シュナが脚を踏ん張ってよけようとする。
だが……これじゃあ間に合わない。
シュナの体に光が入り込む。
「な、なんなのじゃ……」
だが、そのまま背中から通り抜けてこちらに飛んでくる。
「うわっと!」
よけようとするもののこちらを追尾してくる。
そのまま、自分の体にめり込む。
「くっ!」
「お主!大丈夫か!」
体が燃え上がるような感覚。
あ、あつい……!
耐えきれずに腰を下ろす。
「ぐ、ぐ、熱い……!」
「大丈夫じゃろうか!『氷風』!」
体の表面が冷やされる。
だが、内面の熱さは変わらない。
な、なんなんだ……
体内で何かが燃えている……?
いや……なにかをこらえていて熱くなっているようにも感じる……
「まだ……全然……熱い……」
魔法袋からシュナにかけてあと一つしかない中級回復薬を取り出す。
震える手を無理やり制御してふたを開けて口の中に入れる。
少し甘い味が口の中に広がり、傷がいえるような感覚が起きる。
だが、体の熱が引く反応が一切ない、
意識が……遠のいていく……
「お主!お主!」
シュナがいろいろな魔法を使って体の熱を逃がそうとするも、全然効いていない。
ここにきて……死ぬのか……?
頭の中で死にたくないという感情が入り乱れる。
だが、容赦なく体を熱が蝕んでいく。
手がうまく動かせなくなり、座り込んでいた体が横倒しになる。
シュナの輪郭がぼやけていく……
いや、自分の視界が歪んでいるのだろうか。
「シュナ……」
なんとか助かったようなシュナの名前が口から洩れる。
このまま、死んだらシュナはどうなるのだろうか……
出口も見当たらないこの状況でシュナを一人残すのは危険だろう。
余計な感情が抜けていき、生きたいという願望だけが前面に出てくる。
今にも倒れそうな状態で思考が回り続ける。
「あ、熱い……」
口を開いても熱いという言葉しか出ない。
もう、だめなのかな……
願望を上回る失望が心の底からわき上がる。
なんとか抑え続けるものの、ついに耐えきれなくなり……失望が前面に出てくる、
気力がなくなり、完全に体が動かなくなる。
そのまま意識は……闇に沈んでいった。
次回、溺
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