第五話 勇者
使えないものの魔法の知識はため込んであるのは事実。
部屋の壁に大量に置かれた本棚。
そこには趣味の本が大量に入っている。
大量の漫画や小説だ。
ほとんどがバトルや政治もの、さらには逆境ものまで大量にある。
お気に入りは召喚された勇者について書かれた物語だ。
この本は実際に召喚された勇者が書いた物語で真実が多く書かれているからそれも人気の一つだ。
”勇者”
何か大きな事態が発生したときに異世界からやってきた人々のことである。
王族が持っている聖杯というグラスを使うらしいがやり方は公開されていない。
さらに、よっぽどの大事でない限り召喚は成功しないらしい。
この物語を書いた勇者は約15年前に魔王が現れた時に召喚されたらしい。
七つの悪魔と契約を交わしたら魔王が生まれたらしい。
その時に召喚されたのは合計で4人。
召喚されたばかりの勇者は、一般人ぐらいの力しか持っていない。
だが、各自特殊な能力を持っている。
さらには、全員成長速度がすごく早い、異世界での知識があるなどの特殊な点が多いのだ。
勇者は各自持っている能力によって呼び名が変わる。
その時召喚された勇者にも呼び名がついた。
剣技の勇者、天使の勇者、投擲具の勇者、そして書記。
どう見ても勇者と思われない名前があるがそれは持っている能力があまりにも異質で弱い物だったと言われたからだ。
その最弱の勇者がこの本の著者だ。
その能力、それは文字などを書くスピードがとても速い、とステータスプレートに書いてあったのだ。
短い文の割には空欄がとても多かったらしいのだが、それに気が付かなかった彼は散々な対応を受けたようだ。
裏切りに冤罪などさんざんだったらしい。
その中でも意地になって仲間と自分を鍛えながらいったらしい。
そして、途中で自分の能力の秘密について気がついたと伝えられている。
書いた文字を現実に反映させる事が出来るという能力だったようだ。
いろいろ制限もあるがなかなか便利なものだったようだ。
本当にうらやましい。
他の勇者には見下され、町の人から冷たい歓迎を受け、その中でも頑張ってきたとなっている。
そして魔王を倒しに出かけた三人の勇者は魔王を限界まで追いつめることができたようだ。
だが、魔王が最終形態になった時に予想外だったらしく逆に限界まで追いつめられた。
そこになんとか間に合ったのが、書記の勇者だった。
書記の勇者は到着すると、その能力を持って魔王を圧倒しはじめた。
見事な成り上がりだ。
そして、ほかの勇者たちが呆然と見ている中、数少ない仲間と一人の勇者だけで魔王を倒しきった。
だが、魔王は簡単に死ななかった。それ故に魔王だったのだろう。
命を引き換えにしてこの広大な島ごと破壊できる魔法を放ったのだ。
書記の勇者が自らの能力で消滅させようとするも、魔王の魔法により制限がかかってしまったていたため、威力を半減させるに止まった。
残った半分は5つの国の王たちが禁断の魔法に手を出して対応したが、それでも多少は被害が出てしまった。
でもこれで平和がやってきた。
国の人々は手のひらを返したように書記と呼んで見下していた勇者を筆の勇者と呼んで尊敬したらしい。
それには、多少は不満をもったらしい。
勇者は大事を解決した後は二つの選択肢があるらしい。
元の世界に帰るか、このままこの世界に残るかだ。
この四人の勇者以外にも、過去に召喚された勇者もいるがほとんどがこっちの世界に残る事を選択したようだ。
筆の勇者はこっちの世界でも酷い目にあったのも理由にあるのか元の世界に戻る事を検討したらしいが、まだまだこっちの世界で変えたい事が見つかったらしく結局こっちの世界で残っているらしい。
それで物語を書いたりして今も過ごしているようだ。
その勇者として活動していたころの記録を物語に書き換えたものがいろいろなところにある本屋で販売されて人気になっている。
さすがは筆の勇者。
文章力はとても優れている。
大量の文庫本の中に一つだけある箱。
その中に入ってるのは複数のノート。
魔法についてため込んだ知識を書き込んだものだ。
魔法。
それは体内の魔力MPを利用して繰り出す術式だ。
五つの属性があり、それぞれに特徴がある。
火、熱を持ち相手にやけどなどの効果をもたらす。
水、液体を発生させ相手の攻撃速度を遅らせるなどの効果をもたらす。
風、空気を圧縮させる事ができ、高い攻撃速度を持つ。
土、土などの一部の個体を発生させる事ができ、物理的に攻撃ができる。
雷、電気を発生させる事ができ、相手を行動不能にしやすい効果を持つ。
ほぼすべての人が全ての属性の基本となる魔法『魔法玉』は使える。
才能がないととてつもなく弱いが一応使う事が出来るである。
だがそこから先の魔法は才能がないと使えない場合がある。
一人一人得意な属性は変わる。
火属性が得意な人、風属性が得意な人などさまざまだ。
複数の適性属性を所持している人は1000人に一人ぐらいという少ないが一応いる。
ちなみに、全属性が使える人はこれまで一人しかいなかった。
さらにこの属性以外にも無属性というのもある。
特殊な能力があり、これも複数の適性属性を持つ人よりも少ないといわれている。
有名なところだと、加速、防御壁などがある。
魔法を使う時は必ず呪文を唱えなければならないらしい。
呪文を唱えると意識した場所から魔法陣が形成される。
範囲は人によって変わるが、だいたい体の表面からだいたい20cmぐらいのようだ。
人によっては一メートル以上遠くでも出来るらしい。
魔法陣は属性によって色が変わる。
火属性は赤色、水属性は青色、風属性は緑色、土属性は茶色、雷属性は黄色となっている。
さらに組み合わせなどでさらに変化する。
呪文を唱えると最初にそれに対応した何重かの文字の羅列が形成される。
一番簡単な魔法玉の呪文で3重だ。
何度も見ているため下級と中級魔法はすべて、上級魔法は半分くらいその段階で何が来るかどうか理解できるようになった。
魔法玉を解析すると一段目でその属性の基本となる現象、火属性の場合だと火が起きるなどを起こす文字列。
二段目でそれを圧縮して玉の形に変形させる文字式。
三段目でそれをまっすぐに飛ばす文字式。
この三つの命令式で魔法は一応完成できる。
その後、現象の大きさ、圧縮率、飛ばす速度などをさらに文字式にして本当に完成する。
さらには反重力の文字式も加えることがある。
これを加えることで落ちて跳ねる魔法から直進できる魔法に変わる。
これから六重、または七重の魔法陣によって魔法が完成させる事が出来るというわけだ。
書き終えるには人によって時間がかかるが長い人で5秒、早い人で1秒ぐらいで完成する。
書き終えてから魔法陣よりも才能と魔力があれば発動するようになっている。
もし才能や魔力が足りない場合は黒煙を上げて魔法陣は消滅する。
才能は使い続ける事で微量ながらも成長するらしい。
最初のころは全然分からなかったが、皮肉な事にあのいじめによって動体視力が発達したのか見分けることが出来る様になった。
無属性の魔法陣は見たことがないから分からないが使われる事がめったにないので大丈夫だろう。
魔法道具は、その道具の中に魔法陣がすでに描かれているため自分で形成する必要がない。
そのため、ただ魔力を流し込むだけで作動するのだ。
だが、その魔法道具に触った状態でないと使う事が出来ない。
なぜなら魔力を外に出すとき空気中だと魔法がすごい勢いで分解されてしまうからだ。
だけれど、魔法道具は才能がほとんど必要ないためだれでも扱う事が出来る。
その魔法道具すら使えない僕はもはやおかしいとしか言えないのだ。
これまで作った魔法道具はほとんど使用本人の魔力を使うものだったため自分には使えなかった。
だが、唯一制作したもので自分が使えた刀がある。
中に魔力をため込む事が出来る魔石という物を中にはめてある。
魔石は魔法袋に大量に入っていたのが幸いだった。
それによって魔力が使えない僕でも使用することができる。
その刀は風魔法を使用して高速で動かし、切り裂ける範囲を少しながら広げる事が出来る。
さらに、鋭さも格段に上がり切れ味がすごい事になっている。
だが、その代償に一瞬で魔力が尽きてしまうため起動した状態でほうっておくと数秒で使用不能になってしまう。
何度でも魔力をチャージすれば使用可能だ。
だがそれが出来るのは魔法が使える人だけ。
そのため自分は特殊な機械を使わなければならない。
魔法袋に入っていた魔法道具の一つ、魔力生成装置。
特定の植物を魔力に変換し、それを魔石にため込む事が出来るというわけだ。
ただしそれもだいぶ巨大なので外で使用することができない。
よって外での魔力補充が出来ないので、一度限りの必殺武器であるというわけだ。
「えっと、今日のやろうと思っている事は魔石のチャージだな。前ちょっと実験で使ってそのままにしていたからな。」
部屋の中心近くに設置してある魔力生成装置に近づく。
「あれ?植物が無くなりかけてる……はぁまた取りに行かなければいけないのか……」
その植物が生えている所は魔物が多く生息していて、学校の生徒の立ち入りは基本禁じられている。
まぁ入っている生徒も少なからずいるのだが。
「明日は休日だしいいか……えっといつも使っているルートをつかってもいいけれどちょっと前とりすぎたかもしれないから今回は別のルートで行こうかな。」
僕は気がつく様子がなかった。
その選択が彼の人生を大きく変えたという事に。
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