第三話 起床
「そう言えば話し合っていろいろ聞きたいことがあるのじゃ。」
テントに入った直後、シュナが切りだしてきた。
「なに?答えられる事なら答えるけど。」
「冒険者についての事がまったくわからないのじゃが。」
そういえば全く冒険者について教えてなかった。
確かに疑問に思うだろう。
「えっとどこから説明したらいいのか……」
「じゃぁどんな事をするかという事から頼むのじゃ。」
予想より簡単な事を聞かれたので安堵する。
さすがにお金がどのように回ってるとか聞かれたら困るところだった。
「えっと基本はいろいろなところからくる依頼を受けるという感じかな。依頼されたものを取ってきたり邪魔なところに発生したモンスターを倒したりする事がメインだけど。」
「メインって事は他にもあるのじゃろうか?」
予想よりするどい所を突かれた。
確か……
「最近いろいろなところで起きている突然起きるモンスターの異常発生の解決とか護衛、あとは大会などもやってるらしいけどな。」
「いろいろあるようじゃのう。後は……基本的なシステムを教えてもらえるじゃろうか。」
それぐらいならたやすい。
「基本的に冒険者にランクって物がつけられるんだ。下からE、D、C、B、A、S、EXまである。冒険者はだいたい100万人は余裕で超えるくらいいるんだけど基本的にはDの人が多いかな……」
「お主はどこからはじめるのじゃ?」
「本来ならEからはじめるんだけど、大会からなった事から少なくともD、よかったらBからとか行けるかもね。」
一応特別枠で入ったことで多少優遇されると聞いている。
「ちなみにEXは何人ぐらいいるのじゃ?」
「確か前までは2人だったけど最近3人になったらしいね。一人は無属性使い、一人は四属性使い、そして最後の一人はなんかの属性に特化していたって聞いたな。EXは人間族の中で最強と言われているしね。」
「よほどすごいのじゃろうな。」
「あくまで人間族の中でだけどな。」
冒険者ギルドは人間族の国のあちこちにある。
ただし、獣人族の国の中にはなく別の獣人族のギルドがあるらしい。
この世界には5つの国があるが、そのうちの3つは人間族の、残った二つは獣人族の国だ。
人間族と獣人族は仲がとてつもなく悪く、いまにも戦争が起きそうなぐらいだ。
獣人族の国では人間を奴隷として使っているらしいがこちらも同じ様な事をしているのだから何も言えないだろう。
獣人族は気性が荒いので、人間が普通に入ったらボコボコにされて奴隷などにされるのは落ちだろう。
まぁこっちでも獣人族への迫害はひどいけど。
「そういえばわらわはお主とコンビを組む事になるのじゃがわらわのランクはどうなるのじゃ?」
「一応パートナーという事だから確かランクも共通になるはずだよ。」
「分かったのじゃ。意外と冒険者の制度も複雑ではなかったのじゃ。」
「まぁ冒険者になる人はめんどくさいことを嫌う傾向が高いらしいからな。」
「それじゃぁ今日は疲れたので寝るのじゃ。」
「あぁお休み。」
自分も疲れたのでシュナに背を向けて横になる。
その瞬間、これまでため込んでいた疲労がどっと流れ込んで意識が薄らいでいった。
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「……おはよう。」
「おはようなのじゃ。」
目を覚ますと上には馬乗りになってるシュナ。
「何をしてるんだ?」
「ん?自分でもよくわからないのじゃ。」
シュナが不思議そうに首をかしげる。
そのしぐさはかわいいが、それ以上にこの行為への疑問が大きい。
「朝早く起きてクルレスさんの所に行ったらこうすればイツキが喜ぶと言っておったぞ。」
「クルレスさぁーん!?」
予想外の裏切り。
最近知り合いの裏切りが多い気がする。
「まず、そこから下りてくれ。話はそのあとだ。」
「分かったのじゃ。」
シュナが体の上から下りたのを確認し、テントから出る。
そのままクルレスさんの背後に近付いて……
「うりゃぁ!」
「甘い!」
首筋を一撃して落とそうとしたが寸前で止められた。
ちっ、あと少しだったのに……
「遊んでる暇があったら片付けをしろ。テント片付けたらすぐに出発だぞ。」
「分かったよ……」
とりあえずいったん引く。
後でもう一度襲ってやろう……
速攻でテントを片付けて出発準備を済ませる。
「よし。出発だ!」
馬車が再び走り出す。
だが走り出して数分後。
「大変です!盗賊が来ています!」




