第二話 料理
「香辛料をこの割合で混ぜ合わせて……その前に燻製肉の硬い所をそぎ落として鍋に入れて……」
包丁で肉のいらない所をそぎ落とし鍋に突っ込む。
そして魔法袋の中に入れておいた本を参考にして調合を続ける。
シュナが火魔法で加熱してくれているが、細かい部分は指示しないといけないため気を使う。
「よし!できた!」
最後の調味料が完成してあとは火加減を見張るだけ。
浮いてくる不味い汁を取り除きながら頃合いを見て作った調味料を投入して軽く混ぜ合わせる。
うん、いい香りだ。
「いい香りがすると思ったらもうすぐ完成か。」
「底の深い皿と浅い皿をひとり一枚ずつ準備しておいて。浅い物だけだとこぼれるから。」
テキパキと最後の仕上げを終わらせてクルレスさんに用意してもらった皿についで準備をすませる。
「お~い。出来たぞ~!出てこ~い」
「うぃーす。」
クルレスさんの一声で護衛達が一気にやってくる。
外に設置したテーブルに座ったのを確認して皿を持っていく
「え!?まさかこの味もあんまりないパンだけっすか!?」
「さすがにこれは料理とは言えないっす!」
浅い皿に一人二つしか載せていないパン。
予想通り不満げな声が聞こえてくる。
「これだけじゃないって言ったっけ。ほれ!これがメインだ!」
そう言って器に持った汁を机に置いていく。
「おぉぉぉぉ!?」
歓声がわき上がる。
思ったより高反応で嬉しい。
「これはハルス町特製、カレースープ!そのまま飲んでもよし、パンを浸すもよし。さぁ召し上がれ!」
「いただきます!」
その一声と共に、みんながスープを喉に通していく。
自分も同時にスープをパンに浸して食べる。
「なにこれ!ほどよい辛さが喉に染みわたる!」
「どうやったらこのコクの深い味わいは出るんだ!?」
驚愕の声と共に、どんどんみんなのスープが皿から消えていく。
「この肉!スープがしみこんでいて噛めば噛むほど味が出るぞ!?」
「野菜もシャキシャキとした食感にあっさりとしていてアクセントになってる!」
自分でも食べたが、予想より旨く出来たようだ。
硬くて味の薄いパンをスープに浸すとやわらかくふやけて、長く浸していると中にスープがたまりより濃い味が味わえる。
「あぁ!?パンが無くなった!?」
「パンのお代わりあるから待ってて!」
急いでテントに戻ってパンを取ってくる。
残り少ないながらも全員分のお代わり分はあるだろう。
「ほい!パンのお代わり!」
「ありがとさん!」
「スープのお代わりある?」
「あるからお皿持ってきて!」
どんどん来るお代わりの注文に答えながらも自分の分はしっかり確保して食べる。
あの後3、4杯目のお代わりなどが出て足りなくなり作り足したりして何とか全員分の腹を満たす事ができた。
「ふぅぅ食った食ったぁ。」
「もう……動けない……」
護衛達は地面に寝転んで死んだようになっている。
「イツキ十分飯を作るの旨いじゃないか。明日からも頼むぞ。」
「一回で疲れ果てたよ……もうこりごりだ。」
褒められたのは嬉しいが正直あまりやりたくない。
「それに材料がもうないし……」
「まさかここまで食べられるとはな……」
馬車に積んであったパンも野菜も、さらには香辛料まで無くなった。
これからのご飯は町に着くまでは途中途中で魔物を倒してドロップを手に入れたり採取とかして行くしかないかもしれない。
次の町までだいたいあと1日半ぐらいかかるから4,5回分の食事だろうか。
「じゃあ今日は早めに寝とけ。明日は早くからの出発だぞ。」
「分かった。えっとシュナはどこで寝ればいい?」
たぶん全員で同じテントに寝る事になるだろうが、唯一の女の子のシュナはキツイだろう。
「あそこに小さなテントを設置したからそこを使って。中にすでに寝る準備はしてあるから」
「分かった。あと、僕はどの辺で寝ればいい?」
「何言ってるんだ?あのテントでシュナちゃんと一緒に寝るに決まってるだろ。」
「え!?」
なんかものすごい事を言われた気がする。
振り向くとニヤニヤ顔のクルレスさんが目に入る。
ものすごい……殴りたい。
「間違いは犯すんじゃねぇぞ。」
「やるわけないだろ!親戚だぞ!」
「だが若い子の衝動は怖いからのォ。」
なんか怒りを通り越して殺意を覚える。
シュナを呼んできて懲らしめてもらおうか……
「まぁまぁいいじゃないのじゃろうか。」
「えぇぇ!?」
思わぬところからの攻撃。
シュナからの援護攻撃は予想外だった。
「じゃぁ行くのじゃ!」
「ちょ服を引っ張るな!のびる!」
引きずられるままテントに入れられる。
最後に見えたクルレスさんの顔がものすごいムカついた。
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