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最弱異端児は夢を見る  作者: 時雨
第一章 最弱異端児は・・・
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第四十九話 出発★

「おはよう……」

「おはようなのじゃ」



出発当日。

朝から早速部屋のベットにシュナが入り込んでいた。

最近はずっとそうだったが、部屋で寝なくてよかったのだろうか。



「お前……準備はできているのか?」

「あぁばっちりじゃ。お主こそ大丈夫じゃのか?」

「もちろん大丈夫だ。」



空間生成装置も圧縮装置も全部魔法袋にしまった。

もちろん本のコレクションも全部箱に入れてしまってある。

それでも魔法袋は4分の1しか埋まっていない。

おそるべき容量だ。



「イツキ~シュナちゃん~朝ごはん出来たわよ~」

「は~い!」



最後の勝負。

足を思いっきり踏ん張って駆けだす。

これは負けられない。

シュナも少し出遅れたものの魔法道具を使って加速して追いかけてくる。

なに!

いつもより少々速い気がする。

だが……最後まで走りぬく!



階段のターンも旨く回って居間まであと少し。

今のところほぼ互角。

最後の少しを全力で……駆け抜ける!



そして同時に部屋に飛び込み……引き分けとなった。



「朝から元気がいいわねぇ。」



おばあちゃんがほんわかとした感じで話す。

朝ごはんはいつもより豪勢だ。

出発の日だからだろうか。



「いただきます!」



栄養を取っておかないと旅道でなにが起こるか分からない。

まぁそれが楽しいのだけど。



シュナに負けないような速度で食べ進めていく。

だが、腹八分目まで食べたらもう無くなってしまった。

シュナの速度には勝てなかったよ……



「準備はできたの?忘れ物はない?歯ブラシ持った?」

「大丈夫だって。ぜんぶ準備してあるって。」



最近おばあちゃんが一気に心配性になった。

大丈夫だって何度も言っているのに……



最後に荷物をすべて確認して玄関に向かう。



「そうだったわ。これを持って行きなさい。」



そう言っておばあちゃんは綺麗な箱を渡してきた。

宝石箱のように綺麗な装飾が付いている。



「何が入ってるの?」

「エリクサーよ。」

「えっ!?」



エリクサーは伝説の薬の一つだ。

一滴たらせばキズはたちまちふさがり、無くなった腕も掛ければ再生するとまで言われている秘宝級のアイテムだ。



「おじいちゃんの遺品でねぇ。私がもっていても無駄になるからねぇ。」

「分かった。大切にするよ。」

「もし、大切な人が命を落としそうになったりしたら迷わず使いなさいねぇ。」

「うん。」



箱をしまい、最後の確認を済ませる。



「怪我には気をつけてね。もちろん病気にもね。」

「全然大丈夫だから。」

「いつか帰ってくるのを待ってるからね。たまに顔を出しに来るのよ。」

「分かったよ。じゃあ行ってくる。」

「がんばってらっしゃい。」

「行ってくるのじゃ!」

「シュナちゃんも元気でね。」



おばあちゃんの目の端に涙が浮かんでいるのは気のせいだろうか。

扉から出て、最後に家に方を見る。



相当昔から立っていたあろう巨木。

木の葉は全くついていないが、相当の迫力がある。

前まで筋トレ代わりに登ったりして遊んでいたのを覚えている。

この木で遊ぶのも、もうないと思うと少し哀しい。



相当昔に勇者が設計して作ったといわれる家がその巨木の後ろにたたずんでいる。

これまでお世話になった家。

庭にはカナのお墓。

荒削りした岩を置いてある。

オーク肉を一応お供えで置いておいた。



ポケットからあるものを取り出してなつかしむ。

カナの……切り離された尻尾だ。

同じ様に埋めてあげようと思ったが、通りすがった行商人がアクセサリに出来ると言ったのでしてもらったというわけだ。

カナを失った悲しみを抑えるために持っている。

クリップを服のベルトに取りつける。

カナ……恨みは晴らしたよ……



そのまま、一分あまりなつかしんで、そのまま学校の方へ向き歩み始める。

次に帰ってくると時は……冒険者で名をあげてからだ。



学校に着いたら何人かの見送りが来ていた。

サクラやマサトに半分くらいのクラスメイトや後輩まで、アイカ先生などのお世話になった先生までいる。



「先輩!」



声を最初にかけてきたのは、あのカケルにいじめられていた後輩。

声もまだまだ幼く、可愛げのある後輩だ。



「どうしたんだ?」

「本当にありがとうございました!おかげで助かりました!これはお礼です。」



そういって渡してきたのは少し大き目の紙袋だ。

袋の端を見ると、見覚えのあるロゴ。



「クラシス社の特製ケーキです。」

「まじで!」

「少々揺らすと危ないのと、腐ってしまうと大変なので早めに食べてください。」

「分かった。ありがとうね。」



後ろからシュナの羨むような視線が感じられる。

いや、あげるからその視線を止めてくれ。

半分までしかあげないけど。



「イツキ!気をつけていけよ!」

「命大事にな!」

「出来る限りがんばるのよ。」

「おいしいお土産待ってるよ!」



見送りに来てくれたクラスメイトも応援してくれているようだ。

カケルに毒されている人は意外とクラスには少なかったらしい。

若干、違う事を考えている人もいたようだが。



「そうだイツキ。これを持っていって。」



マサトがそう言ってポケットから銀色に光るネックレスを取り出した。

翼の形をしたものだ。



「これの意味は『飛翔』。お前にぴったりだろ。」

「いいのか?魔法銀見たいで高そうだけど。」

「大丈夫。それはイツキがつけるべきものだから。」

「そう、じゃあありがとう。」



受け取って自分の胸に付ける。

うん、意外としっくりくる。



「ちょっとマサト!そんなもの準備してるなら言いなさいよ!私、何も準備できなかったじゃないの!」

「え?準備できてなかったの?」



サクラが慌てている。

ちょ、笑いそうだ。



「何笑ってるのよ!人が困ってるのに!」



やばい。

顔に出てしまったようだ。



「えっと、じゃあこれあげるわ。」



そういって渡してきたのは腕に付けていた腕輪。

黒く鈍く輝く腕輪だ。



「いいのか?たしかいつもつけていた物でしょ?」

「いいのよ。私にはうまく使いこなせないようだし。というか効果がまったく分からない代物だし。これでも私の宝物だから大切にするのよ。」

「分かった。ありがとう。」



受け取って腕に装着する。

サイズもちょうどよく、ぴたりとはまる。



「イツキ君。もし迷ったりしたらここによりなさい。相談に乗ってあげるから。」

「ありがとうございます。アイカ先生。」



もうすぐ出発の時間。

これからの期待感で胸が高鳴る。



もう少しで王都から冒険者ギルドへ行く馬車が来る。

馬車に近くの地域の冒険者になることになった人々数人を乗せていく事になっている。



「た、大変です!」



校門の方から学校の職員の一人が慌てたように駆けてくる。

何かあったのだろうか。



「冒険者ギルドへの馬車が襲われたそうです!なんとかその場は乗り切ったようですが、ここの当たりを囲まれているようで先に王都へ向かうそうです!イツキ君は頑張ってきて一人で来てほしいと言ってました!後でお詫びはするそうですが!」

挿絵(By みてみん)

イラスト第四段

イツキの家です。

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