第四話 開放
扉を開けるといつもと変わらない部屋。
勉強机にベットに本棚と普通の人と変わらない部屋の作り。
見た目で他の人と違う所は魔法道具がほとんどないところだ。
他の人の部屋とは大きく違うところは……
「認識」
個人認証の魔法の起動呪文を唱えると体に軽い電流がはしる感覚。
天井に小さく設置された特殊な魔法道具の効力が体を通った時の感覚。
体がむずがゆい。
魔法が使えない僕が使える魔法道具。
それは魔力を消費しない特殊な道具。
いわゆる内部で魔力を生産し、それを消費する魔法道具。
魔力を自動で生産する道具だけでもすごい価格になる。
本来ならこんなものは貴族でも買える人は少なく、一般人には一生に一つ買えないぐらいのものである。
そんな物を金持ちでもない僕が持っているのはある理由があった。
小さいころに森に捨てられたときに一緒に置いてあったリュックサックの様なもの。
サイズも一般的なものと変わらないが普通のものではなかった。
それは、【魔法袋】というもの。
中には魔力で生成された空間が広がっている。
大きさは種類によってさまざまだが、この魔法袋は規格外だった。
大きさにして家一軒分。
最高級のものでも見た目の二倍の容量。
込められた魔力に比例して大きくなるものだが、このサイズにするには国認定の魔法使いが総動員しないと作れないといわれている。
中に入っていたのは、数多くの魔法道具。
そのどれもが一般的な自分で魔力を導入するものではなく、自動で魔力を生成したり物を魔力に変換して使用するという並の人では到底手の届かない高級品ばかりだったのだ。
どれもサイズが比較的大きいため外で出すことはできないが、室内でぎりぎり一つおけるぐらいのものがあったのが幸いだった。
中身を全部売れば大きな都市一つまとめて買えるぐらいの金額になるだろう。
ここまでくると盗まれることがとても心配になるが、それも必要なかった。
これには特殊な結界が張られていて特定の人にしか開けない特別製だ。
そして位置と周りの状況、周りにある物や人を認識することができるという特殊な能力もある。
さらには定められた起動式を読み上げることで目の前にテレポートさせる仕組みまであるようだ。
ここまでくると魔法袋一つで国宝になるだろうレベルだった。
このチートアイテムがそばに落ちていたのだ。
僕の名前で登録された状態で。
個人認証が完了し何もなかった空間に扉が薄い光の粒をまき散らしながら現れた。
【空間生成装置】
これが魔法袋の中に入っていた道具の一つ。
特殊な空間を生成するというという聞いただけでは簡単そうだ。
だが、実際はとても大きく、部屋が一つ埋まるぐらいのサイズだった。
一応この機械は屋根裏部屋に設置しておいた。
おばあちゃんには物置きとして使うと伝えてある。
ばれてしまいかけた事があったが、まぁなんとか誤魔化しつづけることができている。
生成される空間のサイズは、だいたい家がすっぽり入るサイズだ。
魔法袋と全くおんなじ大きさ。
魔法道具図鑑に一つだけ載っているのは見たが、それは一部屋分のサイズしかなかった。
最高級品でそのサイズなのに持っている物は完全に規格外。
泥棒を恐れる心配がないが、それでも持っている間はビクビクしてしまうがしょうがないだろう。
ごちゃごちゃいろいろ入っている中からこれを見つけるのは大変そうだったが、実際は意外と楽だった。
最初に開いたときはビビったが、落ち着いてから中を少しずつ見ているとなんか分厚そうな本があるのを見つけた。
そこには各道具の使い方が可愛い挿絵付きで書いてあったのだ。
開いてから一瞬で閉じるという悪行をついやってしまったが、あとから恐る恐る見ると意外と分かりやすいと思った。
見た目で判断してはいけない(?)という事が学べたということだろう。
ただし、今でも見てイライラする。
扉を開けて中に入ると、多少の家具と大きな魔法道具……いや魔法実験器具といった方がいいのかもしれない。
それらがいろいろなところに的確に置いてある。
最初に開いたときは殺風景すぎて精神衛生上よろしくなかったが、今はもう壁紙などで多少趣味に合った感じになっている。
ちなみに今の趣味は……自然だ。
木が生い茂る森の中を再現した壁紙を貼ってあるのでだいぶきれいになっている。
中にある魔法道具はなかなか……いや規格外の物がそろっている。
魔力計測装置、魔法性多機能所持機械、魔法道具制作装置が何種類か、刻印型魔法添付装置などめちゃくちゃ便利なものが存在している。
いくつか使いこなせない物もあるものもあるものもとても便利である。
魔法が使えないというハンデを埋めるために毎日研究して勉強しているというわけだ。
魔法性多機能所持機械、通称MMが机の上に置いてある。
記録から計算、などなんでもできる優れ物だ。
調べてみたところこれは世界に一つしかない魔法道具。
いわゆるユニークグッズと呼ばれるものの様だ。
なんでこんなものが僕の横に落ちていたんだととても驚き、危うく目玉が取れかけたところだった。
これがチートというものだろうか。
最弱が使うチートはどれぐらい強いのだろうか。
結論は身に染みてわかってる。
……ほとんど使いこなせていない。
魔法の分析は簡単になって、魔法の知識を増やすことに成功したがそれを生かすことができていない。
魔法のことを調べても魔法の才能がなければほとんど無意味。
いつか使えるようになるのを夢見ているが、たぶんこれからもずっとないだろう。
少々残念な気もするがしょうがない。
希望を持てるのは頼れる魔法使いを見つけてその人に協力すること。
いつかこんなことが起きないかと思っているが、なかなか起きないのだ。
いつか、なにかが起きるのをただ待ち続けるだけ。
叶うはずのない夢を持ち続ける生活。
少し説明回っぽくなるけれど頑張ってストーリーを織り込みながらやっていく予定です。