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最弱異端児は夢を見る  作者: 時雨
第一章 最弱異端児は・・・
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第四十六話 論争

「ルール違反だ!魔法道具は一種類までと決まっている!」



終了直後、カケルが大声で騒ぎたてる。

その言葉で全体が一気に静寂に包まれる。

自分自身がルール違反をした癖に何を言っているんだ。



「ルール違反でお前の負けだ!残念だったな!」



いつもの優等生の皮をかぶるのをすでに忘れてバカな事を言っている。

だが、残念だったな。

もうすでに手は打ってある。



「その言葉に異議を申し立てます。」



会場に凛とした声が響き渡る。

その言葉により観客の目が一気に職員席に向かう。

うまくいっているようだ。



立ち上がっているのはアイカ先生。

いつもの温和な態度とは真逆の絶対零度の視線。

それがカケルに注がれている。

暑い日に極寒の視線。

これは完全に作戦がうまく行っているであろう。



「イツキ君が使っているのが魔法道具・・・・ではありません。」



僕が先生に接触したのはこのためだ。

あらかじめ、魔法機械という事を証明しておいたのだ。



先生の発した言葉に会場の温度が再び上がる感覚。

疑惑の声があちこちから上がり、カケルは完全に思考が停止しているようだ。



「イツキ君が使っているのは、道具の中から魔力を使う魔法機械・・・・に分類されるものです。ルールでは魔法機械の制限はないのでルールには違反していません。」

「嘘だ!そんなのは屁理屈だ!」



カケルが即座に反論する。

会場の疑惑の声も倍増し、やじが飛び交っている。

ある程度覚悟をしていたが、これはキツイ。

悪口をとにかく無視し続け、冷静を装う。



「この大会はルール(・・・)に乗っ取って行われています。ルールに違反していない場合は失格とはなりません。」



アイカ先生も負けずに反論している。

先生の背後に般若の顔が見えるのは気のせいだろうか。



「だとしても……魔法機械がこんなに集められるはずはない!」

「残念ですが、すべて彼の自作です。」



その一言で会場のボルテージが大きく変わった。

確かに驚くだろう。

魔法機械を作れる人は少ない。

疑惑だけだった視線に微かな希望がまじりあう。

本当だったら大変な事だ。

スカウトがいっぱい来るだろうと思うと顔がにやけそうだ。

もし、来ても全部断るだろうが。



「そして、魔法道具が一切使えない彼が使えるのは魔法機械だけです。これが一番の証明になるでしょう。」



会場から納得の声が漏れる。

魔法をほぼ使わない戦闘スタイルを見たら納得もするだろう。

唯一使った魔法も魔法実行紙によるもので、見せびらかすようにやったので魔法が本当に使えない事が理解できるであろう。



「その眼球を貸して下さい。私が調べましょう。」



そう言って立ち上がったのは校長先生。

魔法道具のスペシャリストで、意外と名が知れ渡っている。

目から眼球を取り出し、校長先生に渡す。

それをじっくりと観察して、結論を出したようだ。



「これは間違いなく魔法機械です。魔力を注いでもほぼ反応がありません。」



会場のボルテージがさらに上がっていく。

魔法機械は、無駄な魔力の放出を防ぐために魔力の通り道を二つしか作らない。

一つは、魔石に魔力を注ぐ道。

もう一つは、魔石から魔法陣への道だ。

魔力を注いだとしても魔石に蓄えられるだけで動作はしないというわけだ。



「もう一つ、ルール違反が確認されています。」



再びアイカ先生が話し出す。

これ以上ないぐらいに会場が盛り上がっている。

ここまでの番狂わせは過去にはなかっただろう。

疑惑の眼差しはほとんど期待の眼差しに変わっている。

体の体温があがる感覚。

完璧だ。

流れも完璧に進んでいる事を感じる。

待望の瞬間まであと少し。

脈拍が上がっている気がする。



「部外者の試合の妨害が確認されています。『反土壁アンマッドウォール』の外部からの使用です。」

「わたしもそれを確認しています。」

「わたしもです。」



アイカ先生の言葉に伴うように他の先生も立ち上がり出す。

30人ぐらいだろうか。

会場がこんどは驚愕に包まれる。



サクラとマサトに頼んだのは出来る限り多くの先生への接触。

そして、試合中に僕の足元・・に集中して見てほしいという事を伝えるようにしておいたのだ。



「犯人はソウタだと認識しています。さらにはカケルから『延長紙』を受け取ったという情報も届いております。」



この情報をリークしたのも僕だ。

追いつめられて焦るカケル。

見ていてすごい爽快だ。

顔がにやけてしまいそうなのを全力で押しとどめる。



「そ……そんなのは真実ではない!嘘の可能性もあるじゃないか!」



カケルが反論するも、もうほぼ意味がないだろう。

なぜなら……



「別にあなたが主犯ではない可能性もあります。だが、あなたの負けは変わりません。」



そう、すでにカケルの負けは確定している。

完全勝利というわけだ。



「え……えっと今回の勝負には決闘が掛かっているためその要求を公開します。」



ずっと傍観者となっていた審判が思い出したように司会を続ける。

決闘の事を忘れていた人は多かったようで、思い出したような声が沸き立つ。



「イツキ側の要求は……新たな剣の制作代の負担となってます。」

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