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最弱異端児は夢を見る  作者: 時雨
第一章 最弱異端児は・・・
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第四十話 隠蔽

「お前!見つかったら死ぬぞ!」



マサトが忍び足で出て行こうとするのを慌てて止める。

シュナの裸は見た事はないが、見ようとしたら殺されるだろう。

おばあちゃんとシュナの両方に。

おばあちゃんは温和だが、たまに本当に怒る。

その時は、長~い説教が待っているためそれはまっぴら御免被りたい。



「大丈夫だ!準備は万端だ!」

「お前何をしたんだ……」



マサトがドヤ顔で話し始める。



「これは何か知ってるか?」



そう言ってマサトは謎の布を取り出した。

黒いが表面に白い魔法陣が描かれている。



「なんだ?その魔法陣は見た事がないけれど。」

「これは行商人から買った昔の王国の兵器なんだ!」



喜々として話すマサト。

本当に楽しそうだ。



「ふっふっふ。見てろよぉ」



そう言って布をはおる。



「『隠蔽』」



そう呟いた瞬間にマサトの体が消えた。



「……それは……すごいけど……」



消えている。

確かに消えている。

は消えている。

だけは消えている。

つまり、服は残ってしまっている。



「お前!服だけ残ってるぞ!」

「おう……これ買って家に帰ってから使ったら服だけ見える事に気が付いて返品しに行ったんだけどね……」

「それでどうしたんだ?」

「聞かれていないから言わなかっただけとか言われて返品だめだって……」



これは絶対にクルレスさんの仕業だ。

行動は相変わらずのようだ。



「でも!裸で着れば問題ない!」

「問題大ありだ!論理的にだめ!」



裸マントはだめ。絶対。



「まぁまぁ透明になったら見えないし大丈夫だ。」

「ダメだろ!ほんとに!」

「そういうお前は見たくないのか?」

「僕はそんな変態じゃない!」



マサトがニヤニヤとしながら言ってきたので言い返す。



「まぁいいや。トイレで着替えてくるから。見たいなら貸してやるぞ。」

「え?二枚あるのか?」

「まさか。僕が見終わってからな。」

「人の使用後は絶対にやだ!」



他の人が裸で着たものを着るなんて冗談じゃない。



「じゃぁ行ってくる。」



そういいマサトは部屋から出て行った。

部屋に残されたのは僕一人。

ボッチで座ったまま一分余りが過ぎた。



「まったく……マサトもしょうがない奴だなぁ。」



ただ一人で呟く。



「よし!マサトを止めに行こう!」



悪い事をしようとしている人を見逃すわけにはいかない。



「もし、止めようとしてシュナの裸が見えたとしても不可抗力だし問題ないよね!」



自己証明完了!

これで思う存分見れ……マサトを止めれる!



「いざ!参る!」



忍び足で階段を下りて向かう。



「ふふふ。マサト君はどんなに悪い事をしているのかなぁ~」



自然と頬が緩んでしまうのに気が付き、パチンと叩いて直す。



「さ~て。マサト君はどこにいるかな~」



脱衣所の扉をゆっくりと開けて入る。

堂々と入ってもよいのだが、そこまでの勇気はない。



脱衣所の棚の影に体を隠して風呂場の方に目を向ける。



そこに見えたのは……



「えっ……」



細くしなやかに引き締まっている足。

外にあまり出ていないような魅惑の白さ。

太ももに滴る水滴が艶めかしい。

肌は薄くピンク色に染まっている。

スラリとのびた腕に細い指。

まな板の様な胸に軽くへこんでいるお腹には無駄な肉がほとんどついていない。

その芸術の様な体に巻き付く水の縄。

いや、触手と言った方がいいだろうか。

見る人によっては魅惑的な輝きを持つ絵が出来ていた。

だが、残念な点が一つある。



「男の裸なんて見る価値はねぇ!」

「モガっ!モガモガ!」

「氷の触手で何を言ってるのか分からないぞ……」



そう。

縛られていたのはマサトだ。

目と口はそこだけ氷の触手で覆われていて、旨くしゃべれないようだ。

だが、こうして見るとなかなか男らしくない体だ。

運動が苦手だからか日焼けはほとんどないし毛もほとんど生えていない。

清潔感あふれる肌と言っていいだろう。

もちろん大事なところは布でしっかりとおおわれている。

たぶんあの消える布だろう。



「その声はイツキじゃろうか。どうしたのじゃ?」



風呂の扉の向こうから声が聞こえてくる。

シュナの声だろう。



「えっと……マサトが悪い事をしようとしてたから止めに来たけど……これはどうしたんだ?」

「なんかイツキではない気配がしたのでな。しかも忍び足じゃったので怪しかったのじゃ。とりあえず『水縛ウォーターバインド』と『氷縛アイスバインド』で確保しといたぞ。覗きは倒すに限るのじゃ!」

「うん……ごもっともです。」



もし、自分もついて行ったら同じ目にあっていたのだろうか。

考えるだけでも怖い。



「一応こいつ連行するから外してくれないか?」

「分かったのじゃ。」



そう言った瞬間にマサトの体から触手が消えていく。



「くそ!あと一歩で桃源郷が目の前にあったのに!こんどこそ!」

「やめとけ。これ以上やるともっと酷い目にあうぞ。」



その根性は認めるが、自分まで巻き込まれたらたまったもんじゃない。



「とりあえず部屋に戻るぞ。」

「お、おう」



マサトが意気消沈という感じでついてくる。

そのまま部屋に戻り、座る。



「えっと……どんまい。」

「あと……あと一歩だったのに!」



本当に悔しそうだ。

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