第三十九話 遊戯
シュナから注がれる絶対零度の鋭い視線。
心に激痛が走る。
「え~と?どんな本かなぁ~?」
マサトがニヤニヤしながら本をめくり始める。
その横からシュナが内容をチラ見している。
内容がきになっているようだ。
「ふむふむ。敵同士の息子の純愛ラブコメディーって……期待してたのはこんなのじゃない!」
マサトがベットに倒れ込む。
期待が裏切られたオーラが全身からあふれ出ているのを感じる。
「それにしてもなんでこんな本を持っているんだ?お前が好きなのはファンタジー系に小説じゃなかったのか?」
「それには深いわけがありまして……」
頭の中でどうするかを考える。
本当の事を言うしかないだろうか。
ただ自分の好きな作者さんの新作かと思って買ったら想像していたジャンルとは全く違っただけだ。
だが、それではなぜ今でも持っているという疑惑を招きかねない。
ただ作者の出した本を全部集めるためにしぶしぶ残してあるだけだし。
他の人から借りたという言い訳が使えるかもしれない。
たがそれは誰から借りたという疑問となぜ借りたという疑問が同時に発生する。
だめ押しに、シュナの目が赤く染まっている。
前にも使った嘘を見抜く目だろう。
ここは正直に言った方がよいだろうか。
「えっと……これは好きな作者の新刊だから買ったら思っていたのとジャンルが違うし……」
「そうか、分かった。」
「だけど、捨てるのは……ってえぇえ!?」
「だって、お前そんなやつじゃん。本好きのケチだし。」
理解してくれたのは嬉しいが言われようが酷い気がする。
シュナ。
ずっと理解したように頷いているお前には後で説教だ。
すでに目は元の色に戻っている。
「って言い様が酷いよ!」
「おっと間違えた。本好きの倹約家だな。」
それならまだ納得できる。
「イツキ~シュナちゃん~マサト君~晩御飯出来たわよ~」
「「「は~い。」」」
シュナと同時にかけだす。
マサトがあまりの速さに唖然としているのが見えた。
「いつも早いわねぇ。」
食堂にはすでに料理が用意されていた。
クリームシチューがない事を一通り確認する。
大丈夫。ないようだ。
「いただきます。」
いつものように食べ始める。
今日は絶品のオーク肉のステーキだ。
マサトが来たから少し贅沢をしたのだろうか。
「これ!?絶品ですねぇ。」
マサトの舌にもあったんだろうか。
ものすごい美味しそうに食べている。
「お代わりもあるからしっかり食べてねぇ~」
マサトも満面の笑みだ。
最後にはお代わり分も無くなり、僕の残りはシュナに取られた。
「ごちそうさまでした!」
そういって共に部屋に戻る。
これからは三人でトランプをやる予定だ。
「でも、このトランプって奥が深いよねぇ。」
マサトが独り言のように呟く。
「確か勇者が作り出した一つの遊戯らしいね。異世界の遊具だっけ。」
「勇者っていろいろなもの作り出すからなぁ。おかげで遊んでも遊んでもまだ遊び足りないぐらいだ。」
「トランプ一つでいろいろなゲームがあるしね。」
トランプをシャッフルして準備をする。
今からやるのはババ抜き。
単純なゲームでカードを順番に他の人から取り合い、カードがかぶったら場に捨てる。
一枚しかないカード『悪魔』を最後まで持っていた人が負け。
最初に持っているカードを無くした人が勝利というわけだ。
「よし、始めるか。」
カードを三人に均等に配り勝負が始まる。
かぶっているカードを場に捨てる
持ち札は6枚。
最悪な事に悪魔のカード入りだ。
他の二人を見ると持ち数は8枚と9枚。
今のところはリードしている。
自分は取られてからのスタート。
平静を装って悪魔のカードを取るように仕向ける。
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「くっそぉ!負けたぁ!」
一試合目は僕の負け。
優勝はマサトだ。
マサトは心理戦にとてつもなく強い。
これまでにマサトに勝ったはほとんどないと言っていいだろう。
「次だ!」
この後勝負はずっと続いたが、ずっとマサトの優勝だった。
マサトの力、恐るべし。
「マサトさんよ……お主強すぎるじゃろう……」
シュナも驚いているようだ。
シュナも十分強かったのだがマサトには勝てなかったようだ。
「こういうゲームは得意なんだ。」
マサトも鼻が高そうだ。
「お風呂準備出来たわよぉ~シュナちゃんいらっしゃ~い」
シュナが風呂に向かい始める。
風呂は水魔法と火魔法のf二つを使った魔法道具で自動で水を生成し、火を使って温度を上げるというわけだ。
もちろん自分は使えない。
だが、準備に20分ぐらいかかってしまうため、次に僕らが入れるのは30分後だろうか。
「よし、僕たちも行くか?」
マサトが腰を上げて動きだそうとする。
「何をするなだ?」
「きまっているだろう。」
マサトが胸を張って主張する。
「覗きだ!」




