第三十五話 続行
「イツキ……あんた大変な事をしでかしたね……」
放課後の教室。
僕はサクラとマサトに囲まれていた。
「だってしょうがないじゃん……あんな事言われたら……」
とりあえず言い訳をしておく。
「カケル……意地を張りすぎだよ……」
優しいマサトも庇ってくれはしないようだ。
少々視線が冷たい……
「だって、親戚の子とはいえ情報を改竄されたり欲望の目で見られたりしたらいらつくでしょ……」
一応、サクラとマサトにはシュナを親戚の子として紹介してある。
騙すのは忍びないが、魔王の子とか言ったら絶対に可哀そうな目で見られるのは間違いないだろう。
「まぁいいわ。どうせそういう事になると思ってたし。」
「僕ってそんなに信用がなかったの……?」
「そりゃぁ、イツキってめったに怒らないけど軽く怒ると止まらなくなるわよね……」
「まっすぐと言うのか一途というのか……」
サクラとマサトの集中砲火は地味に痛い。
精神的に追いつめられる。
とりあえず話題をそらした方がいいだろう。
「そういえば、お前たちは例の計画は進んでいるのか?」
「もちろん、ばっちりだよ。」
「私も全然大丈夫!」
それは良かった。
これが失敗すると勝率が一気に落ちてしまう。
「イツキは大丈夫なのか?失敗したら親戚が……」
「大丈夫だ。なにか大きなトラブルが起きない限り勝率は100パーセントだ。」
これは冗談抜きだ。
「他にやる事はないのか?」
「あぁ大丈夫だ。マサトはそれだけに集中してくれ。」
「分かった。」
そろそろ話を切り上げようと思う。
これ以上時間がなくなると、今日中に実行しようと思っていた計画が出来なくなる可能性がある。
「ちょっと今日はやる事があるからお開きにしないか?」
「そうわね……私も帰ったらやりたい事もあるし。」
「そうだね。僕は特に用事はないけど……」
二人の同意を得られたようだ。
「じゃぁこの辺で。また明日な。」
「あぁまた。」
そう言い、教室から出ていく。
その足でそのまま職員室に向かう。
作戦の自分でやらなければならない事の一つ。
これがうまく行かなかったら少々辛い事になるだろうが大丈夫だろう。
相手は担任のアイカ先生。
お人よしで生徒思いの人気の高い先生。
ターゲットにはちょうどよい。
「失礼します。アイカ先生はいらっしゃいますか?」
あくまで失礼のないように呼び出す。
「はい。どうしたんですかイツキ君。」
「少々お時間よろしいでしょうか。」
「えぇ全然構いませんよ。」
「では少し来てもらえますか?」
「分かりました。」
先生を教室に連れ込む。
言葉に表すと怪しいが実際は何もない。
「こんなところに呼び出して何の様でしょうか。」
「冒険者選定大会についての事で……」
そう言ってあるものを魔法袋からこっそりと取り出す。
ここからが一つの勝負所だ。
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「おぉイツキ。探してたぞ。」
全ての作戦が終わり、学校から出ようとした時、マサトが慌て足でやってきた。
「何の用だ?こんなに慌てて。」
「いつもいつもすまないけれど、今週末泊らせてもらえないか?」
「またなにかあったのか……しょうがない。準備だけしておくよ。」
マサトはたまに僕の家に泊まりに来る。
理由は話してくれないが、理由はなんとなく理解できる。
たぶん親の関係だろう。
いつもの事なのですんなりと了承する。
「本当にごめんね!じゃぁ急がせてもらうね。」
マサトが駆けだしていく。
なぜか彼は家に帰るのが非常に速い。
なにかしら事情があるようだが詳しくはしらない。
「あいつも相変わらずだな……」
そして校門から出て帰路に着く。
「そういえば……」
肝心な事を忘れていた気がする。
そのまま歩いていたら家に着いた。
「おかえりなのじゃ。」
入り口から入るとシュナが出迎えてきた。
それを見て一瞬で肝心な事を思い出す。
「あ!今はシュナがいるんだった!」
どう誤魔化そうと再び慌てる事になった。
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