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最弱異端児は夢を見る  作者: 時雨
第一章 最弱異端児は・・・
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第三十三話 黒煙

「おかえりイツキ。汗だくでどうしたの?」

「はぁ、はぁっ。ちょっと、面倒な事に、なって……」

 

 

 息も絶え絶えの状態で答える。

 ずっと走ってきたので僕もシュナも足が棒になりそうだ。

 

 

「なんとか……なったじゃろうか……」

「あ、あぁ。たぶんな。」

 

 

 今にも倒れそうな感じのシュナ。

 足ががくがくと震えているのが見える。

 

 

「大丈夫かい?今日の晩御飯どうする?」

「今すぐ食べたいのじゃ!」

 

 

 一気に元気を取り戻したシュナ。

 意外とチョロい。

 

 

「もうすぐ出来るから部屋で待ってなさい。」

「は~い。」

 

 

 二人でそろって部屋に戻る。

 

 

「そういやお主、今日の収穫はなんじゃ?」

「刀と禁術に結界石。魔法紙だな。これだけあれば新しい作戦が考えられるだろう。」

 

 

 想定よりも多くの収穫。

 これは非常に役立つ。

 

 

 頭の中で使い道を考える。

 

 

「禁術は論外で……結界石は人を閉じ込める事が出来ないし……」

「お主は何をぶつぶつ言っておるのじゃ?」

「そうだ!シュナ!一回魔法を崩壊させてくれないか?」

 

 

 一ついいアイディアが思い浮かんだ。

 

 

「崩壊……ってどんな風にじゃ?」

「魔法陣を間違って構成する様に意識して魔法を使ってほしいんだ。まずは……簡単な玉魔法で。」

「分かったのじゃ。」

 

 

 シュナがいつも通り魔法陣を展開させ始める。

 見てると、魔法の圧縮率が完全におかしい数値になっている。

 マイナスという数値で構成されている。

 

 

「これでよいのじゃろうか。」

「あぁ。そのまま動かしてくれ。」

 

 

 そのまま作動させると、エラーが発生する。

 魔法陣の中心から黒い煙が発生し、魔法陣が崩壊する。

 この黒い煙は入れて使われなかった魔法の残滓だろう。

 

 

「これがどうしたのじゃ?」

「次はもっと大きな魔法陣が構成される魔法を使ってくれないか?」

「分かったのじゃ。」

 

 

 シュナは再び魔法を展開させる。

水波ウォーターウェーブ』のようだ。

 大きな水の波を発生させ、相手を飲み込む魔法。

 規模も大きく、水の上級魔法の中でも上級の魔法だ。

 魔法陣がどんどん大きくなって、部屋を埋め尽くす。

 

 

「デカっ!初めてみたけどこんなに大きいとは……」

 

 

 喉から驚愕の声が漏れる。

 全力で読み取ると今度は現象量がおかしくなっている。

 

 

「いくぞい!」

 

 

 小さな掛け声とともに魔法が再び発動する。

 エラーを発生させ、魔法陣の中心に黒煙が発生する。

 だが、今度は煙の量が桁違いだ。

 

 

「うわっ!」

 

 

 煙が大量に生成されてどんどん自分に近づいてくる

 再び驚きの声が喉から漏れてしまった。

 なんか煙が怖くなり、つい魔法袋から結界石を取り出して速攻で地面に置いてしまう。

 

 

「『展開』!」

 

 

 ここまでの行動にかかってしまった時間は約0.5秒。

 なんとか煙が来る前に自分の周囲に結界を張る事に成功した。

 だが……

 

 

「ウワッ!」

 

 

 すっかり忘れていた。

 結界は外からの攻撃などは通してしまう。

 容赦なく入って来る煙から逃げるように結界から脱出する。

 

 

 ふと、ある事を思いついた。

 これが本当に使えるならまた一つ戦術の幅が広がるだろう。

 

 

「『起動』!」

 

 

 魔境眼が作動し、視界に少しだけ明るさが戻る。

 黒煙が魔法の残滓という事は本当だったようだ。

 視界に薄い光の粒がいっぱい待っている。

 雪のようで美しい。

 

 

 その中に濃く輝く塊が二つ。

 一つはシュナの形をしている。

 心臓の部分が明るく光り輝いていて星空の中でひときわ輝く星のようだ。

 

 

 そして、もう一つは長い柱の様な形になっている。

 

 

「よっしゃ!」

 

 

 予想が当たったようだ。

 結界石は外からの攻撃を通し、中からの攻撃は止める。

 中に入り込んだ黒煙が外に出る事が出来ずに中でどんどん濃くなっているという事だ。

 

 

「イツキ?どこじゃ?」

 

 

 シュナも黒煙の中では何も見えないようだ。

 涙声みたいになっている。

 シュナもここまでとは予想できなかったようだ。

 

 

 黒煙は少しずつ晴れていっているようだが、まだ普通の視界ではなにも見えないだろう。

 

 

「もう、こうなったのじゃったら……」

 

 

 シュナの近くに魔法陣が発生するのが見えた。

 緑色の魔法陣。

 何の変哲もない現象だけを発生させる風魔法のようだ。

 

 

「行くのじゃ!」

 

 

 魔法陣からものすごい風が発生し、空いていた窓から黒煙が出ていく。

 視界に一気に光が戻る。

 

 

「『停止』」

 

 

 魔境眼を停止させ、シュナを見る。

 涙目になって座り込んでいる。

 自分でやって、驚いて腰を抜かしてしまったようだ。

 

 

「大丈夫か?」

 

 

 一言声をかけて手を差し伸べる。

 

 

「ありがとうなのじゃ。」

 

 

 シュナが手を取り立ち上がる。

 自分でやったのだが、ラブコメの様な展開になっている気がする。

 涙目の少女に手を差し伸べ、立ち上がらせる。

 なんか一気に恥ずかしくなった。

 

 

「お主、顔が赤くなっておるぞ。風邪でもひいたのじゃろうか?」

「いや、これは違う。」

 

 

 変な所で鋭くなるシュナ。

 

 

「で、これで何か収穫があったのじゃろうか。」

「あぁ、完璧だ。」

 

 

 結界石の有効な使い方を発見することができた。

 これはとても大きな収穫。

 

 

「で、お主。この後どうするのじゃ?」

「え?なんで?」

「まぁすぐ分かるじゃろう。」

 

 

 少し考えると、下からものすごい足音がする。

 まさか……

 

 

「イツキ!シュナちゃん!大丈夫!?煙がすごい出てたわよ!」

 

 

 おばあちゃんが扉を押しあけて入ってくる。

 

 

「……あぁ、大丈夫だ。」

「びっくりしたぁ。あんまり危ない事するんじゃないわよ。」

 

 

 おばあちゃんは火事と間違えたのだろうか。

 水魔法の魔法陣が構成された状態で止められている。

 

 

「ってやば!料理の火を止め忘れてたわ!」

 

 

 急いで階段を下りていく。

 やっぱりどんくさいようだ。

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