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最弱異端児は夢を見る  作者: 時雨
第一章 最弱異端児は・・・
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第二話 回避

 いつも通り朝のSTが終わったら授業が始まる。

 今日の授業は魔法知識、計算、歴史、魔法実践、魔法道具使用、の五つ。

 だが魔法が使えない僕には、魔法実践等の時間は関係ない。

 何も出来ないので、ただボーとしているわけにはいかない。

 だから少しでも体力か力をつけるために刀の素振りなどを練習している。

 対人戦も一度だけやったことがあるが、非常に危険なので、先生の出す魔法幻覚で練習している。

 

 

 なりたいものがないわけではない。

 ”冒険者”

 誰もが憧れる職業で、魔物や大きなボスなどを倒すことを仕事としている人々だ。

 冒険者をまとめる組織、冒険者ギルドには多くの人が志願してくるが慣れる人はごく一握り。

 冒険者は命の危険が他の職業より比べ物にならないほど大きい。

 なので実力が中途半端な人々は門前払いされるというわけだ。

 入るには強力な魔法が必須。

 魔法が使えない僕が入るにはせめて近接戦闘のプロにならなければいけないというわけだ。

 それでも戦える魔物は近接タイプのみ。

 魔法タイプには近づく前に蜂の巣にされてしまう。

 それほど魔法が使えないのは致命的というわけだ。

 バギーなどの移動用の魔法道具も使用することができない。

 追い打ちをかける様に片目が使えないため、距離感がつかみにくいという致命的な欠点もあるというわけだ。

 

 

「では、授業を始めます。」

「起立、礼、お願いします。」

「「「「「お願いします。」」」」」

 

 

 ボーとしている間に授業が始まる。

 

 

「では、いつもの様に常識問題から。魔法の基本五属性を全部答えてください。では・・・イツキ君」

「はい。火、水、風、雷、土です。」

 

 

 当たり前すぎる問題。

 使えないとはいっても知識だけは溜めこんでいる。

 力がなくても知識で何とかなることがあるからだ。

 だが、やはりバカはどのクラスにもいるようだ。

 

 

「魔法使えない異端児さんがこんなこと覚えていて何かいいことでもあるのかなぁ?そうだろう?」

 

 

 やはりソウタは黙っていられないようだ。

 クラスメイトの中の半分ぐらいは軽い笑い声を出し、他の人々も僕の事を憐れみや嘲りの目で見てくる。

 

 

「ソウタさんには思いやりというのがないのですか?人に言われたら嫌なことを言ってはいけませんよ。」

「別に~本当の事を言っただけだし~」

 

 

 もはや反省の色はない様にしか見えない。

 

 

「ソウタ。あんまりひどい事ばっかりいうなよ。先生の言う事は間違ってないから。」

「はいは~い。」

 

 

 水色の髪を持ち、さわやかな顔立ちをしている少年。

 学級委員もやっている、真面目・・・なカケルが注意しても無駄のようだ。

 

 

「はぁ。相変わらず変わりませんね。脱線してしまいましたね。授業に戻りましょう。では、教科書ページ56を開いてください。では一回各自で読んでみてください。」

「分からない漢字などは技能を使ってもいいですか?」

「まぁ最初なので良しとしましょう。」

 

 

『技能』

 一人一人が持っている特別な技の様なものだ。

 種類は数多くあり、無意識で発動するものから自分の意思で発動するものまでいろいろある。

『電卓』『解析』などの生活で便利なものから『着火』『冷却』などの戦闘で使えるようなものまである。

『回復速度上昇』などの特別なものもある。

 基本は『ステータスプレート』から起動する。

 技能『辞書』はほぼ誰でも持っている物で、起動すると目の前に青い枠が現れ読めない字や、他の国の文字などの上に持ってくると解説がでたり、自動で翻訳してくれるそうだ。

 使えない僕はどんなふうになっているのか分からないので、信頼できる友人から聞いた話だ。

 それさえも使えない僕は先生お手製の辞書で調べるのだが非常にめんどうだ。

 

 

 いつものように授業は進んでいくのだが非常に退屈だ。

 すでに知っている事ばかり。

 魔法が使えない分知識だけは豊富。

 たまに知らない情報もあるが、めったにないため基本は目に留まらない程度にさぼっている。

 

 

 淡々と授業をこなし、最後の魔法道具使用まで何事もなく過ごしきることができた。

 魔法が使えないけれど魔法道具なら使えるかもと淡い期待を持った時期があったのだが、現実は非情のようだ。

 

 

 だが、授業が終わって帰りのSTの準備をしているときに悪魔が囁いてきた。

 

 

「……この後、屋上に来い。来ないと分かってるよな?」

 

 

 定期的の来るこの悪魔のお誘い。

 出来ることならすっぽかして逃げていきたい。

 だが次の日の報復を考えるとそれも出来ない。

 

 

 大人しくSTが終わった後に屋上に向かうしかない。

 

 

 5階建ての校舎の屋上。

 周りにはお腹ぐらいまでの柵があり、かすかな風が吹いている。

 そこに待ち受けていたのは、ソウタとその取り巻き、そして……カケル。

 クラスでは真面目な正義感のあふれる人望の厚い人……となっている。

 だが実際は人をおとしめるのを趣味にしている人として最低な奴だと知っている。

 

 

「遅かったなぁ異端児さんよぉ。今日も俺らが魔法の特訓をしてやろうじゃねぇか。」

「といってもただこっちが攻撃してそっちが身を守る簡単な訓練だがな!」

「それってただのリンチじゃねぇか!」

「「「ぎゃはははは~!」」」

 

 

 嘲笑ってやりたいが、前に言い返したらボコボコにされた事があったので何も言えない。

 どっちにしろ最後にはボコボコにされるのだが、出来る限り痛くない方がいい。

 それにしてもむかつく。

 今すぐでも顔を殴ってやりたい。

 

 

「で~は始めようか『風玉ウィンドボール』」



 カケルの手から魔法陣が構築されていく。

 さすがクラスの主席、すさまじいスピードだ。

 だがそのタイムロスは多少ながらある。

 その間に相手の魔法の進路から外れる。

 

 

風玉ウィンドボール

 風の基本的な魔法で、大抵の人々が使える。

 圧縮率、使用魔力、スピードもいろいろ変更が可能だが、大きくて速い程魔力を多く消費する。

 カケルが放ったのは握りこぶし三個分の大きさの魔法。

 基本的な物よりは大きく、速さは標準と同じぐらいのようだ。

 その魔法を腹に向かって打ってきた。



 カケルは悪い意味で目立つのを本当に嫌っている。

 いじめを公にしないために、切り傷ができないサイズで鈍器のような衝撃を与える。

 狙いも服のおかげでばれにくい腹の部分。

 カケルの行動は読みやすいので難なく読むことができる。

 でも、あと少しで当たりそうだった。

 あぶないあぶない……

 だが、問題はここからだ。

 

 

「よけちゃダメだろー防御の練習なのに。これはもうお仕置きが必要だなぁ。さて、じゃあみんなでやろうか。」

「「「風玉ウィンドボール」」」

 

 

 ここからは全員の乱れ打ち。

 速度はそこまでないものの、数が多い分避けるのが大変だ。

 なんどかやられているため動体視力と反射神経は自信がある。

 それでも何回か体にかすってしまった。

 

 

 何分たっただろうか。

 無我夢中で避け続けていたが、いじめっ子らはだいぶいらいらしているようだ。

 いくら放ってもいいところに当たらないからだ。

 ドヤ顔で煽りたいが我慢する。

 下手に刺激して強い魔法を使われると面倒だ。

 だが次の魔法をよけようとした瞬間だった。

 

 

「『反土壁アンマッドウォール』」

 

 

 足を踏み込もうとした時、突如足の裏の触角がなくなった。

 踏み出したところの地面が無くなったのだ。

 

 

反土壁アンマッドウォール

 土魔法の中級魔法『土壁マッドウォール』の応用技だ。

 土の壁を触っているものからせり出る様に出現させる魔法を反転させたもので、土を凹ませる魔法だ。

土壁マッドウォール』は使える人はある程度多いが、反転属性はその魔法に相当通じた人にしか使えない。

 反転属性が使えるようになるまでには何万回も元の魔法を使わないとできないため、そこまで根気のある人は少ない。

 そのため、試合などでも反転属性魔法を使ってくるとは思いづらいので初見の相手だと対応が遅れることが多くなる。

 

 

 使ってきたのはソウタ。

 こんな魔法を持っていたのか!?

 完全に意表を突かれたので、急いで対抗策を考える。

 使われた魔法によってできた穴は足より一回り大きい比較的小さいサイズだ。

 距離が遠いため多くの魔力を消費するので、節約したようだ。

 

 

 体がバランスを崩し倒れていく。

 そこを狙ったようにいくつかの魔法が飛んできた。

 あぶねぇ!

 必死になって飛んできた魔法を避けるために地面についていた片方の足を蹴りだした。

 飛んできた魔法を避けることには成功したが、体が横倒しになってしまった。

 肺が圧迫されて溜め込んでいた空気が喉から悲鳴のように出てきた。

 

 

「ゲームオーバーだな。残念だったな。」

 

 

 とっさには動けない体勢に倒れこんでしまった僕にニヤニヤしながら声をかけてきたカケル。

 

 

「命ごいしたら助けてやってもいいぞぉ」

 

 

 だれがお前なんかにしてやるもんか。

 そんなことをしたら一生の恥だ。

 いつもいつもそれを言っているがお前なんかにしてやる命乞いなんてこの世に存在しなからな。

 

 

「あれあれしなくていいのかなぁ。 あと三秒ねぇ3 2……」

「だれがお前なんかにやってやるかぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 一瞬いつもより大声を出したことにその場にいたほとんどが驚いたようだ。

 だがここは放課後の屋上。

 だれかが通る可能性は限りなく低い。

 

 

「そうか、それでいいんだな。」

 

 

 少しイラついた様な雰囲気を出してカケルは声を出した。

 そりゃそうだよな。

 もし人が来たらこれまで必死で演じてきた優等生の像が崩れてしまうもんな。

 

 

 その時だった。

 

 

「いったいどうしたの!?」

 

 

 懐かしい雰囲気をまとった女神が現れたようだ。

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