第二十七話 計画
「おはようなのじゃ……」
「おはようシュナ。」
シュナがようやく起きたようだ。
途中から起きてた僕から見てだが。
「お主……今日は寝れなかったのか?」
「あぁ悪夢見た後は寝る事がなぜか出来ないからな。」
シュナがベットから這い出てきて着替えを始めようとしている。
「シュナ。お前はなぜ女子制服を着ようとしている。そして僕が後ろ向くまで着替えを始めるなと言ってるだろう。」
「ばれちゃったのじゃ。」
おどけても駄目だ。
これ以上クラスで誤解を招きたくない。
「じゃぁ今から着替えるのじゃ。」
「分かった。終わったら教えろよ。」
後ろを向き計画の続きを考える。
圧縮装置は良い買い物だったと感じる。
それひとつでだいぶ出来る事が増えたからだ。
衣擦れの音をひたすら無視して頭を動かしつづける。
「終わったぞい。」
その一言で後ろを向く。
今日来ているのは水色のワンピース。
涼しげな雰囲気が良い。
「言っておくけど今日は家でしっかり留守番するんだぞ。さもないと……」
「さもないと……?」
「晩御飯抜きだ!」
「それだけはいやじゃ!」
ものすごい悲壮な声で言われた。
そこまで拒絶されるとは思わなかった。
でも今回は脅しておくのがいいだろう。
「イツキ!シュナちゃん!朝ごはんできたわよ!」
「は~い。」
頭はすでに覚醒しているのですぐに反応できた。
席を即座に立ち、階段へ向かう。
今日こそはシュナよりも早く食卓へ行くことができそうだ。
今日の朝ごはんも美味しかった。
もちろんクリームシチューはなかった。
最後にシュナに取られるのはもはやお決まりとなっているようだ。
「じゃぁ行ってきます。」
「行ってらっしゃいなのじゃ。」
いつも通りゆっくりと学校へ向かう。
余裕をもって家から出ているので時間は有り余る。
今日は運動系の授業が一回あるのでつまらなくはなさそうだ。
そして今日はやらねばならぬ事がある。
計画の一つのカギを入手しなければいけない。
この一つが獲得できれば他の計画が不必要になる可能性のあるという大きなものだ。
これで成功しても後味は良くないがなければ面倒なことになるだろう。
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「で?どうしたんだ?」
放課後の人のいない教室。
そこに二人を僕は呼び出した。
サクラとマサト。
あるていど信頼できる二人の仲間だ。
「少し冒険者選定大会で手伝ってほしい事があるんだ。」
いきなり本題に切り込む。
「できることなら手伝うわよ。で?何?」
サクラは理解が速い。
マサトは少し遅れて頷く。
「説明が長くなるけど冒険者選定大会のルールは覚えているか?」
冒険者選定大会には厳格なルールがある。
大きなところでい行くと、試合終了後の攻撃は禁止。
試合の参加者以外の試合への干渉が禁止などの当たり前な物もある。
さらには、魔法道具の使用は一種類までなどの特定の人が有利にならないようにするルールもある。
「覚えているがそれがどうかしたの?」
マサトが首をかしげて呆けた顔をしている。
まぁいきなり言ったのだからそうなるだろう。
「僕は筆記試験だけは一位を取る自信がある。だから最後の試合だけに専念できるというわけだ。」
不敵な言い方だったがこれだけは事実だ。
出てくる問題はある程度予測できるし、知識だけは豊富だ。
「そこでたぶん最後の試合に来るのはカケル達だろう。」
「よくそこまで予想できるわね。」
「一番の有力候補だし、あいつは金の力である程度試合に干渉できるからな。」
カケルは裕福な家庭で育っている。
何を隠そう、シャリムの一人息子だからだ。
あの薄汚い大人から生まれた聡明な子供として有名になっているが、内面はシャリムと何も変わらないと思う。
違いは猫を被っているかどうかだけだ。
「たぶんあいつらはルールの―――――を破ってくるだろう。だからこっちは―――――を仕掛けておく。」
「そういうことならまかせてよ!」
マサトが胸をはる。
マサトはカケルほどではないが先生からはいい印象を抱かれているようだ。
「ただし、―――だけにはするな。」
「なぜだ?」
「―――――だからだ。」
これだけはやっておかなければならない。
大事な鍵のピースだからだ。
「分かったわ。わたしとマサトでそれをやるわ。」
「俺はアイカ先生に―――――を見せておく。それでどうにかなるだろう。」
これでだいたい言いたい事は終わった。
「じゃぁ任せた。そろそろお開きにしないと。カケルの軍勢にばれるとめんどくさい。」
「そうだわね。じゃあ私は明日からそれを実行していくわ。」
「ぼ、僕も頑張るね!」
「おう、頼んだ。」
これで全員が成功すれば大きな鍵を入手できる。
うまくいくと信じたい。
「じゃあわたしは帰るわね。」
「あぁバイバイ。」
「また明日ね。」
「僕はいつも通り図書館に籠るね。」
「あぁほどほどにしろよ。」
マサトとサクラと分かれる。
これでだいたい完了だ。
深呼吸をして体から緊張を抜く。
「さて、僕も帰るか。」
無事第一段階が済んだからか軽い足取りで家に向かう。
今日の晩御飯が楽しみだ。




