第十九話 準備
なんとか今かける分をもう一話
「こいつは殺すべきだ!そうだろう!」
「いや、生かして情報とかを奪うべきだ!」
「いいや!この人がそんな悪いことをする人に見えるの!?こっちの味方になって戦ってくれるならば、これ以上心強いことはないでしょ!」
あちらこちらから多くの意見が飛び交う。
傍から見たら険悪な雰囲気だと即座に感じられるだろう。
だが、この話の標的が僕自身とあっては、それどころではない。
今は、僕の命運がこの話し合いにかかっているのだ。
そこまで楽観的にいられるような状況ではないだろう。
「一応言っておくけど、僕は情報を流したりなんてしていないから。別にそんなことをやっても意味がないし」
「信用出来るわけないだろ!これまで俺らをずっと虐げてきた人間だぞ!どうせ嘘八百だっ!」
状況の改善はこの状態だと難しいかな……
今、僕たちはひとつの大きな建物を貸し切って大会議を行っていた。
まず、タイムリミットまでにできる事。
そして、僕たちの処遇。
「一旦黙れっ!」
森の中で僕たちを案内してくれていたおじさんが声を張り上げる。
「ひとつ、明確にしておく。あいつらは、俺らの味方だ。そして、この状況を改善できる唯一の手段とも言えるだろう。」
「こんな奴に頼りたくなんてねぇよ!なんなら、俺らがなんとか……」
「てめぇが何とか出来んのかっ!生ぬるい日常に浸された、牙の抜かれた獣がっ!!」
パンと乾いた音と共に、おじさんが振り下ろした拳が机を真っ二つに割っていた。
「お前らなら、あの結界を破壊できるというのか!お前らが……あの人間を追い返せるのかっ!」
これまでの、穏やかな表情が一変し、修羅のような表情になる。
……これが本性なのだろうか、それとも本気の怒りなのか。
「なら、あいつらに頼れって言うのかよっ!」
「そうだそうだ!こんなガキに何ができンだよ!」
「……こいつらはお前らの何倍も強いぞ」
静かに……おじさんはそう言った。
空気が静まり返る。
このおじさん……僕たちの戦いを見ていたのだろうか。
「ぶしつけな頼み……聞いてくれるか?」
「えっと……はい」
「頼む……俺らを救ってくれっ!」
おじさんは地面に頭をこすりつけた。
「ちょ、おじさん!」
「外からきた客人とはいえ、こう言う事を頼むのはお門違いだと分かってる。でも……たのむ……俺らを救ってくれっ!」
どうすればいいのだろう。
シュナと思わず顔を見合わせる。
「まぁ、いいじゃないのじゃろうか」
シュナは気易くそう言った。
「タイムリミットはあと、18時間じゃ。やるなら……今すぐ取り掛かりたいのじゃが。」
「あぁ、分かった。何か頼みがあったらすぐに言ってくれ。」
あっさりと僕たちは解放される。
そして、一気に今の家まで駆けだした。
「シュナ!計画はある?」
「結界崩しを小規模の物でいいから今から作るのじゃ!お主には一つ円盤以外で移動手段を作ってほしいのじゃ!空を跳ぶ機能のなく、勢いのある馬車の様なものじゃっ!」
「了解!」
頭の中で設計図を組み立てながら、走る。
時間は短い。
素材は出し惜しみせずに……全力で作る!




