表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱異端児は夢を見る  作者: 時雨
第三章中編 偽救世主は……
210/212

第十七話 温度

「……どういう状況じゃ?これは」



周りを理解したのか、シュナが静かな声で同じ事をもう一度言う。

その表情は、氷のように冷たく、威圧感を感じさせるものだ。



「まぁ……簡単にいうなら僕たちが容疑者ってこと」



周りは怯えた表情をしている人から、困惑した表情をしている人までいるが、説明できそうな人が一人もいなかった為、代わりに僕が答える。



「とりあえず……この草について教えてやってくれない?」

「わかったのじゃ」



納得したのか、シュナの表情にはとげがなくなり、諦めのようなものが浮かんでいた。



「この草は、『植物操作』で操ったものじゃ。生命力を瞬間的に最大限に上げ、その時に起きる繁殖力や、こちら側に存在しているくきの防御力など、不必要だと思った力をすべて内側の防御力に注いだのじゃ。この植物の生命力は想像以上に強かったから……一日は持ちそうじゃな」

「ってことは……今は安全ってことですか!?」

「そういうことじゃ」



辺りにホッとした空気が流れる。張りつめた空気は変わらないが、絶望の感情は圧倒的に薄れた気がする。



「なら……行動は早めに取った方がいい!あの大きな扉以外の道はある?そこから一旦地上に出れば僕らが獣人の国まで案内するからっ!」



大声で僕は声を上げる。

だが、返答は……嫌な予感しかしないものだった。



「ここ以外の出口は、城にしかねぇよっ!」

「じゃぁ、今すぐ城に向かうよっ!」



もう一度大声を出して、全員の心を脱出へと向かわせる。

段々と集まっていた人がパラパラと城へ向かって走り始める。

中には、城へ向かわずに、他の人にも脱出の知らせをするのか別の方向に走る人もいた。



とりあえず、この場所は何とかなったという事でいいだろう。

あとは……



「シュナ、歩ける?」

「少し辛いのじゃ……」

「そっか……じゃぁ、あれを使うか……」



魔法袋から、小さな円盤を出そうとして……思いとどまる。

シュナの魔力は豊富とは言え、体への負荷をこれ以上かけるのはあまり良くないだろう。

量は多くても、それを通す道が小さいということでいいのかな……



「シュナ、ちょっと揺れるかもよっと」



シュナを背中に背負い、おんぶの状態にする。

背中に小さな柔らかさとぬくもりを感じながら、シュナにあまり負担が掛からないようにゆっくりと足を進める。



「やっぱり、シュナってすごいよな」

「それほどでもないのじゃ……体は弱いし……お主に頼りきりなのじゃ」



シュナがしょんぼりしたような声を出す。



「いや、それはないかな……僕一人だけだと、何もできないし……シュナがいなくなったらどうしようもならないからな……」

「それでも……お主がいるだけで嬉しいのじゃ」

「シュナがいるだけで僕もいまは十分だよ……自分一人でも少しは戦えるようにならないと、シュナを完全に守ることはできないけどね……」



シュナが僕の肩まわりを少し強く掴む。



「お主は……今のまま頑張ってくれればいいのじゃ……お主がいるだけでも……いいのじゃ……」



シュナの穏やかな声が……殺伐とした雰囲気に相対して、心を温かくしてくれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ