第十三話 急行
「な、なんなのじゃ!?」
「何かがあったってことだと思う!とりあえず行こう!」
地面を蹴って、音のした方へ向かおうとする。
その瞬間……気が付いた。
国の端の壁にそびえ立っていた扉が……なくなって土壁の茶色に彩られている。
あの扉が倒れたということかな……
シュナも即座にその事態に気が付いたようで、慌てたような声を出した。
「まさか、倒れた扉に押しつぶされて犠牲者がでたのじゃろうか!?」
「いたかもしれないけど、少ないと思う!扉の前は基本的に畑が多かったから!」
だが、明らかな異常事態だろう。
これが、事故ならまだいいと思う。いや、これも十分大事件だけど……
けど、それ以上に心配しなければいけないのは……人為的にこの事が引き起こされた場合。
ただのいたずらか……それとも明らかな目的を持ったものか。
「……まさか!」
頭の中で一瞬思い浮かんだ事がら。
直後、それを裏付けるように、多くの男の雄たけびの様な声と、悲鳴の様な物が合わさってひびいてきた。
「シュナ!」
「了解じゃ!」
走りながら、腰に着けていた魔法袋の中に手を入れ、大型の円盤を地面に投げる。
それにシュナが乗ったのを確認して、自分も飛び乗った。
「いいじゃろうか!」
「一気にいいよ!」
がくんと体にかかる負荷が重くなり、上から押しつぶされるような感覚に襲われる。
急激に上昇した円盤は、一定の高さになったところで即座に停止し、僕らの体は上に跳ねた。
安全性は一旦見直さないといけないかな……
「あ、あれは……」
シュナが唖然とした声を出す。
なにか……重大な事が起こっているのだろうか。
視線をシュナの見ている方向へ向けて……唖然とした。
「あれは……」
大勢の人。
人は人でも、獣人ではない人間の方……
「侵略ってことか!」
最悪の事態が的中したか……
どうせ、獣人がここに暮しているという情報を聞きつけた数十人という軍団が来ているのかと思ったが、それ以上の最悪の事態……
数十人というよりも……数百人のレベルだ。
しかも、一人ひとりの装備の質も高いのが遠くから見てとれる。
国に入り込んだ人間は、統率がとれていそうに見えるものの、しっかりとしたものではなく、円形に少しずつ網を広げていく感じにバラけている。
一点突撃の形をとる、どこか一か所に目的地があるというわけではなく、この国事態が目的というような……侵略具合だ。
「目的は……この国を乗っ取るということじゃろうか……いや、奴隷の確保という線もありえるようじゃな……」
「……どちらにしろ、放ってはおけないかな……」
たぶん、国の警備隊とかが即座に駆けつけるだろうが、扉は城から少し離れているので着くまで時間がかかる……
しばらくなら、僕らで足止めできるだろう。
僕一人なら、全然だめだが、シュナの魔法があれば全員の足止めも可能……かな。
シュナがスムーズに起動した魔法陣で円盤がまっすぐ進みだし、倒れた扉の方に向かっていく。
到着まで、三十秒ぐらい。
「シュナ……全員の足止めはできる?」
「それは難しそうなのじゃ……できたとしても……10分が限界じゃ」
シュナの表情は暗い。
やっぱり、世の中はそこまで旨く行かないってことかな……
「ちなみに足止めの方法は?」
「畑の植物を活性化させる魔法を一応使えるのじゃ。分類上は無属性魔法じゃな」
シュナの使える魔法を全て把握しているわけではないが、これは予想外……
植物などに反応する魔法は、無属性魔法の中でも少ないものだから……結構レアだ。
「シュナって……無属性魔法の魔法道具を起動するだけじゃなくて……使う事ができるの?」
「いや、それは無いのじゃ。いくつか使えるのじゃが、何もないところから使えるのは、その一つだけなのじゃ」
「……十分すごいな。まぁ、詳しい事は股教えてね」
「分かったのじゃ!」
気が付いたら、扉まであと少しのところまで来た。
シュナが静かに杖……ではなく、木の棒を懐から取り出した。
ブランクのせいか、執筆がうまく進みません。
しばらく、突然休みが入ったり、文章量が短かったりしますが、宜しくお願いします。




