第十二話 地鳴
日は何事もなかったように過ぎ去った。
あの日から早三日。
シュナの精神状態の回復もだいぶできている。
すでに崩壊草の捜索は始めているが、いまだに見つかっていない。
「このジャムもなかなか美味しいのう」
シュナが食卓でジャムを塗ったパンをほおばっている。
その笑顔は、いつもと変わらないように見えたけれど、少しだけ暗い感じがする。
やっぱり、あの事件が後を引いているのかな……
「崩壊草も見つからないし……難航しているね……」
「それもそうじゃな……彼女をあんまり待たせるわけにはいかないのじゃけど、ここのどこかにあるという情報だけは手に入っておるのじゃしのう」
途中にあった人から、この国のどこかにそのような草を見た事があるという情報は手に入った。
詳しい場所などの情報は手に入っていないけれど、あることは確かだろう。
「あとは……あの謎の攻撃の正体をしりたいのう……」
「それはあるかな……」
ある日……というか一昨日の夜。
窓部から一本の矢の様な物が飛んできた。
無意識のうちに避けていたおかげで、怪我を負う事は無かった。
矢には毒の様なものが塗られていて、たぶん掠っただけでも大変だっただろう。
その日以来、すべての部屋のカーテンを閉じ、どこにいるかわからない状態にしたあと、寝ている部屋には金属製の盾を置いてある。
臨時で作り上げた盾だが、ある程度いい金属を使っているから壊れにくいだろう。
ひとつ問題があるとすれば、重い事で、持ち運びが辛い点だろう。
あと、一つしか作れなかったから、必然的にシュナと同じ部屋で寝る事になっている。
別に変な感情が湧くわけでもないけど……少しばかり心がむず痒くなる。
当たり前の用に寝ていたころにはそんなことは感じなかったけれど……そうするしかない状況になると、恥ずかしい気持ちにもなる。
女の子と一つベットで寝るというと、いかがわしいイメージが付いて回るというのもあるけど……たぶん、あいつから変な知識が感染したからかな……
故郷に帰る時があったら、マサトを一発殴ってやろう。
「二度目の攻撃はまだないけれど……本当に誰なんだろうね……」
「愉快犯というのもあり得るのじゃが……わざわざ毒までぬるとなると、明確な目的があったと思えるのじゃ……」
だんだんと暗い気分になってくる。
この空気を吹き飛ばすためにも、バンと手のひらで机をたたく。
「まぁ、沈んでいても仕方がないし、今日も探しに行くか」
「そうじゃな!時は金なりじゃ!」
シュナも食べ終わったところで立ちあがり、荷物をぱぱっと調える。
まぁ、荷物といっても水筒とか、お弁当ぐらいしかないけど……まぁ、そこは気にしたらダメなところだろう。
扉を開け、外に出た瞬間……
何かが落ちる様な……金属が硬い地面に落されたような音が……地鳴りと共にひびいた。




