第十一話 逃走
「っ!?」
声にならない驚きが体を突き抜ける。
何か爆発音のような……耳をつんざく音がひびいてきた。
方向は……僕が入って来た入り口方面。
「まさかっ!」
死の気配で寒気がしている中に、かるい熱がこもる。
流れ込んできた爆風が扉を開けた瞬間顔に辺り、生ぬるさを感じるようになる。
それと同時にどたどたという大きな足音が響き、ガチャリガチャリという音が響き始める。
「残りを……一網打尽にしようって寸法かっ!」
だが、見たところこっちに来る気配はない。
分担して調べるところを変えたという感じの、バラバラな足音はなく、全員で同じところを目指しているような足音だ。
まさか……あの少女が目的という事だろうか。
「ちっ!」
慌てて飛びだそうとして壁に手を突く。だが……その冷たさに我に返った。
僕が今出て行って……何ができる?
あの少女が善なのか?
それなら話は早い。少女を助けに行けばいいだけだ。
けど、あの追手は悪なのか?
国を乱す者をとらえる為に来たなら……それもまた善だろう。
「どうすれば……」
考える間にも足音は近付き、自分のいる通路に向かっているのが分かる。
その音に焦らされ、僕は……逃げの一手を選んだ。
Uターンをして、さっきまでいた部屋に慌てて入り、扉を閉める。
何も干渉しない。
最悪とも最善とも取れる一手。
でも……この判断しかできなかった。
扉の向こうから響く足音から必死に耳を背け、罪悪感に押しつぶされないように心を抑える。
また、助けたいと思う心を、無理やりに少女を悪と思い込む事で抑え込む。
自分では手を下さない。
責任逃れの一手を無理やり続け、足音が全部過ぎ去るのを待つ。
「……止んだかな」
ゆっくりと扉を押しあけて、通路を確認する。
何も……ない。
無我夢中で地面を蹴り……少女の悲鳴を耳にしながらもただ逃げの一手を選び続けた。
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