第九話 慟哭
簡潔に準備を済ませ、前と同じように窓から体を乗り出す。
一つ深呼吸。
足を延ばして屋根にとび乗り、そのまま目的地に向かって足を進める。
「っ!」
力を入れて飛びすぎたのか、着地が不安定になり関節に小さな痛みが走る。
だが、足の動きを緩める事なく屋根の上を飛びまわっていく。
自然と、行き場の無い怒りが脚に籠り、踏み出しの力が強くなる。
「くそっ!」
喉の奥底から飛び出た怒りの声が、夜の町を木霊する。
自分が悪いのかもしれない。
いや、あの時に自分はどうすればよかったのだろうか。
自分を責めればいいのだろうか。
襲ってきた人を責めればいいのだろうか。
処刑を行った国を責めればいいのだろか。
また、答えの出ない悩みが頭の中を渦巻きはじめる。
どうすればいいのだ。
怒りのままに屋根を蹴って跳び下りる。
くるりと一回転して地面に着地し、足にかかる痛みを体で踏みしめる。
「ついたっ!」
目的地の公園。
真っ先に、目的の滑り台に向かって足を進め、下に潜り込む。
冷たい……
人の生気が感じられないように冷たい。
ヒやりとした感触の土を手で動かし、隠しの通路を露わにする。
ここが……あの人達の隠れ家。
前とは違って違和感を感じる。
……僕のせいかな……
ゆっくりと隠し通路の蓋をあける。
コツリ、コツリと梯子を下りて地面に足を付ける。
静かだな……
通路は薄暗く、明りは最低限の物しかついていない。
コツリという足音がなんだか怖い。
生の気配が感じられないというのも……怖い。
目的の部屋を探して、扉を開けて、そして閉める。
食料庫に……武器庫。
武器庫の中は……前見たときとは違って、がらんとしている……
武器もほとんど持ち出されて、残された弓や短剣などが地面に転がっている。
静かに扉を閉めて、前に多くの人が集まっていた部屋にたどり着く。
ここに……情報があるかもしれない。
ヒヤリとしたドアノブに手を近づけて、ドアノブを下ろそうとする。
「……うっ……」
「っ!?」
慌てて手を放す。
中から……人の声がした。
少女の……すすり泣きの様な声。
「お父さん……お母さん……」
少女のすすり泣きの様な声が心に突き刺さる。
この少女の両親の命も……僕のせいで失われたのかもしれない。
いや、ここで疑問形は正しくないのかな。
僕が……失わせたから……
「私が……もっと強かったら……」
すすり泣きは段々と強く、慟哭の様にひびく。
自分を責める様な声に……変わっていく。
「私が……最初から倒していたら……一発目に……倒していればっ!」
地面を殴るような音。
この少女は……僕を矢で射ったのだろう。
本来なら……警備隊とかに突き出さなければいけないのかもしれないが、そんな事はしようとも思えない。
この少女には……これ以上何も失わせたくない。
なにも……手出ししない方がいいだろう。
静かに……壁に押し付けていた背中を持ち上げる。
少女の慟哭を聞きながら……静かに次の部屋に向かった。
諸事情により、しばらく更新が停止してしまいます。
理由には受験が近いということもありますが、パソコンが故障してしまっているということも上げられます。
何か手段が見つかった場合、不定期に更新するかもしれませんがあまり期待しないでください。
受験が終わるか、パソコンが治り次第、プロットは考えてあるので、高速更新をするので気長にお待ちいただけると幸いです。
本当に申し訳ございませんでした。




