第七話 連鎖
「なに……これ」
「あ、客人さんですか……これは災難でしたね……」
国のみんなは、観ても無かった事の様に流している。そんな風に感じる。
涙を流し嘆き悲しんでいるのは、ごく一部。
胃がむかむかとしてきて、反乱を起こそうとしてくる。
視界に入っているシュナの顔は、青白く、唇がわなわなとふるえている。
シュナの体を片手で掴み、抱きかかえる。
これ以上……見せてられない。
視界を……冷静に上に上げていく。
そこには……感情のこもらない冷たい目で僕らを見下ろしている生首。
心を押し殺し、下に掲げてある看板の文字を読む。
「悪しき人間に組した者共、ここに処刑の後、生首晒しの刑と処す……何なんだよ……」
裏切り者には死を。これは、ここの国での鉄板なのだろうか。
確かに、悪い人間にこの国の場所……いや、存在などがばれたら大変な事になるだろう。
いや、多くの獣人が犠牲になる未来しか見えない。
でも……死はやり過ぎではないだろうか。
「うそ……」
肩に軽い重みが掛かり、囁きかけるような吐息が耳に入る。
横をみると、どこか見覚えのある顔がシュナとおなじような蒼白になっていた。目の焦点は完全に合っていない。
「うそ……うそ……」
肩から、そのウサ耳を頭に載せた少女が崩れ落ちていく。
慌てて、僕はしゃがんで少女を支える。
「だ、大丈夫!?」
ウサ耳がプルプルと小刻みに震え、少女は顔を絶望に彩らせている。
この少女は……前に会った……
焦点の合っていない目が、僕の顔をとらえて光を灯した。
一瞬、少女の表情が歪み、そして目から大粒の涙があふれ出した。
「えぐっ……えぐっ……」
泣き喚く事なく……少女は涙をこぼしていく。
嗚咽の声が喉から絞り出すように出て、僕の鼓膜をたたく。
「大丈夫……か?」
思い出した。たしか……名前をカグヤと名乗っていた……
「ひっ……!」
差し伸べた手は……パシリとはたかれた。
カグヤは……その場から涙の跡を地面に残しながら……駆け足で走り出していった。




