第一話 朝食
「む……」
「おはようなのじゃ」
既に起きていたシュナが、起きた瞬間目の前にいた。
というか、シュナの顔が目の前にあった。
「とわぁ!?」
突然の事で、喉から奇声が出てしまう。
「びっくりしすぎなのじゃ……」
「あ、ごめん。寝起きに目の前に顔って心臓に悪いよ……」
「それはすまなかったのじゃ」
ようやく、状態が理解出来た。
シュナは、僕の体の上に馬乗り。どうりでお腹の辺りが痛いわけだ。
「……」
「どうしたの?じっと僕の頭を見つめて」
「……気のせいじゃろうか。お主の頭に血の跡の様な物がのこっておるのじゃが」
慌てて頭に手を持っていって確認してみる。
いや……別に変なところは無い……と思うけど、深夜外出の時に怪我を負ったのかもしれない。
転んだりした事は無かったと思うけどな……
「まぁ、気のせいじゃない?」
「そうじゃろうか……まぁ、いいじゃろう」
シュナは簡単に引き下がった。
ゆっくりとベットから立ち上がり、下りようとする。そこで……腕が妙に熱い事に気が付いた。
「なんだろう……」
「どうしたのじゃ?」
「いや……この腕輪、熱を発してない?」
「あ……本当じゃな。別に使った覚えはないのじゃが……」
「というか、自動で作動するものじゃないかな……」
ツンツンつついてみたりするけれど、何も変わる様子はない。
近くに緑色の窓も見当たらないし……自動メンテナンスとかだろうか。
まぁ、気にしても意味はないかな。大した熱でもないし、放置してもいいだろう。
「で、今日は何をしよう……」
ギュルルルルルルル
「……先に朝ごはんでも食べようか」
「そう……じゃな」
いつもとおなじように顔を赤くしているシュナ。
うん、可愛い。
階段を下りて、キッチンに立つ。今日の朝ご飯は……手軽にトーストでいいかな。
「まぁ、ここにパンがあるのも便利だな……さすが、勇者町近くといったところかな」
王都には、パンは少ないと聞いたことがある。さすがに、いまだに浸透していないらしい。
お米は浸透しているらしいけど、なんでパンだけ……と思ってしまったが、王都の周辺の気候だったらお米が育てやすいのかなと一人で納得している。
とりあえず、今のうちにパンはいっぱい食べておこうと決意してある。
「いただきますなのじゃ」
「いただきます」
ガリンを使用したジャムをトーストに塗ってほおばる。酸味と甘味。ふたつの味が香ばしいパンと共に口の中に広がる。
「やっぱり、簡単な物でもお主の料理はうまいのう……どうやったらこんな差がでるのじゃ……」
「ほとんど、直感とかでやっているけど……パンのちょうどいい焦げ具合は研究したから覚えているんだ。表面が軽く小麦色になりながらも、中はある程度もっちりするように工夫しているんだ」
「ちょっと、詳しく教えてもらってもいいじゃろうか」
「いいよ。最初は中まで温まるように弱い火力で熱した後、一気に火力を上げて表面に焦げ目を作るんだ。焦がしすぎるとにがくなっちゃうけど、軽い焦げなら香ばしいだけなんだ」
「いろいろ考えているのじゃな……わらわも見習わないといけないじゃろうな」
あっという間に、多めに焼いたパンもなくなり、机の上にはジャムの瓶だけが置かれている。
「このジャムもお主が作ったのじゃろうか」
「これも、自作だね。一応、他の果物もあ……」
「分かったのじゃ。明日からの朝ごはんは毎朝トースト一枚も付けてほしいのじゃ」
「……反応早いな……まぁ、分かったよ。いろいろなジャムを試したいってことでしょ」
「もちろんじゃ!」
平和STARTということで。
中編は……動きます。




