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最弱異端児は夢を見る  作者: 時雨
第三章前編 客人は……
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第五十六話 地下

「さて……ここに何があるかな」



ポツリと独り言を落として、滑り台の周囲を調べる。下にはさらさらとした砂があり、サクサクという音が鼓膜をたたく。

滑り台の下はちょうどくぐれるようになっていて、小さな空間が広がっている。怪しいのはここぐらいかな……

壁をぺたぺたと触り、隠しボタンとか隠しスイッチがないか調べる。だが、どこを触っても何の感触もない。



「うーん……見当違いかな……」



コツコツと足を動かして辺りを調べ続ける。だけど、どこにもない……



「うーん……嫌な予感とかがあったから何かあると思ったんだけどな……」



ただ静かな空間に、風の音がヒュウと鳴りひびく。室内だけど、風も吹くようになっているのだろうかな……とどうでもいい事しか思いつかないぐらいに見つからない。

月明りに照らされた地面が綺麗に輝いている。



「はずれ……かな」



地下組織とかそういう物を期待していたから、ちょっと残念かな……

地下組織という響きだけでご飯一杯いける気がする。というか地下組織があるなら隠密調査とかしてみたい。密告とかをしたいわけではないが、情報は多いに越したことがない。



ちょっとだけ思考を真剣な方向に向ける。もしかしたら、人間を本気で憎んでいる獣人が集まって、僕とかシュナとかを殺そうとしている……かもしれない。

……完全なる杞憂かもしれないけど、心配するに越したことは無いかな。というか、リア充爆発しろとか思ってる人がねたみで開いた会という方もあり得る。

……こういう思考は普通リア充本人には思いつかないらしいけど、一人歴が長かったからかだいぶ変わったのかな……



って馬鹿な事を考えている暇はないかな。そろそろ眠くなってきたし、諦めて家に戻ろうかな……



「はぁ……無駄骨だったな……」



諦めて滑り台の下の空間から脱出しようとする。だが……足元に明らかに砂とは違った硬い感覚がコツリという音とともに伝わった。



「……ん?」



半歩離れて、コツンと音がした場所をみる。そこには……月明かりに照らされて鈍く輝く鋼色の床が広がっていた。

明らかに他の場所とは違うよな……



「隠し通路というところかな」



笑みを隠しながら、鋼色に見える場所を中心にして砂を回りに避けていく。

すると、鋼色の場所が少しずつ広がっていき、そこからついに凹んだ場所と取っ手の様なものが出てくる。



「隠し通路は……あったんだな」



鋼色の物の全貌が見えるようになった。完全に地下通路への道。手で触るとひんやりとした感覚が伝わる。

足で軽く叩くと、下に空間がある事を示すようにコンというひびく音が帰ってくる。



「ここまで来たんだ。行くしかない……よな」



丸く彫られた鉄板の中に一本の鉄が通っている。その穴の中にある砂をかきだして、鉄の棒を掴みやすいようにする。

ひんやりとする鉄の棒を掴み、そのまませーのと上に持ち上げる。



ギィィという音と共に鉄の蓋は持ち上がり、下への暗い道が見えるようになる。

中には鉄の梯子のような物がかかっていて、下に簡単に降りられるようになっている。

……どうすればいいんだろう。道は下りるかみなかった事にして帰るかの二つ。



「……選択肢どころか、道は一本の様なものだな」



ここまで来たんだ。引き返すわけは……ない。

中に人がいるかもしれないと警戒しながら、音を立てずに梯子を下っていく。

意外と深くまで続いているらしく、床に足を付けるまでに何分……何十分も下ったような感覚に襲われた。



「ここか……」



薄暗い赤い明りが通路の中を照らしていて、怪しい感じを増している。

だれかと鉢合わせしないように慎重に気配を探りながら通路を進んでいく。

潜入ミッションみたいだな……たしか、勇者産の小説にも似たような状況の物があった気がする。でも、そっちの目的は……女子風呂覗きだったな……



緩んでしまった心を、気を取り直して引き締め、適当に進んでいく。道は大体暗記していった。帰り道が分からなくなったら大変だからだ。



道の両端にはいくつかの扉があり、部屋が無数にある事が分かる。本当に秘密基地みたいだなと思いながら、進んでいくと……微かながらに会話の声が鼓膜をたたいた。

即座に反応して、警戒を強める。だが、くぐもっている事からどこかの部屋にいる事は最初に理解出来た。



「何なんだろうな……」



慎重に近づいていき、声の発生源であろう扉の目の前にくる。耳を澄ませて中の会話を聞きとろうとすると……衝撃の内容が分かった。



「資料は確定だろうな……これは……反逆の狼煙を上げるしかないな」



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