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最弱異端児は夢を見る  作者: 時雨
第三章前編 客人は……
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第五十四話 公園

「お兄ちゃん!高い高いしてぇ!」

「ほら、たかいたかーい!」



近くにいた子供を優しく掴み、高いところまでゆっくりと引っ張り上げる。



あの救出の後にたどり着いた公園で過ごす事三十分ほど。僕らは見事になつかれていた。

僕が物理的に遊んであげ、シュナは簡単な魔法を使って、曲芸の様な物を見せて楽しませている。

子供達の母親も、最初は嫌な様な顔をしていたが、すでにほほえましい表情でこちらを見ている状況だ。



「お兄ちゃん!僕も僕も!」

「じゃぁ、よいしょっと!」



高い高いしていた子供を右の腕に乗せて、もう一人の男の子も反対の腕に乗せる。バランス感覚を鍛えるのにもちょうどいいかなと思いながら、気を付ける。

まぁ、大丈夫かな。落としたとしても即座に対応できるだろうし。



「よいしょっと!」



まぁ、今は楽しく子供達と戯れるだけでいいかな。別に、時間は……たっぷりあるわけではないけど、少し休んでもいいだろう。

詳しい行動も……なにもないが、とりあえず少しずつ信仰を深めて……何をするんだ?

なんだか、目的があやふやになっている気がする。存在している明確な目的の一つは崩壊草の習得。

これは、ここにいる獣人に聞きまわったら何とかなる……かな?まぁ、なんとかなるだろう。



「ほらっと!」



太陽は少しずつ上っていき、もうすぐお昼時。お腹がすく時間帯だ。

公園には多くの子供達と、母親らしき人々と……なんか滑り台あたりで談笑している大人たちがいる。

やっぱり、人間がいない獣人は平和なんだなと思った。勇者製以外の物語では獣人は野蛮でいつでも争っているような事ばかり書かれている。聞くよりもみた方が確実という方がここで分かった気がする。



「これでどうじゃ?」

「すごーい!アワアワがいっぱいだー!」



シュナの方をみると、シュナの周りに大きな水の泡のような物が舞っていて、それを子供達が割ったり、つついたり手ですくったりして遊んでいる。

魔法って……本当に便利だな。女の子たちが、きらきらとした目で舞う水の泡をみているのも分かる気がする。

水の泡があちらこちらを舞う様子。魔法にあまり慣れていないと、幻想的に見えてもしょうがないだろう。事実、僕も幻想的だと思う。



「シュナ。これってどうやってやってるの?」

「簡単じゃ。粘度の高い液体を生成した後、そこに空気を入れる事で浮くようになるのじゃ」

「簡単だけど意外と難しそうだね……粘度の調節とかできるもんなんだ」



器用に水の泡を生成して、周りに散らしていく。僕の足元にも跳んできて、体に当たってはじけて消える。

……綺麗だな……



「おっと、そろそろ時間かな?」



そう思った直後……少し離れたところからギュルルルルという音がひびいてきた。……シュナだ。



「……腹時計は正直だね」

「……何か食べたいのじゃ」



お腹がすいた様な表情のシュナが無垢な目をこちらに向けてくる。だが、この状況はすでに予測済み。だから……あらかじめ軽食を作っておいた!

魔法袋を漁り、中から大きな箱を取り出す。あけると、そこにはおにぎりが勢ぞろい。



「みんなも食べる?」

「食べる食べる!」

「ごはんだー!」



あっという間に子供達もいっぱいっ群がって来た。大量におにぎりは作っておいたから尽きる事はないだろう。シュナの胃袋を完全に満たす事まではできないだろうが、夜までの足しにはなるだろう。



「中の具は適当な物を使っているけど、食べられないとかは無いと思うよ」

「いただきますなのじゃ」



シュナが一つのおにぎりを掴んで……口に入れる。それをみて自分も適当な物を一個だけ掴んでほおばる。うん、味は問題なかったな。

一つ目を食べ終わると、既にシュナは二個目三個目とうつっていた。さすがの食欲だと思いながら、魔法袋からコップを取り出して……子供達の分が足りない事に気が付いた。

さすがに、こんな量のコップじゃどう考えても足りないよな……



「うーん……こればっかりはどうしようもないかな」



シュナにコップを手渡して注ぐ。それを見た子供達は……とてとてと軽くどこかに走り去り……そしてすぐに戻って来た。その手には小さな水筒。余計な心配だったのか……



太陽に照らされながら……平和な時間が流れ続けた。

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