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最弱異端児は夢を見る  作者: 時雨
第三章前編 客人は……
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第五十二話 少女

荒っぽいとは言え、救出には成功しただろう。

この女の人に大した怪我もないだろうし、僕も少しだけ腰が痛む程度の怪我で住んでいる。

魔法が無くても、身体性能があればなんとかなるものだな……少なくとも、魔法では今の状況を打破する事は……いや、意外と簡単だったな。



「大丈夫?怪我はない?」

「ふぇっ!?えっと?えっと!?」



自分の上に乗っている女の人……いや、少女と言った方がいいだろう。というか、ほぼ自分と同い年だろうか。

頭にはウサ耳が乗っていて、年齢不相応と言っていいような胸が主張している。というか、服がはちきれそう。

そんな少女が、僕に馬乗りの様な状態になっていた。それにしても……あの柔らかさは……発育が良すぎる気が……



「えっと、あなたが助けてくださったんです……か……」



少女がこちらを振り返り……そして、語尾がかすれて消えていく。

あ……今、僕の頭にはなにも乗っていないんだった。僕は嫌われている人間だ。たぶん……殴られるか盛大に拒絶されるかだな……

そう思って……歯を食いしばる。でも目の前に広がったのは……



「すごい!すごい!あなたって本当に人間さんですか!?耳がない人って初めて見ました!」

「えっと……耳はありますけど……」



予想外の状況に、点で外れたところの訂正しかできない。

あれ……人間って嫌われているんじゃなかったっけ。



「あ、すみません!今どきます!」



そう言って、少女は僕の体から下りる。ようやく、冷静になる事ができた。

辺りには人だかりができていて、ざわざわとしている。あからさまに嫌悪の表情をしている人もいるけど……大抵の人は、疑問の表情や好奇の表情だ。

あらかじめ連絡されるだけで、ここまで変わるものなのかな……いや、それとも人間に対しての敵対心が消えているのかな。



「えっと、あなたが掲示板に書いてあった客人としてきた人間さんですか?」

「う、うん。そうだけど……」



どう、証明すればいいか迷ったところで……ポケットにある冷たい感触を思い出す。

これをだせばいいのかな……とりあえず、物は試しと出してみる。



「これが……証明になるかな」

「客人証明書……本物です!すごーい!本物の人間さんは初めて見ました!」

「本物の人間だって!掲示板に書いてあったあの!」

「まじか!俺も見たいぞ!」



あっというまに、周りに人だかりができる。

……人間ってここでは本当に嫌われているのか?



「凶暴っていうけどそこまで怖そうじゃないわねぇ……どっちかと言えば、優しそうな雰囲気があるねぇ……」

「まぁ、俺らを助けたとか書いてあったし、悪い奴じゃねぇのは確かじゃないか?」



勝手に論争みたいな事が起きている。うん……どうなっているんだこれは。

だが、そんな中、僕が助けた少女はこちらを向いて……



「そういえば、言い忘れていました。助けて下さりありがとうございます」

「いえいえ、お怪我はありませんか?」

「大丈夫です。大した怪我もなくぴんぴんしています!」



二コリといい笑顔を少女は送ってくる。うん……助けてよかった。

この笑顔だけでも助けた価値は十分にあったといえるだろう。

ってシュナ!

笑顔を見て、一瞬で思い出した。完全にこれまで忘れていた。



「シュナ!」



名前を読んだ瞬間、上に緑の光が発生したのを視界の端でとらえる。

上を見上げると……緑色の魔法陣。普通に現象だけを発生させる魔法陣だ。

直後、上からシュナらしき人物が降ってきて、僕の腹に突き刺さる。いや、シュナ本人だ。



現象発生で軽減されていたとはいえ、少しばかり痛かった。



「お主、大丈夫じゃったか?」

「うん、大丈夫だったけど……アクロバティックな登場の仕方だね……」



シュナは僕の腹から手際よく下りて、辺りを見渡す。その視界の先には……助けたばかりの少女がいた。

シュナは、僕がだれを助けたか一瞬で理解したらしく……そして、なぜか少女の頬は軽く赤く染まっていた。



「……」



シュナは無言で、自分の胸に手を置き……少し怒ったような表情をした。

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