第三十八話 属性
たぶん……あの本は魔法媒体書だ。
杖やスタッフとは全く違った分類で、特定の魔法だけを使うときか、それとも特殊な魔法を使うときにしか使わない……
「シュナ!後ろのやつに気をつけて!」
「了解じゃ!」
シュナが、『風刃』で後ろのやつに向けて攻撃を加えようとする。
だが、すでに設置されていた反風属性壁によってあっさり阻まれる。
シュナが風魔法ばっかり使っているのをよんできたのか……
足を踏み出してとりあえず、強そうな男に斬りかかる。
もちろん殺さないように刃が付いていない方を相手に向けている。
敵もこちらの攻撃は予想していなかったのか、防御が間に合っていない。
……行ける!
僕が振り込んだ刀は、横に直線上に動き狙っていた男の肩に直撃し……硬い音を立てる。
肩当てをつけていたか……
しかもこの感触……たぶん相当固い金属をつかってあるだろう。
ひびも入らなかっただろうし、刃の方で切り込んでも肩当てが割れるぐらいだな。
一応、後ろの跳んで下がり相手の様子を確認する。
一番強そうな男は、肩を押さえてうずくまっている。
打撲などは負わせられなくても、衝撃は伝わったようだ。
とりあえず、しばらくは行動ができないだろう。
「もういいぞ!やれ!」
「……チッ!」
嫌な予感がして足元の地面を確認する。
すると、少しずつ構築されていくいろいろな色に輝く魔法陣……
この色は……無属性魔法!?
形が読み取れないけど、ところどころに見た事のある形がある。
この形は、効果範囲指定……
相当広いし……パーティーメンバーも除外されている。
たぶん、このまま放置したら面倒な事になるだろう。
この場にいる獣人にもかかる魔法だから、自分たちだけ逃げる事も出来ないし……
今できる最善の手は……この魔法を構築している人を気絶させて魔法を破壊する。
この魔法を構築しているであろう男は……奥の魔法媒体書を持っている男だろう。
まずは、牽制に釘を振りかぶって放つ。
まっすぐ飛んで行った釘は男の頬のぎりぎりを通過してうしろの壁に突き刺さる。
だが、男はビビりもせずに、堂々と立ち続ける。
……いい根性をしているな。
他の男たちはこの攻撃に反応して、無属性魔法を使っている男たちの前に立ちふさがる。
次は……
「シュナ!属性を変えて狙って!」
「分かったのじゃ!」
赤い魔法陣が構築され、速攻で火の矢が形成される。
発射された矢にはそこまでの速度はなく、放物線を描きながら他の男たちの頭上を通過していく。
そこまでの威力はない攻撃。
しかし、シュナはそれで終わらない。
いくつもの赤い魔法陣を同時に展開させる。
シュナは少し苦しそうで、魔法陣の展開速度も落ちているが……20個も魔法陣を展開される実力はすごいだろう。
約二秒かけて、魔法陣が完成し、一斉に火の矢が現れる。
男たちは、この光景に一気に驚いたような顔をして反応が遅れている。
その隙に火の矢は、男たちの上を通過し後ろの男に向かって降下していく。
グサリという音が連続で響きわたるが、悲鳴もなにも聞こえてこない。
もちろん、魔法陣も健在だ。
……一本ぐらい当たってもいいと思うけど、魔法陣が壊れていない所から当たっていないか……当たっても耐えているか。
はやく……はやくこの魔法陣を壊さないと!
頭の中で考えている間も、魔法陣はどんどん形成されていく。
飛んでくる魔法をよけたり、時には防いだりしながらなので、旨く頭の中の思考が繋がらない。
最後の抵抗に、釘を数本連続で投げつけるものの旨く集中できずに全て外れてしまう。
くそ……もう、間に合わない!
非情にも、魔法陣の構築が完成し全貌が明らかになる。
そして、完成の直後……情けもくそもなく、魔法陣が起動し……心の中に何かが入り込んでくる感覚が響いた。




