第三十四話 国家
昨日は投稿できず申し訳御座いませんでした。
「ただの奴隷ではなく、まだ未契約の物でしたから奴隷紋は残ってませんけど……」
「逃げだしてきたというわけですか……なかなかやりますね。」
「えっと、この子は……」
シュナの事を指差して、質問してくる。
ここは……
「同時に脱走してきた仲間です。他にも何人かいたんですけど、ちょっとやられてしまって命からがらここまで逃げて来たんです。」
「本当に大変だったんですね……」
「スラルさん、この人たち国に招待しませんか?」
女の人が、少しだけ物腰が柔らかそうな男の人に何かを問いかける。
国?
招待?
あんまりよくわからない。
「それもそうだな。お前は、招待権を持っていたはずだし。」
「一応持っていますけど……まぁ、いいでしょうね。人でなければ一応許可は下りていますから。」
僕の良くわからない話がどんどん容赦なしに進んでいく。
何が起きているんだ……?
「えっと……国の事はご存じではないんですよね。」
「し、知らないです。」
突然の質問に戸惑うものの、正直にこたえる。
「じゃぁ、国の事を説明しますか。国とは、このダンジョンの奥底にある人によって建築された都市の事です。そこでは、獣人が多く暮らしています。」
「獣人の……国ですか。」
「奴隷だったものや、偶然たどり着いたものなどいろいろな人がいますが、平和な場所です。もちろん、獣人を奴隷化したりする人などは絶対に立ち入り禁止ですが。」
ちょっとギクリとするものの、なんとか表面にださないように押さえつける。
ばれたら面倒だったかもな……
「そこに何も知らない人がたどり着けないように大量の罠が続いているんです。もちろん、ここから進めば中に入れます。僕らはここで不審な者が来ないか見張っているというわけです。」
「そうだったんですか……」
「もしも、奴隷狩りなどがやってきたら大変な事になりますからね……」
奴隷狩りは、奴隷を扱う事を専門としていて、獣人などを見境なく襲い、強制的に奴隷にさせる者の事をいう。
戦争の後に、ぼろぼろになった町から獣人を盗んできて奴隷にしたり、中には、小さな人の子供まで誘拐することもある。
冒険者でもそういう事をする人はいるが、ルールでしばられているわけでもないし、罰することもできない。
あんまり、関わり合いになりたくない人達だ……
「中で、太陽の代わりになる魔法道具とか、水を生み出しつづける魔法道具もあるので、農業なども中で行い、自給自足で人とかかわらない生活ができるんです。獣人というわけで商品を売ってくれない店が常識になっていますからね……」
「まるで、獣人の楽園のような場所ですね。」
「まぁ、そんな感じです。もちろん人の立ち入りが絶対にないので、安全ですし、もし大勢で襲ってきても、王様が倒してくれるんで。」
「王様?」
「王様は、この国を作り上げた人と言われていて、強さも相当な物だと聞いています。めったに人前に現れる事はありませんが、配下の者はどれも強く、獣化を使える人もぱらぱらといるんで大丈夫だと思いますよ。」
「獣化って……何ですか?」
知らない単語がポンポン出てきて、混乱してくる。
獣化はどこかで聞いた事がある気がするけど……覚えていない。
「そうですか……まだ契約をしていないとはいえ、奴隷生活をしてきたなら知らなくても不思議ではないですね……」
「本当にいろいろとあったんで……」
「獣化は、獣人に宿る獣の魂を具現化させる術で、強力な動物な力を得ることができるのです。猫の獣人だったら、もともとある程度強い脚力を、魂を具現化させることでさらに強化させることができるのです。限界まで極めると、強力な猫自体に変身したりすることもできるという優れた技能でもあります。まぁ、そこまで強化するには相当の修練とか素質なども関係してくるので、めったにできませんがね……実力はとてつもないものになりますが。国の中には……10人居ましたっけ……」
「これは……僕にもできるのでしょうか。」
一応ここでも演技を挟んでおく。
些細な事の積重ねも大事というからね……
「分かりませんね……旨く出来る人はすぐにできますし、素質があっても開花まで時間が掛かる人もいますからね……ちなみに、国の中には虎に変身できる人もいますよ。」
「虎!?あの魔物でもないのに強力な生物という!?」
「それです。いつもの気性は穏やかなんですが、変身するとだいぶ好戦的になってしまいましてね……いい人なんですけれど。変身すると性格が一時的に変わるってのは良く言われていますし。」
ようやく思い出した。
たしか、昔だれかが穢れた獣人が使う野生じみた獣の呪われた力とか言っていた覚えがある。
たぶん、それの事だろう。
それのせいで魔法を旨く使う事ができないのであろうとも言っていたな……




