第三十二話 攻略
「シュ、シュナ。下りてくれないとお腹が痛い……」
「おっと、すまないのじゃ。」
シュナが、お腹から立ち上がり、重さが消える。
「この罠も面倒なものじゃのう……本当の行き方とかあるのじゃろうか。」
「うーん……考えられるのは……罠を作動させないように動くか、それとも何かがあるか……のどっちかだね。」
この後の罠とかの為に少し考えてみる。
もしかしたら、これからの罠とかの解除の鍵とかがあるかもしれない。
「わらわも良く分からないのじゃが……あの少しだけ色が変わっている場所が気になるのじゃ。」
「どれどれ?……あ、本当だ。少しだけ色が薄くなってる。」
魔境眼を通して見てみるが、周りに魔力が使われている物はないだろう。
てことは……偶然削れて、奥のきれいな壁が表面に出てきたか、それとも物理的に動く何かか……
「ちょっと試してみるべきかな……」
「何をするのじゃ?」
「ちょっとした実験さ。」
魔法袋から前に買った釘を取り出す。
これをこうやって構えてっと……
「ほい!」
鈍く輝く釘は、直線状にまっすぐと飛んでいき綺麗な場所の壁に衝突する。
その直後、壁が少しだけへこみ、釘は穴に向かって落下していく。
……はずれかな……
そう思った瞬間、グラグラと振動が響き渡る。
「シュナ、警戒してくれ!」
「もうしてるのじゃ!」
揺れは数秒続き、突然止まる。
その直後……ドンと大きな音が響く。
音がした方を見ると……元は何の変哲もない壁があった場所に、大きな穴があいている。
あの壁を攻撃すると、新たな道が開けるというところだろうか。
「シュナ、行ってみる?」
「もちろんじゃ。」
明りにしていた玉を前に突き出しながら、道に入っていく。
横幅が意外とせまいので、僕が先行するような感じだ。
ごつごつとした荒削りの壁がうっすらと見える。
体よりも一回り大きい穴なので、ぶつかったりすることはないが、ぶつかったりしたら痛そうだな……
走ったらぶつかって怪我をしそうだから、ゆったりと歩き続ける。
数十秒歩いたところ、穴の出口が見える。
何が……あるのかなぁ。
穴からスポリと体を出し、周りの様子を確認をする。
見覚えのある場所……の様な気がする……
この右側の大穴……やっぱりさっきの落とし穴かなぁ。
てことは、あの色の変わっている場所を攻撃したら、罠を攻略したり破壊しないで突破できるというわけだろうか。
もっと早く気がつけば良かったな……
思えば、あの金属の塊が落ちてくる罠でもどこか違和感のあるような壁があった気がする。
あそこが鍵だという事だろう。
「これで、ここからの罠を無駄に攻略しなくても楽になるようじゃのう。」
「そうだね。ここまでいろいろと大変だったから、楽になるのは相当嬉しいな。」
罠の解除にだいぶ時間がかかっていたから、これからハイスピードで攻略していけば夜までには帰れるようになるだろう。
「じゃぁ、行こうか。」
「もちろんじゃ。」
再び穴を通って、落とし穴のあった場所を通り抜ける。
ごつごつとした壁の間を通り抜け、落とし穴の反対側に到着した。
「あれ?」
「どうしたのじゃ?何かあったのじゃろうか。」
「あそこの壁……少しだけ色が変わっているように感じるんだけど……」
「あれは、着地の時にできた物じゃないじゃろうか。石とかが飛び散って削れたとかそういう事もありそうじゃし。」
「それもそうだね。まあ、気にしても仕方がないことか。」
一応、他の罠がないか魔境眼を起動させた警戒態勢で、歩んでいく。
罠にさえ気がつけば、簡単に解除ができる様になった今、気をつけるのは罠の最初の一撃だけだ。
存分に警戒するべきだろう。
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罠の攻略方法を発見してから、数十分。
本当にいろいろな罠を発見した。
人を溶かす液を出すトラップに、爆弾が作動するトラップ。
あちらこちらから槍が飛び出してきて串刺しにするトラップに、感電式のトラップまで、多種多様。
共通して言えるのは、どれも人を殺せるレベルの物で、かかったら大変な事になっていただろう。
「全く面倒じゃのう……」
「何度か罠にかかって大変だったからね……溶ける液が降り注ぐトラップを解除する鍵が思ったより遠くて、釘を投げた時に釘に反応して作動した時が一番大変だったな……」
「あのときは、服が全て防いでくれたのが良かったのじゃな。」
そして道を歩み続け……謎の赤い光が見えた。




