第二十七話 記念
「まぁ、過去話はこれまででいいでしょう。」
カルロさんが簡単に話を切り上げる。
三人にいろいろあったのはわかった……
でも……それが何なんだろう。
「えっと……それで……」
「そこで、お願いなんですが謎の男について知っている事はありませんか?」
「……え!?」
全く予想していなかった答え。
なんか、嘘を付いていたのに気がついたから、先に過去を話して、本当の過去を話させようとしていたのかと思った。
「あなたの戦闘スタイルも、普通ではなく、魔法を使っていない。だから、謎の男から身体の能力を強化する魔法でも貰ったのかと思いまして。」
「……」
正直に話した方がいいのだろうか。
彼らの話に嘘は感じられなかった。
シュナも、何の反応をしてないところから見て、嘘ではないだろう。
たぶん、正直に話してもこの人達なら大丈夫だろう。
しかも、相手の過去を聞いたんだ……こちらも話すのが礼儀というものだろう。
「すみません……僕は謎の男には遭遇してなくて、実は……」
簡単に過去を三人に話していく。
生まれた時から、魔法が使えなかった事。
それが原因で、学校でいろいろと大変だった事。
そして、無我夢中で身体性能を上げまくった事。
シュナが魔王の娘という事は隠したが、一応クラスメイトの一人と言っておいた。
一週間だけだったけど、嘘はついていない……はず。
「そうですか……あなたも大変だったんですね……」
「あなたたちに比べれば、大丈夫……だと思います。」
「いやいや、魔法道具も使えないそちらの方が大変でしょうに。」
「まぁ、体が強ければ大抵何とかなったんで。」
これは本当だ。
意外と、魔法が使えなくてもできる事は多い。
まぁ、面倒くさい事ばかりだけど。
「本当なら、一緒に謎の男の人を探そうと誘おうと思っていましたが……残念です。」
「えっと……どこかで情報が入ったら教えましょうか?多少の知ってそうな人の当てならあるので……」
「本当ですか!」
「一応あるんですが……その人達が知っているかわ……」
「おっと、取り乱してしまいすみません。ならば、情報とか手に入ったら僕に伝えてもらえますか?王都の冒険者ギルドの係員に僕当てに渡す物があると言えば取り継いでくれるはずなので。」
「冒険者ギルドにそんな機能が……」
「ご存じではなかったのですか?ランクA以上の人には専用のポストの様な物が設置されるんです。」
「……初めて知りました。」
「まぁ、見つかりましたらよろしくお願いします。こちらとしても大歓迎なんで。それか、よろしければこれからも一緒に行動しませんか?」
突然、勧誘されるもののこれにはさすがに応じられない。
シュナの秘密がばれるリスクが上がるしね……
「ちょっと、それも遠慮させて頂きたいです。二人で行動してきたので……」
「そうですか……」
カルロさんの顔が目に見えて沈む。
う~ん……こればっかりは……
「カルロ、そこまで気を落とすんじゃねぇよ。仲間まではいかなくても友達からでいいじゃないか。なんなら、あれを渡せばいいだろう。」
「……確かにそうですね。」
そう言って、カルロさんがバックの中をごそごそと探りだした。
……何なんだろう。
「これ、貰ってくれませんか?」
「えっと、これってなんですか?」
「お守りの様なものです。えっと、シュナさんにも。」
そうやって、ひし型のペンダントの様な物を渡してくる。
青色の物と、黄色の物。
何を模している物なんだろう。
「俺らも同じの持ってるよな。」
「僕もですね。」
そうやって、カルタさんとマルスさんもポケットから同じ形のペンダントを取り出す。
僕らがもらった物とも違う、緑色と、赤色の物だ。
「もちろん、僕も。」
カルロさんも腕に巻いていたのを外して見せてくる。
「これは、友情のあかしみたいなものです。苦労した者同士、仲良くしませんか?」
「えっと……よろしくお願いします。」
「いや、もう敬語はいいですよ。友達になったものですし。僕のは口癖なんで治りませんが。」
「それなら……ってまだ無理ですよ……一度敬語で染み付くと治しずらいです……」
「ま、いいんじゃねぇの?そんならいきなり治さなくてもいいと思うぜ。それより、これで五人揃ったんだ。やっと、あれができるんじゃないか?」
「そうですね!やりましょう!」
カルロさんたちが楽しそうに騒ぎ出す。
……何をするんだろう。




